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第47話「命題10」


「それでは、第十命題を発表致します」


聖女ユミィは、気を取り直して役割を全うする。


「第十命題は、レベル山岳より"原因不明の資源急減"です。レコ殿、どうぞ」

「……おう」


椅子から立ち上がったのは、レベル山岳の代表者である、ドワーフのレコだった。

しかし、元々小柄な種族であるため、立ち上がってもなお、他の代表者たちが座っている時より背が低く見える。


「もう各山の連中には伝えてある。ここ数ヶ月、鉱石の採掘量が目に見えて減っとる。理由は分からん。精霊様の機嫌か、あるいは大地の寿命か……とにかく、このままじゃ道具も武器も作れんようになる」


当然のように、そこに具体的なデータや推移を示すグラフなどは存在しない。

文系の極致、職人気質の彼らにとって、それは「肌で感じる危機」でしかなかった。


「……で、どうすればええ? 誰か頭の良い奴、解決策を考えてくれ」


レコが投げやりに、しかし切実に会場を見渡す。

すると、会場の視線は自然と一箇所に集まった。


「……また俺か」


ジルはため息をついた。

これで何度目だろうか。

もはや様式美と言ってもいい流れで、現地調査の要請が彼に回ってくる。


「ジル殿、お願いできますか? 数学的見地からの調査を」


聖女ユミィの問いかけに、ジルが肩をすくめて応えようとした、その時だった。


円卓の一角に座っていた機械王が、ガガッ、と不自然な音を立てて身を震わせた。


「……?」


次の瞬間、機械王の関節部分から一本のネジが弾け飛び、放物線を描いてジルの額めがけて飛んできた。

さらに、歯車の間からはパラパラと赤黒い錆の欠片が溢れ出す。


(秒速10.5mか。『数学者』、ベクトライザー)


咄嗟にスキルを発動し、ネジのベクトルを捻じ曲げ床に落下させる。


「おい、大丈夫か」


機械王は無機質に「ウム。モ、モ問題ない」と答えたが、その挙動は故障以上の不気味さを孕んでいた。



——こうして、混乱と困惑の中に世界議論会は幕を閉じた。


議論会の終了後、王城の舞踏会場ではささやかな会食が開かれていた。

きらびやかなシャンデリアの下、人々が談笑する中、会場の隅にある柱の影で、大華飾魔導国の統治者ノアと、商人ケイが密やかに言葉を交わしていた。

その表情には、議論会で見せていた顔とは違う、深い光が宿っている。


一方、バルコニーではユミィがエドを厳しく叱り飛ばしていた。


「フレッド、貴方のあの乱入は何ですか! 聖教国の品位を貶めるにも程があります! 日頃の不真面目な態度に目を瞑れば、貴方は優秀な聖騎士なのに…」

「わ、悪かったって…でも、冷やかしに来た訳じゃないし、どうしても伝えないといけない事があって…。魔王についての書簡を、大聖堂の地下室で見つけて……それを一刻も早く…」


エドの兜越しに見える、珍しく真剣な眼差しに、ユミィは言葉を飲み込んだ。



その頃、ジルは予備の白いスーツに着替えて上機嫌なポラリスと、デミトアの三人で地図を囲んでいた。


「さて、受けた依頼をどう回るかだな」

「空中都市は後で良いと思う」

「だな。デミトアは…」

「そうですわね……わたくしがご同行出来るのは、お父様に許可を戴いてからになるかもしれませんわ」


そこへ、軽いノリでタクタが割り込んできた。


「ウチらメリアー諸島を初っ端で頼むで〜! 暑いやろうけど飯は最高やし、観光地盛り沢山やしな!」

「……まあ、効率を考えれば南から順に北上するのが最適解か。分かった、あんたの所から行こう」

「よろしゅう〜!」


ジルが手元のノートにペンを走らせる。

確定したルートは——


1メリアー諸島

2貿易都市イェクアールベッツィア

3大華飾魔導国

4魔王城

5レベル山岳

6空中都市ソオラ

7鎖国国家サクラ


「……長い旅になりそうだな」

「面白そうだしいいと思うよ」


ポラリスが不敵に笑い、デミトアが静かに頷く。

ジル一行の、世界を数学的に解き明かす旅が、本格的に始まろうとしていた。

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