まだ何も終わってない
スクリーンは僕の高校生活を映し出した。
その時の僕は幼いころから芽生えた劣等感の塊で、悔しいって気持ちと裏腹に「もともと僕に出来る事じゃないよな」と諦めて割り切るようになっていた。
何をしても誰にも追い付けない。
みんな才能がある選ばれた人ばかりだと思ってた。
そんな僕にも高校二年生の時に彼女ができたが半年ほどで彼女から別れを告げられた。
彼女はいつも正しかった。
その正しさを見る度、虚勢を張り続ける自分が嫌にもなった。
ありのままの自分をさらけ出せず、理想だけを振りかざして、何もできない。
僕はちゃんと彼女と向き合う事が出来なかった。
彼女に悪いとこなんて1つもない。
別れるという選択をさせてしまった僕が悪いんだと思いLINEを送った。
「時間を無駄にさせてしまった。本当にごめんなさい。」
「優介さんは何も悪くないです。時間を無駄にしたかどうかは私が決めます。
私は無駄にしたとは思ってません。」
思い上がっていた。
誰も人の選んだ事に対して無駄なんて言えない。
僕の中であの子との時間は無駄なんかじゃなかったのに。
真愛さんの時も同じことを繰り返していた。
どこまで行っても、僕は僕のままだった。
スクリーンには3月8日から毎晩、悲しくて苦しくてたまらない惨めな僕が映し出す。
スクリーンは僕を映し出すのを止めて、この白い世界は消えた。
白い世界の外では真愛さんが待っていた。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。僕はこの列車の中の事も無駄にしたくないです。」
真愛さんは「ぜんぜん大丈夫。戻ろっか!」と僕の手を引っ張って列車の中に戻ってきた。
お互いに向き合って席に座る。
僕はずっと下を向いたまま申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「最後の扉もくぐって、この追憶の列車はこれでお終い。
たくさん思い出して辛かったでしょ、よく頑張ったね。」
優しく頭を撫でられる。
最後の扉は終わったけど、僕は変われてない。
向き合えていない。
まだ何も終わっちゃいない。
「まだ、まだ終わってないです。言いましたよね、この列車は自分と向き合う旅だって。
僕はまだ自分と向き合えてません。やっぱり真愛さんのケアが僕には必要です。
お願いします。」
僕は真愛さんに深々と頭を下げた。