寝れない審神者が薬研に添い寝してもらう話
「どうした、大将?」
「あ・・・薬研。うん、ちょっと・・・寝付けなくて」
寝ようと思って布団にもぐり目をつぶっても、ウトウトするだけで完全に眠りにはつけなかった私は、月を眺めようと部屋の障子を開け、その先にある縁側に腰掛けていた。そこに、寝間着に身を包んだ薬研が現れ、私の隣に腰掛けてきた。
「それは災難だなぁ」
「んー、でも、薬研に会えたから・・・いい、かな」
なんて笑って言うと、私のおでこを薬研が小突いてきた。驚いて目をきょとんとさせて彼を見つめると、大きなため息を吐かれた。
「大将? 駄目だぜ? 夜は寝るもんだ」
そう言って、私の部屋を親指で指してきた。それは、早く布団に戻って寝る努力をしろという合図。私は大きく溜め息を吐き肩をすくめてみせた。
「ねえ、私の話聞いてた?」
「ああ、しっかりと聞いていたぜ? 眠れないんだろ?」
スっと差し出された手の意味が分からず、私は薬研と彼の手を交互に見つめ首を傾げた。すると、薬研は何も言わずに私の手を掴み、引き上げるように私を立たせた。
いや、あのね、薬研・・・
なんの表情も浮かべられなかった。私が思う薬研は、私の言う言葉の意味を理解できないはずがない。だからこそ、彼の意図しているところが分からなくて困った。困り果てた。どうすればいい、この場合。
「しょうがないから、今日は俺っちが一緒に寝てやるさ」
「えっ?」
「嫌なのか?」
「そ、そういうわけじゃ・・・ないよ?」
まさかそんな案を提示されるとは微塵にも思っていなかったものだから、間の抜けた反応しかできなかった。そんな私の様子に薬研はクスッと笑い。
「ほら、行くぜ?」
「う、うん・・・」
一緒に寝てくれるのは嬉しい。だけどなんだか、気恥しい。短刀である他の子達と一緒に寝たことは何度かある。薬研もその子達と同じ短刀だ。短刀だけど、彼は他の短刀と違って、なんというか、色香がある。つまり、エロいのだ。
いいのか?と心の中で自問自答しながら、私はなすがままに薬研に自室に連れ帰られた。
「ほら、たーいしょっ?」
悪戯っ子の笑みを浮かべ、先に布団の中に身を滑り込ませた薬研が待っている。その構図が余計にエロくて、鼻血が出そうになるのを我慢した。我慢だ我慢。
「わ、分かったから・・・」
おずおずと、ぎこちない動きで薬研の隣に身を滑り込ませた。抱き寄せるように私の体を引き寄せる薬研に、私は体が熱くなる感覚を覚えながら必死にその感覚を頭の彼方に追いやり、眠りについた。
誰かとともに寝るというのは、暖かくて、一人じゃないという安心感に心が安らいで、凄く幸せな気持ちに満たされる。だからなのか、その日、なかなか寝付けなかったはずの私は、薬研の腕の中で静かに寝息を立て始めた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございましたヾ(*‘ω‘ )ノ