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三題噺もどき3

風呂

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくはちじゅうご。

 


 シャワーで体を流し、湯船につかる。


 足先から広がる熱に、少し熱かったかなと反省したが、まぁ、慣れればどうってことはないので気にしない。ただでさえ指先は冷えているので、通常より熱く感じてしまう。

 これでも、頭を洗ったり体を洗ったりしてから、湯船につかっているのでそれなりにあったまってはいるはずなんだけど。

「……」

 まぁ、シャワーの出しっぱなしは文句を言われるので、都度都度とめているからあったまり切ってはいないのかもしれない。

 手先は割とそうでもないんだけど、まぁ、動いているから当たり前か。

 足先はどうしても、冷えてしまう。

「……」

 湯量の関係上、胸のあたりまでしか浸かれないので、肩は早々に冷えていく。

 この温度にならしてから、肩までつかるとしよう。

 過去に何度か風呂場で倒れかけたことがあるので、その辺りは慎重にしていく。気を付けるべきは上がる時だが。

「……」

 風呂は心の洗濯とは誰が言ったんだったか。

 その言葉に妙に納得してしまうのは、やはり緊張が解けたような感覚になるからだろうか。

 家にいるだけの一日をすごして、今日も無駄にしたなんて思いながら。緊張何てしていないはずなのに、何かが解けるような感覚になる。

「……ふぅ」

 体の力が抜けて。思わずため息が漏れる。

 まだ誰も帰ってきていないので、家の中はとても静かだ。

 そうでなくても、浴室内は割と静かなんだけど。

「……」

 足を伸ばしたり、腕を伸ばしたり。

 ……そういえば最近足がものすごく張っている感じがしているのだけど、運動不足なのか水分不足なのか。その両方なのか。何もしていないのにつりそうになった時はやばいと思った。それがどうにかして治るものなのかは分からないが。なんとなく、太もものあたりをもんでみたり足首を曲げて見たりと、マッサージもどきをしてみる。

「……」

 こういうのってあんまり風呂でしない方がいんだろうか。

 知らないんだよなそういうの。興味がないから。

 気分でもんでいるだけだもの。どうせ明日はしない。

「……」

 そうこうしているうちに体が温まり始めたので。

 さて肩までつかろうかと、腰の位置をずらそうとしたところで。


 ガラー


 と。

 脱衣所のドアが開く音がした。

 人影が揺れ、誰かが入ってきたのが分かる。

「……」

 大方母でも入ってきたんだろう。

 帰ってきたのか。今日は早番だったんだな。

 洗濯を入れているのか、物音が聞こえる。

「……」

 別に。家族だから良いのだけど。

 人が風呂に入っているの分かるはずなんだがな。

 浴槽をためたりするためのスイッチは、風呂場のももちろんあるが、外にも設置されている。脱衣所のドアの横に。

「……」

 いやまぁ、良いんだけど。

 ほんと。いいんだけど。

 少しは遠慮という物をいい加減覚えた方がいい。

「……」

 私は清廉潔白でも何でもないのだ。

 嘘だってつくし私欲まみれだし汚いことだってする。嫌なことはあるし、好き嫌いだってする。不快に思うことなんてこの世にごまんとある。

 その中でも他人に対する配慮がないやつが群を抜いて嫌いなのだ。

「……」

 人にされて嫌なことを自分でしない。なんて、幼い子供が教えられることだ。

 まぁ、あの人は、自分が風呂に入っている時に急に脱衣所に入られたくらい嫌なことではないと言うことかもしれないが。

「……」

 そんなこと言ったら、元も子もないな。

 殺されるのが嫌じゃないから殺してもいいみたいな暴論が生まれるかもしれない。

 そんなことはないか。

「……」

 はぁもう。なんだか、一気に興が削がれた。

 あの人が脱衣所から出たら私も出よう。

 上がるときは慎重に。また倒れたら大変だからな。











 お題:マッサージ・人影・清廉

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