表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/69

第44話「命題7」part1 -沈黙-

「両方とも武器を下ろしなさい」


有無を言わせぬ声が、外で降り始めた雪の中に紛れた。


一拍。

誰も動かない。


氷の棘が軋み、インテグラルが微かに揺れる。


「……二人以外は、既に会議場で待っています」


聖女ユミィは、そこで初めて言葉を継いだ。


「第七命題は、ノルゼリアから提出されたものです」


それでも、女帝ハレーは杖を下ろさない。


「ここは王城。私闘を許す場ではありません」


穏やかな声だったが、退く気はなかった。

沈黙の末、先に動いたのはジルだった。

『数学者』スキルを解除し、何も言わずに踵を返す。

ハレーは杖をつき、舌打ちを一つ。

だが、後に続いた。




アードストール王城 大会議室


「それでは、第七命題を発表…」


俄かに、ユミィが言い淀んだ。

ただ、彼女の微笑みが——悲壮と、倫理的な不快感に塗り潰された。


「……申し上げかねます」


ユミィが怯んだそのタイミングを見計らったのか、ハレーが立ち上がって口を開いた。


「第七命題は、最北の里並びに全世界の理系殲滅よ」



その場の誰も、ものを言わなかった。

唯一、音がしたと言えば書記官が筆を落としたくらい。


「不要なものを整理するだけよ」


議論会の参加者は、誰とも目を合わせようとしなかった。

まるで、議論をするという目的を忘れたかのように。


「まず手始めに、朕の領土である最北の里を燃やして大半を根絶させる」


ハレーは続けた。


「次に、各所の理系を駆除しさえすれば、勝手に絶滅するわ」

「だって、資源には限りがあるわ。時間も、財だって。それらが割かれるのは、心を真に交わせる文系だけで充分よ」

「もちろん例外は認めないわ。ゴミの分別は嫌いでしょう? まとめて燃やすのと何も変わらないわ」


皇帝アウレウスが、幾度か口を開いては閉じた。

先程の自信ありげな表情が、見るからに落ち込み気味になっている。


空中都市の代表代理のアメも、言葉を紡ごうとしたがやはり勇気が足りない。



大会議室の中に、女帝ハレーに反論できる者が何人いるだろうか。

場がそういった雰囲気になりつつあった。

だが——ここで、ある人物の発言が皮切りとなる。


「そんな態度だから、己等の先祖はルーノルゼリアを滅ぼしたんすよ。やり過ぎって分からないんすか?」


空中都市ソオラ代表の従者、クウだ。

確かに、空中都市はかつてノルゼリアの前身を統治下に置いた歴史がある。


「そうだ! まだ分からないのか!」

「殲滅だなんて……!」


非難の声が幾つも上がる。

それでも、ハレーは冷静だった。


「"そこまでは言わないけど、正直居なくなっても困らない"、それがそなたらの意見の…曖昧な中枢よ」


批判者は、悔しさ半分納得半分で引き下がった。

クウにも分かっていた。


(女帝ハレーは、他の長レベルじゃないと止められない)


その時だった。


「……実に不愉快だ」

「統計学の外れ値ってのは、正にあんたの事だ」


立ち上がり声を発した2人は——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ