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第83話「The opening shot.」

ユーは、やっぱり凄い人らしい。


元々はアードストールという国の、王女の侍女をやっていたそうだ。

だが俺が召喚されると聞いて、フェルウェード帝国に渡ってきたとのことだ。

国を跨いでまで勇者の世話を任されるなんて、よっぽど信頼されているんだろう。


そして、俺は今——。

彼女と共に、アードストール王国のダンジョンに来ている。


「私はサポート向きですので。ヒツキ様が前に出て、戦い方を掴んでいただければと」

「分かった。やってみるよ」


確かに、一般的な拳銃ってそんなに射程距離が長いわけじゃないもんな。

触ったことはないけど、映画とかの知識だとそんな感じだ。


ぴちゃっ。ぴちゃっ。


洞窟の奥から、湿った音が聞こえてくる。


「お。スライムじゃん」


ど定番の雑魚モンスターで良かったー!

最初からグロい化け物とかだったら、トラウマになっちゃいそうだし。


「スキル『銃司』」


銃を構え、俺はスライムに黄金に光る銃口を向ける。

指先に神経を集中させ、ゆっくりと引き金を引いた。


パンッ!


乾いた音と共に、光の弾丸がスライムの中央を貫く。

ズチャッ……という音を立てて、スライムはあっけなく霧散した。


「お見事です」

「当たった! 当たったよ、ユー!」


初勝利の喜びに浸る。

だが、ふと右手に違和感を覚えた。

何かと思って、手のひらをじっと見つめる。

そこには、俺にしか見えない半透明の文字が浮かんでいた。


『「銃司」 Lv.2 』


「何これ。レベル? そんなのあるの?」

「……? いえ、そういった概念はこの世界には存在しないはずですが」


昨日の夜、ユーに教えてもらった知識とは食い違っている。

あれか、勇者補正ってやつだよな、きっと。

俺にだけ特別なシステムが見えているとか、そういう王道展開だ。



しかし、ゆっくりレベルアップの余韻に浸っている時間はなかった。

まだダンジョンの二階層目。

そんな浅い場所に、あんな化け物が出てくるなんて誰も予想していなかった。


「ヴゴォォオオッ!」


鼓膜を震わせる轟音。


「えっ?」


見上げると、巨大な木の棍棒が今にも俺の頭をすり潰そうと振り下ろされていた。

反射的に目を閉じる。

だが、衝撃は来なかった。


薄灰色の魔法の板のようなものが、俺と棍棒の間に割り込んで、攻撃を防いでくれていた。


そこにいたのは、とんでもない巨体。

肌は赤く、盛り上がった筋肉が岩のようだ。

いわゆる「オーガ」だという。


「……! ヒツキ様、下がってください。あの魔物は賞金がかけられています」

「何だって!?」

七将軍(ゲーツ)第六席……"圧壊"のフランケンです」


魔王軍の幹部が、何でこんなところに!?


その時、フランケンを抑え込んでいたユーの結界が、紙細工のように無残に破られた。

そして即座に、彼女に向けて衝撃波が発生するほどの打撃が飛ぶ。


「っ!」


ユーが後方へ吹き飛ばされる。


「閉じ込めるな……あの時の屈辱、忘れた訳ではあるまいぞ」


フランケンは、何かに酷く怒っている様子だった。

ユーも「あの時」と言われても心当たりがないらしく、ただの八つ当たりだろうと察したようだ。


いや、魔王軍の幹部が八つ当たりでこんなダンジョンを荒らしてるのかよ。


「ここで死んでもらおう……!」


フランケンが再び棍棒を構え、俺たちを纏めて叩き潰そうとする。


「ヒツキ様だけでも、お逃げくだ——」


やらせない。

目の前で、俺を守ろうとしてくれた人を死なせるなんて、絶対やらせない。


止めるんだ。

誰にも、二度と「フデキ」なんて呼ばせてたまるか。


パッとしない、守られるだけの自分は、あの日あの坂道で置いてきたんだ。


「スキル『銃司』、全展開!!」


俺の咆哮に呼応するように、背後の虚空に数十、数百もの拳銃に似た「光の銃器」が浮かび上がった。


「放射ァーッ!!」

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