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52.容疑者6

「おい、どうした?ロイド」


「ああ、あそこの柱にいる男って何処の奴?」


「は?」


 ロイドに言われて柱の方向に顔を向けるとそこには男女のカップルがいた。


「さぁ……みない顔だな」


「このパーティーの参加者リストに載ってたか?」


「……そういうことは主催者きけよ」


「動作がぎこちない」


「不審者は入れない」


「まぁ……そうだな」


 酷薄な笑みを柱の男に向けると紳士クラブのメンバーの元に歩いていった。


(アレは警察関係者だな。そういえば主催者の家はそちら関係にパイプがあるとか聞いたことがある)


 彼らの目的は自分だと察しがついた。


(やれやれ。容疑者から離れたと思ったらまだついてまわるのか)


 疑わしきは罰せずというが、彼らの場合は疑わしいだけで即アウトである。


(仕方がない)


 犯人の手がかりなし。

 唯一の手掛かり。それは被害者が全員、ロイド・マクスタードという人物と深く関わっていたということだけ。そんな状況で疑わしき人物から目を外す訳がない。


「ククッ。人気者は辛いね」

 

「何言ってんだお前?」

 

「いやなんでもねぇよ」


 ロイドはニヤリと笑いながら仲間達と共に会場を出て行った。







 

 ――調査対象であるロイド・マクスタードという男は極めて怪しい。実行犯でない事は明らかである。それでも何らかの関わりがあることは確かだ。被害者と特別な関係にあったというのにあそこまで飄々とした態度でいられるのは何故か?疑問がつきない。ただ、これから先もこの男の周りにいる女たちは謎の死を遂げていく予感がする。その予感は時が経つほどに実感へと変わっていくだろう。その時こそ真実が明らかになるはずだ。この一連の事件に特別捜査班が設けられた。



 東洋には「傾国の美女」という言葉がある。その男版が、正にロイド・マクスタードだった。

 大変美しい容姿を持ち、女性からの人気が高い。性格も明るく人当たりが良いため交友関係も広く、彼の周りは常に華やかな雰囲気に包まれていた。

 しかし、彼に近づく異性の殆どは破滅している。

 ある女は事故死し、麻薬中毒で死亡したケース。また、別の女性は失踪後一週間後に遺体で発見された。他殺、自殺。そのどれもが不可解な死に方であった。死なないまでも社会的に葬られた場合もある。


 だから、という訳ではないが。

 正義の味方(警察関係者)の彼らは気付かなかった。

 「傾国」と評する者達すら狂わせる存在がこの世にいることを。

 寧ろ、そちらの方が遥かに厄介だという事を知らない。そしてそれが誰なのかを彼らは知る由もなかった。

 

 そして今日もまた一人、「傾国の美男」に魅入られた哀れな犠牲者が出てしまった。




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