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進め!魔法学園  作者: 木こる
1年目
38/150

11月中旬

第一試合

高音凛々子&森川早苗 vs 田辺裕之&渡辺光輝


田辺渡辺は4組の生徒で、かつては割と人気者であった。

というのも彼らは休み時間毎に新作コントを発表して、

教室中を笑いの渦に巻き込んでいたのだ。

が、そのネタが昔のお笑い芸人の丸パクリであると発覚し、

彼らの人気は一気に低迷していったのである。


「俺のデータによると、高音は攻撃力だけの選手らしい

 それと森川が負かした25人中、23人は退学済みだ」


「俺の分析では、森川は雑魚狩りに特化した選手なんだろう

 それより高音のファイヤーボールには要注意だ」


「俺のデータによると、

 高音のファイヤーボールはゴーレムを一撃で倒せるらしい」


「俺の分析では、

 俺たちが勝てる可能性は10%を下回っている」



「ファイヤーボール!!」



「あぐわあああああ!!!」

「ぎょへえええええ!!!」


彼らは一撃でライフを0にされて敗退したが、

その見事なやられっぷりが観客に受け、少しだけ人気を取り戻せた。




第二試合

二宮百華&和泉竜牙 vs 四谷華恋&小林紅莉栖


この試合、実際に戦っていたのは和泉と小林だけであり、

二宮と四谷は示し合わせたかのようにサボっていた。

2人とも動き回ってはいたが、それはダメージを回避するためで、

観客からのブーイングも気にせずに堂々とサボり続けた。


実際、彼女らは示し合わせていたのだ。

2人は“一条ハーレム”の一員であり、どちらが勝ってもよかったのだ。

優勝賞金をハーレムのメンバーで山分けする取り決めをしており、

その途中経過はどうでもよかったのである。


一応、勝者は二宮和泉のペアだ。




第三試合

玉置沙織&野村勇気 vs 五色麗華&木村武将


五色も一条ハーレムの一員ではあるが、相手に危険人物がいるので

まずはそいつを排除しようと全力を振り絞った。

だがいくら玉置に近づこうとしても野村が壁として立ちはだかり、

遠距離から魔法で攻撃しようにも阻止され続け、

相方の木村と連携を取っても野村1人に完封されてしまったのだ。

剣も魔法もいけるオールラウンダー、恐るべし。


ちなみに玉置はずっとニコニコと戦況を見守っているだけだった。




第四試合

藤原千春&小田霧江 vs 真壁絵里&丹波義光


地味な選手同士による地味な展開。

そして地味な決着で地味に終わった試合。


結果は真壁丹波ペアが地味に勝った。




第五試合

丸山和輝&向井洋平 vs 黒岩真白&並木美奈


「ねえ、あんたたち

 私に買収されてくんない?

 できれば無駄な労力を省いて次の試合に進みたいのよねぇ」


それは並木美奈による大胆な提案だった。

選手同士の会話はマイクで集音されており、

観客席に筒抜けであるにも関わらずの発言だ。


「買収って……何を言い出すんだ!!」

「そういうのはこっそりやろうよ!!」


「まあまあ、よく考えてみなさいな

 この試合を勝ち抜いても次の相手はあの進道千里よ?

 どうせあんたたちじゃ100%勝てっこないでしょ

 そ・こ・で……

 ちょっとしたお礼を弾んであげるから、

 まだ可能性のある私たちに勝ちを譲ってほしいのよねえ」


「並木さん……あまり俺たちを見くびらないでほしいな」

「一体どんなお礼を弾んでくれる気なんだ……!?」



「中学時代の友達から合コンのメンバー集めを頼まれてるんだけどね

 あの子たち、戦う男に興味があるんだってさ

 しかもちょうど男子枠があと2つ余ってるんだけど……」



男子2人は提案を呑み、黒岩並木ペアが勝利した。




第六試合

進道千里&谷口吉平 vs 十坂勝&正堂正宗


「クソッ、ついてねえなあ!

 いきなり進道が相手かよ!」


「はは、まあしょうがないよ

 たとえ初戦を逃れても結局は決勝でぶち当たる相手だからね」


「んで、優等生よぅ

 なんか作戦は立ててきたんだろうなぁ?」


「そんなのあるわけないだろ?

 気合いと根性でぶち当たるしかないよ」


「チッ、結局それか……

 こうなりゃもうヤケクソだ

 せめてあの谷口をボコボコにしてやろうぜ」


「ああ、同感だね」


十坂正堂ペアは意気投合したが……



「ファイヤーストーム!」

「ぎゃあああああ!!」



なんと、進道千里は試合開始直後に相方の谷口を焼き払ったのだ。


「ははは! 燃えろ燃えろぉ!!

 存分に苦しめ谷口ぃ!!

 それから死ねえええぇぇっ!!」


ファイヤーストームやファイヤーボール、

それから属性違いの攻撃魔法のフルコースが谷口を襲う。


十坂正堂ペアはこの状況をどう判断していいのか迷ったが、

まあ進道千里の気持ちは理解できた。

彼らは谷口が焼却処分されるまでおとなしく見守り、

それが終了してから勝負を仕掛けたのだ。


「うおおおおっ!!」

「そりゃああっ!!」


「ファイヤーウェーブ!!」


それはファイヤーストームの応用であり、

更に言えばファイヤーウォールの応用……つまり応用の応用であった。

何層もの炎の津波が2人を連続で飲み込み続け、

彼らは手も足も出せずに、わずか数秒で敗退してしまったのだ。


進道千里、フィジカル最強格のペアをノーダメージで撃破……!




第七試合

安西もにか&芹沢氷雨 vs 三國麗奈&板東朱里


なんともグダグダな試合だった。

第四試合よりも低レベルな攻防を繰り広げ、

チーム毎のパワーバランスの差を感じさせる内容であった。


どいつもこいつも半年以上訓練を受けた者とは思えない動きで、

放った攻撃魔法は相手に届かず、接近戦は子供の喧嘩のようであり、

それでいて本人たちは至って真剣な表情で競技に取り組んでいた。


この2つのチームは両方とも弱い。

それは観客からすればつまらない光景であるが、

他の競技参加者にとってみればおいしい展開だ。

なにせ、どちらが勝っても弱いペアが上がってくるのだから。


結果は安西芹沢ペアの勝利。






第八試合

一条刹那&栗林努 vs 杉田雪&小中大


「キャ〜! 刹那様〜!」

「刹那様ー!負けないでー!」

「刹那様が負けるわけないでしょ」

「隣のロン毛男、ウザッ!」


一条は唇に手を当てた後、観客席に投げキッスを送る。

当然ウインク付きだ。

その仕草を見た一条ハーレムの女子たちは色めき立ち、

しかも彼を初めて見た他の女子たちも心を射抜かれ、

新規ファンを獲得することに成功したのだ。


「なあ一条……

 お前、男友達いねえだろ」


「んぁ?

 それがどうかしたか?

 俺には女さえいりゃいい

 あ、ひょっとして僻んでんのか?

 だったらお前も彼女作ればいいじゃんよ〜!

 ……まっ、作れればの話だけどな」


グリムは辟易(へきえき)していた。

隣に立つ相方は正真正銘のチャラ男であり、

彼が最も忌み嫌うタイプの同性だったのだ。

1組の生徒だから常人以上の魔法能力を有しているのだろうが、

大会を楽しみにしていた彼にとっては最悪のパートナーでしかない。


「まあ、割り切るしかねえな……

 俺はヒロシと勝負するから、お前は杉田さんの相手を頼む

 彼女のテレポートに追いつくのは無理だろうが、

 むしろそれをガンガン使わせてMP切れを狙う作戦だ

 女の尻を追いかけてばかりのお前には適任だろう?」


「おっ、よくわかってんじゃねえか

 (ヤロー)同士の戦いなんざ眼中にねえからな

 ただ、杉田の尻にゃ全然魅力がねえんだよなあ……

 俺の女になりゃあ腹一杯食わしてやんのによお」


苦手な男だが、とりあえず女を殴るタイプではなさそうだ。



「では……試合開始!!」



審判の合図を皮切りに両陣営の選手が一斉に動き出す。


グリムとヒロシは接近戦を仕掛け、両者の刃が交差する。

一条は作戦通りにユキに狙いを定めて駆け寄るが、

早速テレポートによって大きく距離を離される。


「おいおい、そんな怖がんなくてもいいって!

 同じ1組の生徒同士、仲良くやろうぜ〜?」


だが、その申し出にユキは眉をしかめる。

どうやら彼女もチャラ男が好きではないようだ。



ガキイィン!!



グリムとヒロシが選択した装備は共にソード&シールド。

最も標準的な冒険者の装備スタイルである。

ただしヒロシは右手に盾、左手に剣という形を取っており、

通常とは逆の持ち方なので対戦相手にとってはやりづらい。


……はずだった。


パシッ!


初手を制したのはグリムであった。


彼もまた左手に剣を持ち、ヒロシと同じ左構え(サウスポー)で挑んだのだ。

それは使い手の少ない型であり、初見で対応するのは難しい。

左構えの使い手であるヒロシにもそれは当てはまったのである。


「まあ、俺のはただの付け焼き刃だけどな

 もう二度目は無いだろうし、こっからはいつも通り(オーソドックス)でいかせてもらうぜ」


そう言い、グリムは右手に剣を持ち替えた。


「レーヴァテイン!!」


そして更に魔法を使用したのだ。

それもただの魔法ではない……



……魔法剣!



グリムが手にする剣の刀身に炎が纏っている。

RPGでよく目にするあれだ。

彼は、物理攻撃に魔法属性を乗せるあれを使ったのである。


「グリム、お前……

 滅茶苦茶かっけえなそれ!!

 あとで俺にも教えてくれ!!」


「ああ、あとでな……

 だが今は試合中だ

 勝たせてもらうぞ……!」


2人の剣士は再び刃を交える。



「ハア、ハア……

 おい待てよ杉田ァ!!

 べつに傷付けたりしねえから安心しろって!!

 ちょっと剣でツンツンするだけだから痛くしねえって!!」


だが、ユキは更にテレポートで距離を取る。

怪訝な表情なのは、この男の性格が苦手だという理由だけではない。

彼はいつも訓練で手を抜いているにも関わらず、

想像以上に運動能力が高く、テレポート先まですぐ追いついてくるのだ。

これでは攻撃魔法を撃つ余裕が無く、いつかMP切れを起こしてしまう。


さて、どうしたものか。



バシイィッ!!



グリムの魔法剣がヒロシの胴体に直撃し、

ポイントとライフの両方にダメージを与える。

対魔物戦では『MPの無駄遣い』と評されている魔法剣も、

こと対人戦においては有効な攻撃手段となり得る。


「くっ……!」


ヒロシは防戦一方だった。

純粋な剣技のレベルではヒロシが少しだけ上回っていたが、

グリムは魔法を交えた『“魔法剣”士』の戦術を磨いてきたのだ。


「ブラックファイア!!」


黒い火球がヒロシを襲う。

が、それは目の前で弾け飛んだのでダメージを負うことはなかった。


……が、グリムの狙いはそこではない。


パシッ!


彼はその黒炎で対戦相手の視界を塞ぎ、剣を命中させたのである。

グリムの強みは魔法剣だけではない。

魔法と剣の複合戦術……彼は『魔法&剣士』としても成長を遂げていた。


深淵の魔剣士グリム──その名に偽り無し。



ドカッ!!



「……はあっ!?」


グリムはますます一条が嫌いになった。


なんと彼はユキとの追いかけっこを断念して、

ヒロシとの真剣勝負にドロップキックで割り込んできたのだ。


「おい、ロン毛! 交代しようぜ!

 ここは俺に任せて、お前は杉田をやれ!」


「…………ざけんな」


グリムは盾を捨て、左手に黒い炎を燃え上がらせた。


「ぁん……?

 おい、一体なんのつもりだロン毛……

 まさか俺とやり合おうってんじゃねえだろうなあ?」


「そのまさかだよ……!!」


ゴウッ!!


一条にブラックファイアが直撃し、彼のライフは35減った。

どうやら見た目だけの攻撃魔法ではないようだ。


「がっ!

 てんめぇ……このオタクのロン毛野郎が……

 よくもやりやがったなァ!?


ブチギレた一条は剣を握る手に力を込め、

突然攻撃してきた味方に向かって適当に振り回し始めた。

その太刀筋は素人同然だが、彼のスピードには目を見張るものがある。

まともに修練を積み上げていれば立派な剣士にもなれただろう。


だがそこは深淵の魔剣士。

才能だけの素人に負けるのはプライドが許さない。


グリムは一条の剣技を全て片手でいなし、

パンチやキックなどの直接攻撃も当てさせず、

大きな隙を見つけてはブラックファイアを的確に放ち、

気がつけば一条のライフは0になっていた。



「ライフアウト!!

 一条選手……退場!!」



まさかの仲間割れによる敗退。

一条はただ呆然とするしかなかった。


ヒロシとの一騎討ちに横槍を入れた件だが、

彼は特に間違った行動はしていない。

むしろタッグ戦においては正しくすらある。


観客たちもそれを理解していたが、

グリムが感情を爆発させた理由もなんとなく察していたので、

それについてとやかく言う気にはならなかった。


……一部の女子以外は。


「死ねロン毛えええ!!」

「キモいんだよおおお!!」

「この裏切り者おおお!!」

「ホントウゼえええ!!」



一条ハーレムがまだギャーギャー騒いでいるが、まだ試合中だ。


グリムは電光掲示板を見て異変に気づく。

いつのまにか彼の持ち点が残り2まで減っていたのだ。

一条からの攻撃は完全に防いでいたにも関わらずだ。


「……ああ、なるほど

 奴とやり合ってる間にツンツンされてたのか

 まったく気がつかなかったぜ……

 やってくれたな、ヒロシ」


「我ながらセコい戦法だとは思ったけど、

 せっかくのボーナスタイムを見逃すわけにはいかないからな

 俺の持ち点も2しか残ってないんでね……」


両者が同時に剣を構える。

お互いにこれが最後の一撃となるだろう。



「では……試合再開!!」



2人の剣士が勢いよく飛び出す。


「「 うおおおおおぉぉぉっ!!! 」」


低い体勢からの斬り上げ……ヒロシの得意技だ。

グリムは的確に剣で受け止め、反撃の機会を窺う。

が、ヒロシの行動はそれで終わりではなかった。

彼は斬り上げる勢いを殺さずに、そのまま高く跳躍したのだ。


(チャンス……!)


グリムはそれを好機と捉えた。

おそらくヒロシは張り切りすぎて体が泳いでしまったのだろう。

あいつが降ってきた時が絶好のチャンス。いわゆる着地狩りだ。


グリムは心を無にして待ち構えた。



……が、ヒロシが降ってこない。



パシッ!


「は?」


なんか背中から音がした。


「え?

 ……は? 何?」


振り返るとそこにはヒロシの姿があった。


あり得ない。

ヒロシはその場で上に向かってジャンプしたのだ。

グリムの目の前で上に向かってジャンプしたのだ。

当たり前だが、人は空中で方向を変えることはできない。

それがどういうわけか、今はグリムの背後にいる。


(あ、そうか……杉田さんか……!)


彼女はテレポートの使い手だ。

きっと自分だけでなく、他人も瞬間移動させられるんだ。

そう思ってユキの方を見ると……


彼女は複雑な表情を浮かべてヒロシを眺めていた。


(え、違うのか……?)


その場にいる他の人物……審判の反応も確認すると……



やはり彼も複雑な表情…………ドン引きしていたのだ。



電光掲示板に表示されている持ち点は0。

グリムは最後の一撃を喰らって負けたのだ。


が、どうやって負けたのかがわからない。


「おいヒロシ

 お前、何をしたんだ……?

 俺に説明してくれ……頼む」


「ああ、二段ジャンプだよ

 練習じゃ1回も成功しなかったんだけど、

 やっと成功してくれてよかったぜ……

 俺って本番に強いタイプなのかな」


……いや、あり得ない。



「ポッ、ポイントアウト……!!

 この勝負……杉田選手と小中選手の勝利とする……!!」



最後にヒロシが謎の挙動を行なって物議を醸したが、

とりあえずこれで全チームの初戦が無事終了した。

基本情報

氏名:阿藤 理恵 (あとう りえ)

性別:女

サイズ:M

年齢:17歳 (12月25日生まれ)

身長:158cm

体重:58kg

血液型:B型

アルカナ:運命の輪

属性:雷

武器:錬金術師の杖 (杖)

防具:ブラックサバス (衣装)

アクセサリー:魔女の三角帽子


能力評価 (7段階)

P:2

S:2

T:4

F:8

C:9


登録魔法

・サンダーストーム

・ソウルゲイン

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