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いつかシェリーの病気も……

「あげてないよ。貸しただけ! それにほら見て。僕よりも楽に使いこなしてる」

 元々エルフは弓矢に通じている種族なだけはあり、僕よりもだせる矢の量が多い。それでも数を減らさないライグーンの群れに霹靂としてきそうだ。


「シェリーなにかいい案ないの?」

「多分、もうすぐのはずなんだけど。とにかく耐え忍ぶしかないわ」


 このままではじり貧だ。襲いかかってくる魔物の数に対してこちらを守っている人間の数が少なすぎる。しかも、襲われているのはここだけじゃない。

 街の人も助けにいかなければいけない。


「氷雪の刃」

 僕たちがカバーできない部分を急に氷の刃が走り、襲われている人たちを次々に助け出した。


「あなたたち、あれだけカッコよく出て行って何をしているのよ」

「カロさん!」


「仕方がないから私も手伝うわよ」

「カロさんがいてくれるなら合体魔法が使えるわね。カロさん思いっきり鋭くて細かい氷の刃を作って」


「えっ、わかったわ」

「私たちの合体魔法いくわよ!」


 カロリーナの氷魔法とシェリーの風の精霊の力があわさっていく。高速で動く氷の刃が上空で回転しライグーンを切り裂きながら拡大していく。


「さすがシェリーだな」

 高速の風と氷の刃はライグーンたちを切り裂きながら街の上空を進んでいき、どんどん拡大していくと生き残ったライグーンも、どこかへと逃げていった。


「やったわね」

「さすがシェリーさんだわさ」

 まだその設定やるのか。


「なんとかこれでやっと一件落着だね」

「いや、本当の見どころは多分これからだよ」

ライグーンたちが飛んできた方角から身の毛もよだつ魔物の声が響き渡ってきた。


『グガオォーーーーー』

「生命の天空龍、キンドラよ。世界で一番魔力があると言われているドラゴン」


「あれは……勝てないな」

 その大きさは街一つを覆い隠すほどの大きさで、ライグーンなど相手にもならないほどの威圧感を感じる。


「大丈夫よ。あのドラゴンは人を食べないし、大好物のライグーンを追い回しているドラゴンだから。ライグーンのお肉は頬が落ちるくらい美味しいからね」


 あの大きさでは人が攻撃して勝てるレベルではない。

 キンドラの鳴き声で残っていたライグーンたちも一気に逃げ出した。


「キンドラは人間にとっては幸運のドラゴンって呼ばれているのよ」

 上空を過ぎていくキンドラが羽ばたくごとに、キラキラとした光が空中に舞い、全員の怪我を治していく。


「不老不死のドラゴンとも呼ばれていて、あのドラゴンが飛んだ後には傷ついた者は回復していくの」

「世界は広いな」


「えぇ、本当に」

「シェリー胸の方はどう?」

「ダレル、お姉ちゃんと違って絶壁だけど許してね」


「そうじゃない。呼吸の方だよ」

「あまり変わらないかな。特別良くなった感じはないわね」

「キンドラの魔法でも無理か」


「いいわよ。私はダレルがいつか治してくれるの期待しているから」

「そのためには光の精霊や魔道具色々買いそろえないとね」


「ダレル、楽しみにしてる」

「頑張るよ」


 僕たちはライグーンに襲われ怪我を治す不思議なドラゴンが飛んでいくのをずっと眺めていた。


「さて、そろそろ帰らないと。あれ? あそこにいるのって公爵様じゃ?」

「本当ね。戦闘では全然見なかったけど。なんだろう。すごくげっそりしているわ」


 シェリーが公爵に声をかける。

 どこかで激しく戦っていたのか、いつもきちんと整えられていた髪の毛は乱れ、さらに老けた感じがする。


「お父様、大丈夫ですか?」

「シェリー、もうダメだ。私は終わりだ。ヘラクトスの勝利に公爵家の年間運用資金を全額突っ込んでしまったんだ。あれがなくなったらもう終わりなのに。母さんに間違いなく保険をかけられて殺される。今まで厳しく育てて悪かったな」


「それはなんの冗談ですか?」

「冗談じゃないんだ。本当なんだ。運営費から少しずつ賭け事に使っていたのが、あっという間に膨れ上がって、それで今日勝負にでたんだ。それがあのライグーンのせいで、いや違うな俺のせいだ。賭け事の負けを賭け事で返そうとしたのがいけなかったんだ」

 ソランが公爵に何か渡そうとするが、シェリーはそれを止め、自分の懐から1枚の紙をだす。


「お父様、これはソランが買ってくれたものですが、特別にあげますわ」

「シェリー様、私の分も使ってください」

「仕方がないな。シェリーの家に潰れられるのは困るからな。僕のも使ってくれていいよ」

「これは……」


 それは闘技場の引き分けに賭けた券だった。3枚あれば公爵の負けを取り戻すどころか、利益がでるくらいある。

「なんてこった。ありがとう。なんとお礼を言っていいのやら。これでもう一度勝負をして全額返金するからな」


 公爵は表面上できる男に見えたが、思った以上にクズだった。

 冗談だとしてもこの状況でこれを言えるのは、本当にいつか博打で身を滅ぼさないか心配になってくる。


「お父様!」

「もちろん冗談だよ。嫌だなー。でもこれは母さんには内緒にしておいてくれ」


「これはお父様の行動次第かしら?」

「ちょっと! それはないって」


 僕たちの思い出の券は公爵家の資産へと換金されて残らなかったが、僕たちの心の中にはとても楽しかった日として思い出となって残った。


 残念ながらキンドラの回復魔法でもシェリーの病気は治らなかったけど、いつかシェリーの病気も治してあげるんだ。


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