どうして?
「そういえば学校ではあんまり話しかけない方がいいのか?」
家に帰ってお昼ご飯を食べた後、学校で気になっていたことを詩織に聞いてみる。
「どうして?」
「学校では詩織は丁寧な話し方をしていただろ? だから俺とは学校で関わらない方がいいんじゃないかって思ったんだ」
忘れてはいけないのが、詩織は立派なお嬢様であり、俺はただの一般人。世間体的にも俺とばかり話しているのもどうかと思うので、詩織に聞いてみるのだが、詩織はきょとんとしていた。
「誠は学校で私としゃべりたくないの?」
「俺だってできれば話していたいけど、それだとあんまりほかの奴らがいい顔しないだろ?」
「別にほかの人なんて放っておけばいいじゃない」
「それでいいのか? そういうのを気にするために丁寧な言葉を使ってたんじゃないのか」
「ああ、それはパパが人前で話すときは丁寧な話し方をするようにって言ってたからよ」
なんとも拍子抜けな話である。
「詩織がそれでいいって言うならいいんだけど、どちらにせよ明日から詩織に絡もうとするやつらは結構いそうだけどな」
「そうなの?」
「そうなの。詩織はもうちょっと自分が特別だって事を認識した方がいいぞ?」
日本でもトップクラスの財閥のお嬢様で、それに加えて銀髪美少女。
逆に絡まれない方がおかしいくらいの条件が揃っている。中には下心や悪意を持って近づいて来る人だっているかもしれないのだから、少しは危機感を持って欲しい。
「でも誠がいるから大丈夫よ」
「俺はそんなに万能じゃない」
「だって今まで誠は私が言ったこと全部やってくれたでしょ?」
「だからって流石に詩織に近づこうとする人の全てを監視なんてできないだろ」
「私だって断ることはできるし悪いことを考えている人くらい分かるわ。中学生の頃だってなんとかなってるんだもの、それに加えて誠もいれば安心よ」
なぜか詩織の中での俺の評価が途轍もなく大きくなっているのだが、俺はそんなたいそうな人間ではない。
詩織が言ったことすべてをやったと言っても、そもそも詩織はそんな無茶なことは全く言わないしな。強いて言うなら今朝の猫を助けろってことくらいか。
「まあ詩織が大丈夫だって言うなら別にいいけど、俺のことも考えてくれよ、間違いなく学校で俺の居場所がなくなるじゃないか」
「それは、どんまい? ってやつよ」
「どんまいの一言で俺の高校生活を片付けないで欲しいんだけど……友達くらい作りたかったよ」
「今日一人誠と話してる人がいたじゃない」
「あー優斗な、たいしかにあいつなら多分俺に対して態度を変えそうにはないと思うな」
「でしょ? 私も見てて思ったもの。それにもしいなくなっても私がいるわ」
「……」
「誠? どうしたの?」
「……軽々しくそんなこと言うんじゃない」
美少女にそんなことを言われたら、恋愛感情とかがなくても、なんというか危ない。
ちなみに詩織は本当にどうしてか分からないというような表情をしている。天然たらしかよ……
「じゃあ結局、俺は学校で詩織と話しても大丈夫ってことでいいんだな」
「そう言ってるじゃない」
後々俺がいじめられないといいんだけどな……
まあ、いじめられたらまたその時にでも考えればいいだろう。というのは楽観視しすぎだとも思ったが……




