あるカウンターにて
夏休みが終わり、
子供たちが学校生活に戻っていく。
やっと、母の夏休みの到来だ。
夏休みにできなかったことを、
日常の家事仕事の合間に少しずつ行っていく。
それはびっくりするぐらい些細なこともあったり、
年に一度のイベントだったり。
とりあえず、今日はがん検診へ行った。
勤めていない限り、意識しないとできないこと。
残暑の中、検診センターへ向かえば、
ふらっと思い付いて行ったせいか、
時間が昼間でピークが過ぎていたせいか、
想像以上に人がいなくて
家を出てから一時間足らずで終わってしまった。
せっかく家を出たのだから……
これは、普段の家事仕事の外出ではなく
自分だけのために行ったこと。
せっかく外に出たのだから……
時間はまだまだ余裕があって、
そのまま直帰はつまらない。
ひとりでできること、何があるかな?
そうだ、カフェにいこう。
自分都合だけで行き先を決め、
自分都合だけでメニューを決め、
自分都合だけで席を決める。
ささやかだけど、自分都合、気分がいい。
カフェも平日で空いていて、
長いカウンター席にひとりで座る。
この長いテーブルを独り占め、気分がいい。
カウンター席正面にはやや高めのボードが立ち、
反対側でキッチンの音が飛び越えてやってくる。
オーダーをこなすスタッフの様子が感じられる。
誰かが、誰かのために、コーヒーを入れている。
それは仕事だからといってしまえばそれで終わり。
でもね、その極めて日常的な騒音に、
変な感慨を持った人物がいるんだよ。
相手は単なる仕事かもしれないが、
私のオーダーのためにコーヒーを入れてくれた人の存在に、
勝手に癒される。
ああ、アイスコーヒーが終わっちゃった。
でも、おかわりして
もう少し、ここにいよう。
時間だって、まだ大丈夫だし、
やっと始まった自分夏休みを楽しんでもいいはずだから。