表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の列車  作者: いまの
9/11

まだ何も終わってない

スクリーンは僕の高校生活を映し出した。

その時の僕は幼いころから芽生えた劣等感の塊で、悔しいって気持ちと裏腹に「もともと僕に出来る事じゃないよな」と諦めて割り切るようになっていた。

何をしても誰にも追い付けない。

みんな才能がある選ばれた人ばかりだと思ってた。

そんな僕にも高校二年生の時に彼女ができたが半年ほどで彼女から別れを告げられた。

彼女はいつも正しかった。

その正しさを見る度、虚勢を張り続ける自分が嫌にもなった。

ありのままの自分をさらけ出せず、理想だけを振りかざして、何もできない。

僕はちゃんと彼女と向き合う事が出来なかった。

彼女に悪いとこなんて1つもない。

別れるという選択をさせてしまった僕が悪いんだと思いLINEを送った。


「時間を無駄にさせてしまった。本当にごめんなさい。」

「優介さんは何も悪くないです。時間を無駄にしたかどうかは私が決めます。

私は無駄にしたとは思ってません。」


思い上がっていた。

誰も人の選んだ事に対して無駄なんて言えない。

僕の中であの子との時間は無駄なんかじゃなかったのに。

真愛さんの時も同じことを繰り返していた。

どこまで行っても、僕は僕のままだった。

スクリーンには3月8日から毎晩、悲しくて苦しくてたまらない惨めな僕が映し出す。

スクリーンは僕を映し出すのを止めて、この白い世界は消えた。

白い世界の外では真愛さんが待っていた。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。僕はこの列車の中の事も無駄にしたくないです。」


真愛さんは「ぜんぜん大丈夫。戻ろっか!」と僕の手を引っ張って列車の中に戻ってきた。

お互いに向き合って席に座る。

僕はずっと下を向いたまま申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「最後の扉もくぐって、この追憶の列車はこれでお終い。

たくさん思い出して辛かったでしょ、よく頑張ったね。」


優しく頭を撫でられる。

最後の扉は終わったけど、僕は変われてない。

向き合えていない。

まだ何も終わっちゃいない。


「まだ、まだ終わってないです。言いましたよね、この列車は自分と向き合う旅だって。

僕はまだ自分と向き合えてません。やっぱり真愛さんのケアが僕には必要です。

お願いします。」


僕は真愛さんに深々と頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ