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Beyond the Record  作者: しおん
『サル=ヴァリド』
27/29

24.

街の城壁から、銃火器を担いだ集団が駆け出していた。

レイを先頭に、ギルドの冒険者たちが砂煙を上げながら疾走する。


「あそこだ!」


レイが指差す先には、モンスターに追われる仲間たちの姿があった。




悠真は息を切らしながら、ロックハウンドの爪を辛うじて避けた。

体力の限界が近い。これまで元気だった彼にも、ついに疲労の影が落ち始めていた。


拳を振るう。《ショックバンク》が炸裂し、ロックハウンドが倒れる。

だが、次の瞬間、砂に足を取られ足がもつれる。


「うわっ……!」


バランスを崩した悠真に、別のロックハウンドが飛びかかる。


「バレットダンス……!」


ミナの跳弾がモンスターを貫くが——


「弾切れ……!」


ついに彼女の魔導弾も底を尽いた。


一方、陸翔はスレイヴ・モールと格闘していた。

ナイフを振るうが、疲労からか角度が悪い。

硬い皮膚に刃が食い込み——折れた。


「クソッ……!」


ナイフの柄だけが手に残る。

スレイヴ・モールが巨大な前脚を振り上げた瞬間、


「させるか!」


カリムがシェルをノアに渡し、槍を構えて突進。

槍の穂先がスレイヴ・モールの急所を貫き、一撃で仕留める。


だが、彼も息が荒い。


ノアは弓を構えようとするが、魔力がほとんど残っていない。

魔力矢を放つことすらままならない状態だった。


「もう……限界か……」


その時、銃声が響いた。


ダダダダダ——!


自動小銃の連射音。

ロックハウンドたちが次々と撃ち抜かれ、倒れていく。


「お疲れさん!全員無事か?!」


レイの声が聞こえる。

銃火器を装備したギルドの冒険者たちが、残りのモンスターを蹴散らしていく。


火炎放射器が唸りを上げ、氷の魔法が地面を凍らせる。

雷撃が走り、爆発音が響く。


あっという間に、モンスターたちは全滅した。


「間に合った……」


悠真はその場に膝をついた。

陸翔も同様に、地面に手をついて息を整える。


「大丈夫か?」


レイが駆け寄ってくる。


「なんとか……生きてる」


悠真が苦笑いを浮かべる。


「まだ大きな集団がこっちに向かってくるまでは時間がありそうだ。一旦街に戻って、体制を整えよう」



街の広場では、慌ただしく防衛の準備が進められていた。


武器庫から運び出された大量の武器。

ヒーラーたちが設営した応急処置所。

そして——


「悠真さん!」


リオの声が聞こえた。


悠真が振り返ると、白衣を着たリオが駆け寄ってくる。


「来てくれたんだ!診療所は平気なの?」


「当然です。今一番必要なのはここですから」


リオは吹っ切れたような笑顔を見せた。


「診療所は……辞めちゃいました!」


「え……」


「代表の人とは考えが合わなくて。でも、後悔はありません。私は私が1番必要だと思えるのところにいたいんです」


その笑顔は、以前より強く、そして自由だった。


「《スティグマ・ヴェール》」


リオが悠真の小さな傷に手をかざす。

温かい光が傷を癒していく。


「ありがとう。でも、無理しないでよ」


「大丈夫です。今度は、一人じゃありませんから」


リオは他のヒーラーたちを振り返る。

彼女の決意に続いて集まった仲間たちが、それぞれの持ち場で治療を行っていた。



武器庫では、各自が装備を選んでいた。


「お、このマチェットいいな。」

陸翔は大型のマチェットを手に取る。

刃渡り60センチ程度の重厚な刀身。折れたナイフの代わりには十分だった。


「これにする」


銃弾も補充し、グロック17に装填していく。


悠真も弾薬を補充しながら、新しい手甲に目を向ける。

より頑丈で、より高性能な品が並んでいた。


だが——


「やっぱり、これがいいかな」


自分で買った手甲を見つめる。

使い慣れた重さ、手に馴染んだ感触。

初めて自分で選んだ装備への愛着があった。


そんな時、陸翔と目が合った。


「なあ、陸翔。インプリントの時に見たカイって……」


「そんなサクッと終わる話しじゃねーから」


陸翔は即座に答える。


「これが終わったら話すよ。全部」


その言葉に嘘はなかった。

悠真は頷く。


「わかった。約束な」



広場に招集の合図が響く。


ボルガンが高台に立ち、作戦を説明し始めた。


「敵接近まで、大型の銃火器で迎撃。接近されたら近接戦闘部隊が前に出る。接近戦ができない者は、スキルや魔法で援護だ」


冒険者たちがそれぞれの部隊に分かれていく。


「ただし、特別編成として遊撃隊を設ける」


カリムが前に出る。


「灰牙の輪、それに悠真、陸翔、レイ、ミナ。お前らは臨機応変に動け。危険な箇所があれば、すぐに援護に向かえ」


「ウンランは援護部隊だ。その代わり、死ぬほど地陣を作ってバリケードを構築しろ。敵を分断するんだ」


ウンランは頷く。

「任せてください」


城壁の上では、魔道砲が設置されていた。

魔力で砲弾を放つ大型兵器。3基の砲身が、砂漠の方角を向いている。


準備は整った。


夕陽が沈みかける中、砂漠の向こうから黒い影が見えてきた。


第一波の到着だった。


「来るぞ……!」


ボルガンの声が、街全体に響いた。


戦いの時が、ついに始まる。

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