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巷で人気のタピオカに便乗して人気者になりたくて書きました。
それは正式名称を
『Trace-Asteroidonic-Panicable-Insanity-Orgynal-Kinky-Anabolicks』と名付けられた。
一度でも服用してしてしまったが最後。もうそれなしでは生きていられない体になってしまう。そのため後の人生を売人の言うがままの値段で買い続けるために過ごすことになる。最悪の常用性を持った薬物のことだ。
通称……タピオカ……と呼ばれていた。
東南アジア、とある悪徳の街ミソッパではこの弾力を持つ新種の秘薬『タピオカ』が社会問題になっていた。
しかも、それは表の世界に限った話ではなかった……
「まだ分からんのか!」
「でもボス、タピオカの流通具合はもうめちゃくちゃですよ? 今さら手に負えませんぜ?」
「うるさい! うちはもうジリ貧なんじゃあ! あいつらを潰さんことにはどうにもならんわ!」
怒声を飛ばすのはミソッパの中でも長い歴史を持つ老舗マフィア『ガイヤーン』のボスだ。新しい薬物『タピオカ』に押されて昔から取り扱っていた『カフェイヌ』や『プロテイヌ』などの伝統ある薬物がちっとも売れなくなっていた。
よってタピオカを捌いている組織を特定して潰そうとしているのだが……
「地元警察にはきっちり密告したんだろうな!?」
「やってますけど、あいつら動きませんよ?
タピオカ利権でズブズブですから。」
老舗マフィア『ガイヤーン』にはもはや警察を買収をする資金すらないのだ。それどころか構成員もボスと手下の二人だけだったりする。もうジリ貧どころではない。
「そんなら倉庫じゃあ! タピオカが貯蔵されちょる倉庫を見つけてこいや! そしたらワシが潰してきちゃらぁ!」
「だから無理ですって! ミソッパにどんだけ倉庫があると思ってんですか! 俺一人でどうしろってんですか!」
もう打つ手はない。貧乏老舗マフィア『ガイヤーン』に明日はない、そう思われていた時……
「ねぇアンタぁ? アタシちょっと旅行してくるからぁー」
「あぁん!? こんな時にどこ行くんじゃあ!」
「前から言ってたじゃぁん。ヤポンだよぉ。黄金の国ヤポンよぉ。あそこは絶好のインスタスポットだからさぁー」
「インスタっちゃあ何かあ!?」
「前から言ってたじゃぁん!。インスタントミリグラム。SNS(Special Nobility Society)ってやつ。アタシがイケてる写真を載っけるとみんなが『ええほ』してくれるんよぉー」
ボスの情婦ジョアンは組織の窮状など全く気にしていないらしい。
「姐さん! その話詳しく!」
「あぁん? ヤポンに行くってだけさぁ。アンタも来るかぁい?」
「違います! インスタのことです! 写真を載せるってことはたくさんの人間が見るってことですよね!?」
「そうよぉー。アタシのフォロワーは世界に6万人ぐらいおるからねぇ。ほらこれ見てみぃねー」
@bossnojofu
フォロワー:59,102-
「ボス! いけます! インスタとヤポン、いい手がありますぜ!」
手下は何か閃いたようだ。
「とりあえず姐さん! ちょっくら撮影しますよ! 来てください! ボスも!」
「ちょ、ちょっとぉー」
「お、おお?」
ミソッパの街を歩き回るボスと手下と情婦。
出会うに任せて片っ端からからタピ中(タピオカ中毒者)達からタピオカを奪うボスと手下。かつてはこうやってタピオカを市場から駆逐しようと考えたものだが、とても手が回りきらず結局どうにもならなかったのだ。
「よし、それなりに集まりましたね。じゃあ帰りましょう。勝負はこれからですよ!」
「あーもーアタシ来なくてよかったんじゃん!」
「この作戦じゃあダメじゃったろぉが! 今さらどおするっつうんじゃあ!?」
「このタピオカをですね。こうやってミソッパ名物ロイヤルミルクティーに入れて……光はこのぐらいか、ストローをさして……
よし、姐さん! これを持って笑顔! 撮りますよ!」
「こ、こうかい!?」
「絶対飲んだらダメですよ! でも笑顔!」
「あ、ああー」
「いいよいいよー、姐さんいいよぉー! そこでボスを見つめてぇ! そう! 目線こっち!」
手下による撮影は続いた。
「よし! これでいける! 姐さん、この写真をインスタに上げてください! ただし、ヤポンに着いてからですよ! 文章はこれで!」
「あ、あー分かったよー」
「一体何だってんだ?」
「まあまあボス。姐さんの帰りを待ちましょうよ。面白いことになりますぜ?」