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Beyond the Record  作者: しおん
『サル=ヴァリド』
13/29

レイたちと依頼をこなしたり、スキルの訓練やこの世界について教えられながら、数日が経った。

訓練場の空気は乾いていた。午前の陽射しが鉄製のターゲットに反射し、白い光が地面を焼くように広がっている。


赤い月、クロトを見上げながら悠真は拳を握ったまま、昨日のレイの言葉を思い返していた。


「お前ら近付くと強いけど2人だけなら近接しかないよな。銃がかなり使えるやつだったら1人でも完封されるかもな。まぁはっきり言うとバランスが悪い。」


そう言ってレイは、悠真と陸翔の装備を見た。拳と短剣。スキルも近接とコピー。接近戦に特化と仲間がいないと使えない尖った構成だ。


「まあ、拳が一番慣れてるしな。じいちゃんの訓練のおかげで。」


悠真が肩をすくめると、ウンランが笑いながら言った。


「でも、銃も使えた方がいいよ。訓練用借りてやってみたら?中距離での対応力が全然違うからね。特に魔物相手だと距離を取れる武器は外だと特に安全マージン取りやすいから生存率に直結するし。大型なんて素手やナイフじゃどうにもならないよ。まぁそれは普通の銃でも一緒か。」


そう言って笑いながら肩をすくめる。


「やるやる!日本じゃ海外旅行でしか撃てないからねー!」


その言葉に、陸翔が頷いた。


「俺もやる。使えるなら使えた方がいい」


それが、銃訓練の始まりだった。


レイはギルドの裏手にある訓練場へ二人を連れて行った。そこには、小型の訓練銃が並んでいた。反動を抑えた軽量型で、初心者でも扱いやすい設計になっている。


「まずは構え方。肘を伸ばしすぎるな。肩で吸収しろ」


レイの指導は的確だった。悠真は銃を握り、ターゲットに照準を合わせる。引き金を引いた瞬間、衝撃が腕に走った。


「……っ!」


拳とは違う。衝撃の質が異なる。《ショックバンク》のスキルが反動を吸収しようとするが、拳のような連動性がない。それでも、撃った瞬間の感覚は悪くなかった。


「殴る方がしっくりくるけど、撃つのもスキルがなんか反応してるみたい。」


悠真が呟くと、陸翔が隣で笑った。


「遺跡でも思ったけど結構うるさいな。」


「ねー!オレデザートイーグル撃ってみたい!」


二人のやり取りに、レイが苦笑する。


「なんでもいいけど、ちゃんと当てろよ。モンスターは撃ち返してこないけど、外したら意味ないからな」


訓練は数時間続いた。汗が額を伝い、銃のグリップが手に馴染んでいく。悠真は拳との違いを感じながらも、少しずつ銃の扱いに慣れていった。ちなみにデザートイーグルは撃たせてもらったが一発も的に当たらなかった。



その日の夕方、ギルドに戻ると、受付のミナが一枚の依頼書を手にしていた。


「ちょうどいいタイミング。新しい依頼があるよ」


悠真が受け取ると、そこには「廃村調査」と記されていた。場所は街から北西に数十キロ離れた山間部。魔力の異常反応が観測されたらしい。何がいけないのか、悠真には一切わからなかった。


「医療支援者同行の可能性あり……?」


依頼書の下部に、小さく名前が記されていた。


「リオ・アステル」


その名前に、ミナが反応した。


「リオって子、こないだ話したヒールスキルの子で診療所手伝ってるよ。転移者で、街にはもう2ヶ月くらいいるよ」


レイも頷いた。


「俺も何度か見たことある。ヒールスキルの精度が高いらしいな。どっかのお偉いさんが専属に引っ張ろうとしても全然なびかないとか」


「へぇ、なんで依頼に同行するの?」

「戦闘の可能性が高くて、なおかつそれが複数回ありそうな場合ね。ヒーラーは希少だからチーム内にいることはあまりないの。」

「そりゃそうだよね。ゲームじゃないんだからこれ覚えられる職業に就こうとかできないもんね。」


陸翔が呟く。


「ヒーラーね…」

「ん?」

「独り言だよ。」


「お前らがその依頼受けるのか」

「うわっ」


振り向くと250センチは軽くありそうな巨人族が立っていた。

「ボルガンさん!お疲れ様です。悠真、陸翔、この人がここのギルドマスターだ」

「そんな畏まらなくていい。お前らが悠真と陸翔か?かなりやるらしいな。ギルドで噂になってるぞ。」

「マジですか?受付のお姉さんにも注目されちゃうかな?あ、蒼月悠真っす。よろしくお願いします。」

「こんちは。初めまして。神原陸翔です。」

「ボルガンだ。ふむ、確かに中々出来そうだの。ちょっと悠真は頭弱そうだが。そうそう、その依頼の話しだった。」

「この依頼何かありました?」

「あぁ、その依頼の現象、レコード機関も興味を示してるって噂を小耳に挟んでな。一応忠告しておこうと思っただけだ。」

「マジかー。けどオレも実際に絡むどころか見たこともないんすよね。実際どんな感じなんですか?」

「うーむ、あまり表に出てこない奴らだかの。レイは来て半年くらいだったから?かなり昔からある組織じゃが全貌も目的も明らかになっておらん。全員ヒューマンで何かを探してるとか集めてるとか聞いたことがあるくらいじゃな。ただ機関の者たちは全員スキルを進化させておる。強いぞ。一度依頼で敵対したことがあるがかなり手酷くやられたが何故か見逃された。」

「ボルガンさん達でも勝てないって……」

「大丈夫、敵対しなければいい。奴らはスキルを持つ者なら敵対しない限りは襲わない。かち合ったら譲って良い。」

「はい、それなら…」



その夜、悠真と陸翔はギルドの屋上にいた。借りた銃の手入れをしながら、夜風に吹かれていた。


「じいちゃんの訓練、思い出すな」


悠真がぽつりと呟く。


「銃は教えてもらってないけど、戦うってことの意味は教わった気がする」


陸翔が頷く。


「あの人は、俺たちに“生き残る方法”を教えたんだ。でも、あれは……戦うためじゃなくて、自分を守るためだった気がする」


悠真は空を見上げた。星が瞬いている。遠く、廃村の方角に黒い影が広がっているような気がした。


「リオって子、そんな凄いヒールスキル持っててなんで同行するんだろ?ただでさえヒールスキル貴重みたいだしそんなリスクあることしなくても安泰じゃん。」


「わかんねぇけど……一緒に行くなら、怪我させないようにちゃんと見ておかないとな」


夜風が二人の言葉をさらっていく。銃の金属音が静かに響き、次の戦いの予感が、確かにそこにあった。

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