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拒否権はないらしい



 しばらく二人の言い合いがあったが、話に折り合いがついたのか義さんがこちらを向く。


「まああれだ誠君、娘が決めたことだからとやかくは言わないがくれぐれも娘に何かしようなんて考えるんじゃないぞ?」

「勿論ですよ……ところで結局俺は何をすればいいのですか?」

「ああ、そこからだったな少し話が脱線しすぎたよ」


 少しというかかなり脱線していたと思うがまあそこはおいておこう。


「そうだな、君には詩織の世話係をしてもらう。と言っても分からないと思うから、細かく説明しようか。

まず、朝は詩織を起こして学校に行く準備を手伝って朝ご飯を用意してから学校まで一緒に登校してもらう。そのあと学校では多分詩織は大人しく一人でいると思うから、一緒にいて変な虫が寄り付かないか見ておいてくれ、まあ学校ではそこまで何かしてもらわなくていいが、詩織が何か言ったらそれを叶えてやってくれ。下校時は一緒に帰ってもらう。帰ってからも朝と同じように夕食を作って明日また学校に行けるように準備を手伝う。大まかな流れはこんな感じかな。 ここまでで質問はあるかい?」



 ……えっと質問しかないんですが???


「えっと、そもそも学校に一緒に行くって言ってましたけど、学校は一緒なのですか?」

「ああ、さっき調べたけどちょうど一緒だったから、同じクラスになるように調整してもらう予定だよ」


 クラスを調整してもらうなんてできるのか……


「後は、そうですね……そこまでしないといけないんですか?」

「ああそうだ、詩織は言い方は少し悪いが生活力が皆無なんだ。だから一人暮らしをしたいと言った時は猛反対したんだが押し切られてな。条件としてお世話係を一人はつけるようにしたんだが、これまで誰一人として一週間も続かなかった。だから、君にもあまり期待はできないんだが、初めて詩織が連れてきたから今までよりは気になっている。そのせいで少しきつく当たったのは本当に申し訳ないと思っているよ。もし無理だったとしても罰金とかはないからそこは安心してくれ」

「なるほど。それで最初に一条さんがわたしの下で働かないかと言っていたんですね」

「そういうことだ、給料もちゃんと出すから頑張ってくれよ?」

「拒否権……はないんですよね?」


 そう言って横を向くと、一条さんはフルフルと首を横に振った。

 どうやら拒否権はなかったようだ。


「分かりました。やれるだけやってみようと思います。」


 何も分かってないし、正直分かりたくもないが拒否権がないなら頑張るしかないんだろう。

 この状況で選択肢は、『はい』か『YES』しか用意されてないようだし……


 さようなら、俺ののんびり一人暮らし生活……


「えーっと、じゃあよろしくね一条さん」

「詩織」

「え?」

「し・お・り」


 あの、お父さんどうすればいいんでしょう……と義さんの方を見ると、諦めろという目を返してきた。

 ……まじかよ。


「……詩織、さん」

「さんは無しよ」

「…………詩織……」

「ん、それでいいのよ」


 ちょっと俺の雇い主わがままじゃないですかね? 


「じゃあ話も終わったことだし、豊、二人を送ってきてくれるかい? 僕はそろそろ仕事に戻らないといけないから。 誠君、後はよろしくね」

「分かりました。ではお嬢様と上崎様行きましょうか」


 そう言うと義さんはすぐにこの部屋を出ていった。やはり忙しいのだろう、そんな中娘のためにわざわざ時間を割いてきたのだから相当溺愛してるんだなということがよく伝わった。


「誠、早く行こ?」

「あ、はい」

「敬語もダメ、同い年でしょ?」

「わ、分かったよ」


 義さんが一方的にやられていた理由が何となく分かった気がする……

 

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