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4.行き先はホテル


 着いた先はホテル。

 それも実家が経営するホテルだった。



「姉さん……」


「なに?」


「何でここ?」


「何で、ですって~~!?」


 突然、姉が般若のような顔になって怒鳴り出した。

 こっわ!!!

 

「あんた、いい加減にしなさいよ!いい歳して自分の身の回りの事すらまともに出来ないなんてありえないわ!」


「確かに……ぐうの音も出ない正論だな」


 エリックがうんうんと姉に同意して首を縦に振っているのも気に入らないんだけど。


「だから今日からここに住みなさい!」

 

「……え?? 今なんて??」

 

「ここはウチが経営しているから安心でしょ!それに、ホテル内にレストランもあるし買い物にも困らない。ホテル内を歩きたくないならルームサービス頼めばいいわ。従業員がいるから部屋の清掃はしっかりしてくれる。どう?好条件でしょう」


 得意げに語る姉に対して、俺はポカンと開いた口を閉じる事ができなかった。まさかの展開すぎる。俺をホテルに住まわせるなんて!!

 いや、別にホテル住まいになるのは構わない。ただしそれは短い期間ならば、の話だ。姉さんの言葉から察するにどう考えても長期間住まないといけないニュアンスが感じられる。なし崩し的にホテル暮らしを余儀なくされる気がする。

 

「じょ、冗談じゃない!!」


「こっちだって冗談じゃないわ!それとも何?あんた実家に帰ってくる?それなら別にそっちでも良いけど?」

 

「うぐっ」


 言葉に詰まる。

 実家暮らしの窮屈さは姉さんだってよく知っている筈だろ。だから姉さんも一人暮らしを満喫してるんだろ?

 あの執事のことだ。「門限は十時まででございます」と真顔で言うだろうし。「お帰りの時刻を事前にお知らせください」とか言ってスケジュール管理するに決まっている。


「あんたが何を考えているのか理解できるわ。だから実家じゃなくホテルの方にきたのよ。感謝なさい。これが兄さんなら問答無用で実家行きよ」


「うっ!」


 こう垂れる俺を無視する形で姉は畳み掛けるように言う。

 

「私も仕事があるからそう毎日来れない。大体、あんたの生活能力は壊滅的だわ。部屋は一瞬で汚部屋にするし。料理はできない、掃除は論外。掃除洗濯家事が全部駄目。家政婦を派遣するにしてもあんたは嫌がるでしょうからね。それならいっその事、ホテル住まいが一番楽よ。なにしろ、嫌でも人間の暮らしができるんだから」


 姉のマシンガントークに反論する気力がどんどん削がれていく。

 

「ホテルなら24時間体制のコンシェルジュが居るし。何かあれば直ぐに対応できるわ。実家と違って使用人が居ない分快適だと思うけど?」


 く、悔しいが反論が思い浮かばない。

 俺の反論が無いと分かると姉は勝ち誇った顔を向けてきた。そんな俺達姉弟にエリックが苦笑いを浮かべている。こいつ、助け船を出してくれない気だな。本当に腹立たしい。こんな時は俺に味方をするべきだろう。

 

「言っておくけど反対意見は聞かないわ。これは決定事項なの。分かったわね」


「……」


「返事は?」

 

「……はい」


 こうして強制的に実家経営のホテルに移り住む事になった。



 





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