第84話「Light struck a single point.」
俺が放った無数の黄金の弾丸たちが、眩い光の尾を引きながら空を裂く。
それはまるで、打ち上げ花火が逆再生されるかの如き軌道を描き、巨漢の魔族――フランケンの頭部へと一転に集中していった。
「何故だ……勇者はまだ、召喚された直後だったはず——」
何かを言いかけた赤い巨体の声が、頭が、文字通り『消えた』。
一瞬の静寂の後、首の断面から勢いよく噴き出した血飛沫が、ただでさえ赤いオーガの巨体を、さらにどす黒い赤へと染め上げていく。
そして、大木が倒れるような地響きと共に、魔王軍の幹部とやらは崩れ落ちた。
……少し、冷静になってみよう。
待て待て待て、今の何?
どうやって使ったんだ俺?
振り返ると、俺の背後にはまだ、すっごい数の黒い拳銃が銃口を光らせ、フワフワと浮いている。
マジで?
えー……しかも、魔王軍の幹部倒しちゃったんですけど。
もしかして、俺が貰ったこの『銃司』ってスキル、ヤバいくらいチートなのでは?
「ヒツキ様……」
「え? あ、ユー!」
いかんいかん。
ここは、女の子の前だしちょっと格好良く決めないと。
俺は勇者なのだ。フデキじゃなくて。
「大丈夫?」
少し声のトーンを落とし、ちょっとキメ顔で振り返ってみた。
しかし、俺の心配はどこへやら。
あれだけの衝撃波を食らって吹き飛ばされたはずのユーは、メイド服に土埃ひとつつけず、完全に無傷でそこに立っていた。
何それヤバ……。
「はい」
そのあまりに淡々としている返事が、俺は恐ろしくて仕方がなかった。
あの化け物を前にしても、倒した後でも、この人は一切表情を変えないのだ。
◇◆◇
あれから、ダンジョンを出た俺たちは、皇帝に進捗を報告するとのことで、近くの冒険者ギルド支部に立ち寄っていた。
何でギルドなんだろうと思ったが、てか、本当に有るんだな冒険者ギルド。
ファンタジーの定番施設に少しテンションが上がる。
「どうしてギルドに?」
「通信魔道具を借りようと思いまして」
ユーは受付嬢と何やら言葉を交わしている。
時折、ロビーにいるゴツい冒険者たちやギルド職員にジロジロ見られたりもしたけど、まあ目立つメイド服と、異世界人丸出しの俺の制服のせいだろう。
あまり気にしない事にした。
ユーは受話器のような魔道具を耳に当て、淡々と報告を始めた。
『ヒツキ様は、ダンジョン第二階層に出現した七将軍の一体を討伐されてしまいました』
『……はい。"圧壊"を』
『……了解致しました』
ユーは受話器のようなものをガチャリと置くと、俺に向き直った。
「皇帝陛下が、そのままダンジョンの最下層まで踏破するように、と」
「へー。分かった」
俺は適当に返事をしながら、実はさっきから一つ、猛烈に気になっている事があった。
そっと右手のひらを開いて、視線を落とす。
『スキル「銃司」 Lv.164』
え?
は?
え?
スライム倒した直後、レベル2だったよな!?
魔王軍幹部は伊達じゃないってことか……莫大な経験値でも入ったんだろうか。
これ、上限ってあんのかな?
無いよな、多分。
それにしても、銃火器ヤバいな。
ただのハンドガン(光ってたけど)を大量展開しただけであれなら、レベルが上がった今、ショットガンとかアサルトライフル、下手したらロケットランチャーとか、もっとヤバい武器も出せるんじゃね?
出来るか知らんけど。
うわ、今、めっちゃ試したい!
「ヒツキ様?」
「え? いや、ダンジョンにもう一回行きたいな〜……って。早く色んな武器を試してみたくてさ!」
俺が意気揚々と出口に向かおうとした、その時。
グルルルゥゥゥ……。
ギルドの静かなロビーに、俺の腹の虫の音が盛大に鳴り響いた。
そうだ。昨日召喚されてから、俺何も食べてない。
「あっ」
「……お気持ちは分かりますが、その前にお食事ですね」
「……はい」
最強のスキルを手に入れても、生理現象には勝てない俺であった。




