2話
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さぁて、今日は、まったくもって待ちに待ってない、お茶会の日だよ!!!
・・・・無理矢理気分を盛り上げようかと思ったけど、思った以上に盛り上がらなかったよ。
馬車の中ではサラと二人で楽しく盛り上がったけど。
公爵家の素晴らしく豪華な建物と、なんだか立派な庭園(私に芸術を愛する心はない)を前にして、早くも我が家が恋しくなった。
アア、オウチカエリタイ。
それにしても、今回招待されたご令嬢たちは、なんというか見事にバラバラだな!
王家に忠実なことで知られる公爵家ご令嬢。
中立派の子爵家ご令嬢。
騎士をお父上に持つ男爵家のご令嬢。
そして、私達。
アイリーン様信奉者が誰もいない!!そしてあの従者どのもいない徹底ぶり!!
本気で友達作りに来てるなアイリーン様・・・。
「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。どうぞ、楽しんでくださいね」
そんなアイリーン様の涼やかな美声で、お茶会は始まりました。
「我が家自慢のブレンドですの。お口に合えば良いのですが」
アイリーン様がそう言と、各々紅茶が注がれていく、おお、凄くいい匂いだ!!
早く飲んでみたいが、公爵家ご令嬢が先。我慢我慢。
「まぁ!素晴らしいかおり「やぁ!集まってるね!」・・・え」
だ、だれだ!!??
わらわらと湧き出てきたのは、同年代で今を時めく(笑)殿方たちだった!!またかよアイリーン様!!!
いるわいるわ、神官長子息だの騎士団長甥だの魔術師団長養子だの。
全員方向は違うがイケメン過ぎて目がチカチカするわ!!!!
「僕に内緒で友達を作ろうなんて・・・・友達は僕がいれば十分でしょ?」
そう言ってアイリーン様に絡みつくのは魔術師団長の養子。
・・・・・・・・随分と不健康な関係ですねアイリーン様。
麗しのご子息達(笑)の登場に一瞬沸き立ったご令嬢方も、その一言に若干、いやかなり引いたようだ。残念アイリーン様。
「ち、ちがっ!!いやぁぁあ、もう・・・・・。申し訳ありません、皆様。少々席を外しますわ」
ものすごい勢いで魔術師団長の養子を引き剥がしたアイリーン様は、青い顔に笑みを浮かべて、全員引き連れてどこかへ行ってしまった。
これ、帰っていいんじゃない????
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そう上手くはいきませんでした、世の中厳しいです、兄様。
幻影の兄様は『耐えろ!』と言ってきますが、無視してもいいですか?駄目ですかそうですか。
「・・・戻られませんわね、アイリーン様」
そう呟くのは公爵家ご令嬢、ヴィクトリア様だ。
礼儀作法に厳格な方で、今もアイリーン様が居ないので、出されたものに一切手を付けていない。
の、飲みたい!あの紅茶飲みたい!!お菓子も美味しそうぅぅ!!!
2回目の紅茶の入れ替えで、耐えきれなくなってきた私達、主に私。
公爵家の使用人を勝手に使うわけにもいかないし、誰かアイリーン様呼びに行こうよ。
・・・・あ、この序列だと、私かサラか。
公爵家ご令嬢に行けというわけにもいかず、子爵家男爵家では可哀想だ。
よし!!サラ!!任せたぜ!!!
そんな期待に満ち溢れた私に、サラはニッコリと笑った。
「よろしくね?リーア」
ですよねーーー!!!だと思ってましたぁぁぁぁ!!!!!
『よろしくね』が『私を巻き込んだの貴方なんだからいってらっしゃい』って聞こえた!!サラすごい!
「・・・・・・・・・ワタクシがいってまいりますわ」
そう言って立ち上がるほか、私に道は残されていないのであった。ぐすん。
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全く表情を覗えない公爵家の使用人(美人さん)に案内されながら、たとえアイリーン様の元へ辿り着いたとしても、あれらがまだ居たら、私はどうすればいいんだろうか。
出たとこ勝負かな、もうソレで行こう。
「お嬢様、ルルリーア・タルボット様をご案内致しました」
「っ!!お入りになってっ!!」
若干食い気味にドアを開けるアイリーン様。必死さに涙が出そうで出ない。すまん。
「失礼致します」
あぁ、残念だよアイリーン様。本当に残念だ。
「なに?この子」「今アイリーンと話してるところなんだ。邪魔しないでくれる?」「・・・もしかして僕らの誰かを追ってきたんじゃない?」「うわ、やめてくれよ」
ああうん、なんていうかアレだね!騎士団長の殺気と王弟殿下の得体の知れなさに比べたら、微笑ましいもんだねそんなことないわ。小憎たらしいわ。
部屋に入るなりいきなりなんやかんや言われましたよ、なんだろね。
どうでもいいけど、貴方たちがおそらく庇っているであろうアイリーン様は、顔面蒼白ですよ?あ、あれ気絶してるわ。
立ったまま気絶とかアイリーン様意外と器用だな。
あっこれ帰る絶好の機会じゃないか???
こんな暴言吐かれたら、貴族のご令嬢はきっと儚く泣き崩れてお家に帰るだろう。そうにちがいない。
「あぁ、なんて「何をやっているんだっ!!お前たちはっ!!!!」・・・・げっ」
ノックもなく突然部屋に現れたのは、おうていでんかだぁぁぁぁ!!!
そういや転移魔法の使い手だっけ王弟殿下。淑女の部屋にいきなり来るとか変態か?
それと騎士団長。暇か?暇なのか???
颯爽と現れるやいなや、王弟殿下は素早くアイリーン様から神官長子息と魔術師団長養子を引き離す。
「あぁ!間に合わなくてすまないアイリーン!どうか許してほしい」
あ、甘っ!!目が蕩けそうに甘いっ!!胸焼けがぁぁぁ!!
「叔父上はいい加減年を考えるべきです!!」
「そうだよ殿下!アイリーンは僕のものだっ!」
おおっとぉぉ!??年のこと言われちゃいましたよぉ??これはどう返すのかなわくわく。
「煩い、小僧どもが。アイリーンの邪魔をしているお前たちに言われる筋合いはない。・・・チッ、このクソい忙しい時に」
あっ一喝ですね、凍えるような笑顔ってこういうのなんですねココサムイ。
そういえば貴方も邪魔してるんじゃ、あっいえなんでもないです。
二人の襟首を掴むと放り投げそのまま転移させる王弟殿下。・・・豪快な転移方法デスネ!!
名残惜しそうにアイリーン様(放心中)に目を向けた後、こちらを睨みつけてくるよワタシココニイナイ。
「また君かっ!・・・今は見逃すが後で覚えていなさい」
「えぇぇ・・・」
見逃されたァァァ!!でも喜べないィィ!!
三下のようなセリフを悪の総督のような迫力で言い放った王弟殿下は、そのまま消えていった。本当に忙しいんだな。
あの、騎士団長忘れてますよ。
「ごきげんよう、ルルリーア嬢。貴方は、ぶふっ・・・本当に運のない人だな」
「ごきげんよう、騎士団長閣下。出口はあちらですよ」
氷の騎士(笑)よ、お願いだから溶けないで氷のままでいてくれっ!!!!
貴方の甥っ子、信じられないものを見たかのように目を見開いてるじゃないか!!!あ、こっち見るな!!!
「さて、帰るぞ。その有り余る体力を有効に活用しよう。それではまた、ルルリーア嬢」
その『また』がありませんようにと祈りつつ、ちょっとだけ頭を下げる。
ドアの方へ、甥子殿の頭を鷲掴みにしながら進む騎士団長。あーー痛そーー。
若干浮き気味の甥子殿を見送りつつ、心のなかで静かに祈りを捧げてあげた。私優しい。
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