お嬢様とお父さん
「お嬢様、上崎様どうぞ」
「豊、ありがとう」
「ありがとうございます……に、日本にこんな場所があるんですね」
目の前には大きなお屋敷があり、そのお屋敷に圧倒されてしまう。
あれ? 俺このお嬢様って呼ばれている子に無礼を働いてないよね? だ、大丈夫かな?
「誠、ぼーっとしてないで行こ?」
「は、はい」
びっくりしているのも束の間、俺はお嬢様にお屋敷の中に連れていかれる。
俺はいったいどうなるんだろうか?
「こちらで少しお待ちしてもらってもよろしいですか?」
「わかりました」
お嬢様に連れられて行くのかと思いきや、途中で別れることになり、迷路のようなお屋敷を豊さん(最初にいた執事の人)に案内されて、客室のようなところに着いた。
勝手に出歩いても迷子になるだけだし、そんなことをしたら迷惑が掛かってしまうので、俺は探検したいという好奇心を抑えつつ言われた通り、座って待つことにした。
五分くらいすると、豊さんが迎えに来てくれたのでついていく。
「義様、お連れしました」
「入りなさい」
中に入ると、そこには少し顔をしかめた男の人がいた。
「まあ座りたまえ」
「はい」
俺がその人の反対側に座ると、横にお嬢様も座ってきた。
その瞬間目の前の男の人からの威圧感が増す。
「早速だが本題に入ろうか。詩織、その横に座っている男なら世話係でもいいというのだな?」
「ええ、そうよ」
「……はぁ、そうか。…………非常に、ほんっとうに嫌なのだが、詩織がそういうのなら仕方ない。お前に詩織の世話係を任せる事にする」
……? ん? んんん??? どういうことですか?
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、世話係ってなんですか?」
「なんだ? 詩織の世話係が嫌だというのかい?」
「そうではなくてですね、まず自分がなぜここに連れてこられたのか、横に座っている女の子が誰なのか、そして失礼ですがあなたが誰なのかすらわからないのですが……」
「それは本気でそう言っているのか?」
「え、ええ。何せ引っ越してきたばっかりでお隣さんに挨拶をしに行ったらこうなりましたので……」
「急に連れて来たから何事かと思ったが、まさか何も説明してないとは……」
はぁ、とため息をつきその男の人が簡単に説明をしてくれる。
いわく、この家は一条家と言って日本でもトップクラスの財閥で、この男の人はそのトップ。
そしてこの横に座っている子はその娘ということだそうだ。
それを聞き終えたとき、俺は迷うことなく土下座していた。
いやだってまさかお隣さんがとんでもない財閥のお嬢様だなんて思うわけないじゃん!?!?
思い返しても無礼なことをしてはいなかったとは思うけど、名前を知らないだとか、口調だとか、どう考えても失礼なことをしているので土下座して正解だろう。最初怒ってるっぽかったし。
「まあ顔を上げたまえ、僕も最初に少し圧をかけすぎちゃったのは悪かったね、まあでも娘が急に男を連れてきたんだから警戒しないわけにはいかないだろう? それも今日会ったばっかりなんだし。 それは今は置いておいて君も急な出来事だったんだし多少の無礼は仕方ないよ。
まあでも、娘に何かしようと思ったら……分かってるよね?」
その瞬間威圧感がとんでもなく強まり、俺は額から冷や汗を流す。
「も、もちろん分かっています」
「ならいいんだ」
威圧感が薄くなり、俺はホッと息をなでおろす。
「パパ、誠をいじめちゃダメ」
「う、だって詩織が心配で」
「私が大丈夫だって思ったんだから大丈夫」
「そうはいってもだな、万が一ってことがあるだろう? 男は狼なんだ」
「ならパパもそうなんだ?」
「うぅ……」
あ、パパより娘の方が強いのね……
まあ、これだけ溺愛してたらそりゃあ娘には逆らえないのだろう。