温泉宿で起きる、殺人事件を止めよう。
ベタなドラマと、いえば温泉殺人事件。今までに、こんな話もありそうだけれど。止めてみせる!殺人事件を!
というのが、目的のテレビゲームである。
予知が出来る、しゃべる、人が好きなキツネのコン太と出会った、探偵を夢見る十三歳の少年の主人公。主人公は、そもそもある推理力とコン太の変身能力で、事件が起きないように挑む。
「えーと、まず、どうしたらいいのかな…」友達も少ないし、彼女もいないので一人言で、脳内をまとめてみる。お一人様ライフが板についている。どうだ、見たか。格好をつけて、現実のライフまで上げる始末。手慣れたもんだろ?
「そうだ、フロントで聞くのがいいな。何か情報は…」
「お客様、何かご用ですか?」ごく普通の返答を返してくれる、ゲームのフロント係。
「選択肢か…」
(イ)「僕、探偵なんだけど。事件の臭いを感じてるんだ。誰か、怪しい人、いない?」
(ロ)「(仕事、出来そうな女性へとコン太が主人公にくっついて変身)精神科医なんだけど、病んでる患者が、診察に来ないで、この宿に泊まったようなの。精神がキツそうな人いなかったかしら?」
(ハ)「(相撲取りに変身)確実に怪しい人が、この宿にいるでごわす。情報を教えるでごわす」
「なんだこれ…」俺は、あまりの分かりやすさに面白くなさそうな気配を感じてしまった。
「(イ)と(ハ)はないだろ…。(イ)は、大人をからかうな。(ハ)は、怪しいのは、あなたですよって、なる。ただ、(ロ)は現実でも、危ないやり方だな。悪いやつがマネしたら危険だ…」
俺は、取り敢えず(ロ)にした。
「その方の、お名前は?」と、フロント係。
「私にばれたくなくて、偽名を使ってるかもしれないわ。精神キツそうな人、いなかった?」
「四人、いらっしゃいました…」と、そっとフロント係は教えてくれた。
「おいおい。フロントの人。もっとつっこんで、ぬかりがないように、きちんと聞かないと。悪用する人に、情報漏れしちゃうぞ」
まあ、とにかく四人の部屋番号を教えてもらえた。
後は、さりげなく接触して、数々のヒントで推理して、殺人を犯してしまう人を捜す。
ったく、なんで主人公は、うっかり女湯に入ってしまうんだ。ゲームだから、いいけど。絵が綺麗だしな。
こうやって、のぼせている間に、通常のドラマ、湯けむり殺人事件は起きてしまうのだ。
だけど、こういうゲームだから、クリアすれば、人は死なないさ。殺人を止めた達成感。すっきりする。
まあ、こうすっきりするのも、世に素晴らしい探偵小説があるからだね。