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「あなた、私の胸に触っていったい何をしたの?」

「ヒッ!」

「お嬢様、どうされました?」


「だっ……大丈夫よ。それよりも、その賊を早く捕まえてきな……さい」

「大丈夫ですか? 何か様子が少し……」


「あれ? 呼吸が楽になった……」

「えぇっ? 今すぐ医師を呼んできます」


「ちょっと待って! 慌てると、また悪くなるかもしれないわ。走らずにゆっくり行ってきて。いい、命令よ」

「わっわかりました。早歩きくらいは……?」


「サファリ? お願いたまには言うことを聞いて」

「はいっ」


 彼女が部屋からでていくと、廊下から走る音が聞こえてきた。

 彼女は言うことを聞かなかったようだ。


 僕にかけられていた毛布がゆっくりとめくられる。


「あなた、私の胸に触っていったい何をしたの?」

「ん? 呼吸器系のところに水が溜まっていたから、その水を抜いたんだよ。多分……肺のところの魔力の循環が悪くなっているから、そこをどうにかすればいいと思うんだけど、完全には無理かな。でも、日常生活送れるくらいにはなると思うよ」


「あなたは何? 賊じゃなくて神様なの?」

「ん? 僕はただの近所の子供だよ。ねぇこれって直したらお礼ってでるの?」


「もちろんでるわよ」

「僕の家の相続税くらいでるかな?」


「相続税どころか追加で家が建つわよ……ただ、どうしたらいいかしら。ここに今あなたがいるのは不自然なのはわかる?」


「ん?」


「大丈夫。あなたは命の恩人だから考えるわ。自然にあなたを紹介する必要がありそうね。今は時間がないからまずは何か連絡をとる方法考えないと……」


「ねぇ、シャリーって文字の読み書きできる?」

「もちろんよ。ベットの上ではそれくらいしかできないもの……」


「じゃあこれを使えばいいよ」

僕は、懐にしまってあった2冊の本を取り出す。


「これは双子の魔導書って言って、このペンで書くとこっちに書いた内容が、もう一冊にも転写されるんだ。でも、普通のインクで書くと写らないから注意してね」

「あなた本当に何者⁉ まぁいいわ。今は時間がないから、あとで必ず連絡するわ。私が何とかするから、そしたら私の言う通りに動くのよ」


「うん」

「素直でよろしい。今日はこのまま帰って欲しいんだけど、帰れる?」

「もちろんだよ」


 僕はそのままマントを翻すと、透明になり部屋からでていく。


「はぁ……あの子いったいなんなの」


 そう声が聞こえたが、なんなのと言われても困る。

 そこから僕と彼女の関係が始まった。


 双子の魔導書は僕と彼女だけの連絡手段となった。今まで同年代の子と話をしたことがなかった僕は、自分とは正反対の明るい彼女に惹かれていくことになる。


 だけど、惹かれると同時に彼女とは公爵家と平民という大きな身分の差を思い知ることになる。


 しばらく彼女の病気が軽くなったことは二人だけの秘密になり、それを公にしたのは初めて出会ってから1週間が立ってからだった。

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