24.
街の城壁から、銃火器を担いだ集団が駆け出していた。
レイを先頭に、ギルドの冒険者たちが砂煙を上げながら疾走する。
「あそこだ!」
レイが指差す先には、モンスターに追われる仲間たちの姿があった。
悠真は息を切らしながら、ロックハウンドの爪を辛うじて避けた。
体力の限界が近い。これまで元気だった彼にも、ついに疲労の影が落ち始めていた。
拳を振るう。《ショックバンク》が炸裂し、ロックハウンドが倒れる。
だが、次の瞬間、砂に足を取られ足がもつれる。
「うわっ……!」
バランスを崩した悠真に、別のロックハウンドが飛びかかる。
「バレットダンス……!」
ミナの跳弾がモンスターを貫くが——
「弾切れ……!」
ついに彼女の魔導弾も底を尽いた。
一方、陸翔はスレイヴ・モールと格闘していた。
ナイフを振るうが、疲労からか角度が悪い。
硬い皮膚に刃が食い込み——折れた。
「クソッ……!」
ナイフの柄だけが手に残る。
スレイヴ・モールが巨大な前脚を振り上げた瞬間、
「させるか!」
カリムがシェルをノアに渡し、槍を構えて突進。
槍の穂先がスレイヴ・モールの急所を貫き、一撃で仕留める。
だが、彼も息が荒い。
ノアは弓を構えようとするが、魔力がほとんど残っていない。
魔力矢を放つことすらままならない状態だった。
「もう……限界か……」
その時、銃声が響いた。
ダダダダダ——!
自動小銃の連射音。
ロックハウンドたちが次々と撃ち抜かれ、倒れていく。
「お疲れさん!全員無事か?!」
レイの声が聞こえる。
銃火器を装備したギルドの冒険者たちが、残りのモンスターを蹴散らしていく。
火炎放射器が唸りを上げ、氷の魔法が地面を凍らせる。
雷撃が走り、爆発音が響く。
あっという間に、モンスターたちは全滅した。
「間に合った……」
悠真はその場に膝をついた。
陸翔も同様に、地面に手をついて息を整える。
「大丈夫か?」
レイが駆け寄ってくる。
「なんとか……生きてる」
悠真が苦笑いを浮かべる。
「まだ大きな集団がこっちに向かってくるまでは時間がありそうだ。一旦街に戻って、体制を整えよう」
街の広場では、慌ただしく防衛の準備が進められていた。
武器庫から運び出された大量の武器。
ヒーラーたちが設営した応急処置所。
そして——
「悠真さん!」
リオの声が聞こえた。
悠真が振り返ると、白衣を着たリオが駆け寄ってくる。
「来てくれたんだ!診療所は平気なの?」
「当然です。今一番必要なのはここですから」
リオは吹っ切れたような笑顔を見せた。
「診療所は……辞めちゃいました!」
「え……」
「代表の人とは考えが合わなくて。でも、後悔はありません。私は私が1番必要だと思えるのところにいたいんです」
その笑顔は、以前より強く、そして自由だった。
「《スティグマ・ヴェール》」
リオが悠真の小さな傷に手をかざす。
温かい光が傷を癒していく。
「ありがとう。でも、無理しないでよ」
「大丈夫です。今度は、一人じゃありませんから」
リオは他のヒーラーたちを振り返る。
彼女の決意に続いて集まった仲間たちが、それぞれの持ち場で治療を行っていた。
武器庫では、各自が装備を選んでいた。
「お、このマチェットいいな。」
陸翔は大型のマチェットを手に取る。
刃渡り60センチ程度の重厚な刀身。折れたナイフの代わりには十分だった。
「これにする」
銃弾も補充し、グロック17に装填していく。
悠真も弾薬を補充しながら、新しい手甲に目を向ける。
より頑丈で、より高性能な品が並んでいた。
だが——
「やっぱり、これがいいかな」
自分で買った手甲を見つめる。
使い慣れた重さ、手に馴染んだ感触。
初めて自分で選んだ装備への愛着があった。
そんな時、陸翔と目が合った。
「なあ、陸翔。インプリントの時に見たカイって……」
「そんなサクッと終わる話しじゃねーから」
陸翔は即座に答える。
「これが終わったら話すよ。全部」
その言葉に嘘はなかった。
悠真は頷く。
「わかった。約束な」
広場に招集の合図が響く。
ボルガンが高台に立ち、作戦を説明し始めた。
「敵接近まで、大型の銃火器で迎撃。接近されたら近接戦闘部隊が前に出る。接近戦ができない者は、スキルや魔法で援護だ」
冒険者たちがそれぞれの部隊に分かれていく。
「ただし、特別編成として遊撃隊を設ける」
カリムが前に出る。
「灰牙の輪、それに悠真、陸翔、レイ、ミナ。お前らは臨機応変に動け。危険な箇所があれば、すぐに援護に向かえ」
「ウンランは援護部隊だ。その代わり、死ぬほど地陣を作ってバリケードを構築しろ。敵を分断するんだ」
ウンランは頷く。
「任せてください」
城壁の上では、魔道砲が設置されていた。
魔力で砲弾を放つ大型兵器。3基の砲身が、砂漠の方角を向いている。
準備は整った。
夕陽が沈みかける中、砂漠の向こうから黒い影が見えてきた。
第一波の到着だった。
「来るぞ……!」
ボルガンの声が、街全体に響いた。
戦いの時が、ついに始まる。




