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1話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 例のお役目(笑)をこなしてから数日間。

 それはもう酷い日々だった。誰か私の安穏とした日常を返してくれ。


 なんと、話したこともない家からの、夜会茶会の招待状たちが届いたのだ。

 しかもかなりの高位の方々だ。


 お陰で父様と母様は手紙が届くたびに、宛名も見ずに私に渡すようになった。

 父様宛が紛れてますよ、親として娘への手紙に目を通さんでいいのか。父よ母よ。


 まぁ、全部断ったんだけどね!!!

 けっ!どうせ全部アイリーン様関係だからね!!!


 この時ばかりは、微妙な立ち位置の我が家に生まれてよかった!!と感謝している。ほんと。


 父様は万年平役人、かつ出世は胃腸の弱さにより、自ら断念しているので、まあほぼ問題なし。

 領地としても沿岸に面した狭い土地の中で地産地消で暮らしてるもんだから、他領から圧力は掛けられづらい。



 兄様は知らんが。



『俺終わった・・・』と抜け殻のようになった兄を、私は、知らない。全くもって、知らない。


 直前の夜会の誘いとかは、問答無用で断れたけどね、まったくなめられすぎだね!!我が家は!!



「いい色でしょ?どう、マーニャ。似合ってる??」



 そう言って、くるりと一回り。うんうん、モスグリーンの柔らかな色合いのスカートが、光に透けてキレイキレイ。

 鏡の前でニヤつきながらマーニャに感想を聞く。褒め言葉しか受け付けないぞ??



「そうですね。お嬢様のその微妙な金の御髪に、とてもよく似合ってますよ」



 一言余計だわ!!マーニャめっ!!

 ・・・・確かに、100人に聞いたら、60人くらいが『・・茶色??』、残りの40人が半笑いで『き、金色かなぁ』というぐらいの微妙さだけどっ!!(領民調べ)


 そこは素直に褒めてほしい。


 だがしかし、今の私はとっても寛大なのだ。だから、『とてもよく似合ってますよ』の部分だけ、聞いたことにしてあげよう。


 そう、なぜなら、陛下から頂いた宝石を売ったお金の一部で、新しいドレスを買ってもらえたのだから!!


 父様母様兄様を相手取って、まずは宝石を売る決意をさせるところから始まり。

 どこかに王家の紋章でもあるんじゃないかと、酷く疑う父様に、知り合いの宝石職人に鑑定してもらい。


 ようやく換金できたのだ、道のりが長かったよ・・・・。


 ドレス一着だけとかちょっとケチだなと思ってたら、残りは私の結婚支度金(相手はまだ居ない)として取っておいてくれると。家族からの愛を感じるよ!!!!

 ・・・・だからまあ、セミオーダーであることには目をつぶろう。



「かわいいかわいい。似合ってるわよ、リーア」



 そう褒めてくれるのは、親友のサラ・ウェールだ。私と違ってキラキラしい金色の真っ直ぐな髪の持ち主だ。羨ましい。

 今日は、明日行く予定(行きたくない)の、アイリーン様主催の茶会に出席するため、衣装合わせと称したお茶会だ。二人だけだけど。



「ありがと、サラ。これにしてよかったわ!!さすがサラ、いい感性してるぅ!!」


「当然ね」



 ちょっと大げさに言ったのに素気無く返される、くすん。



「そういえば、リーアが招待された辺境伯主催の夜会、あれに珍しく王弟殿下が出席なさったそうよ」



 げ、あぶなかっったぁぁぁ!断ってよかった!!

 いつもなら王家主催の夜会しか出席しないのに、どういうことだ嫌がらせか、そうかそうですね。



「いいわね、追いかけられて?大人気ね、リーア。ふふっ、楽しそう」



 そうクスクス笑うサラ。ひ、酷いぞ!!親友のくせに!!



「楽しくない、全然楽しくない。むしろ代わってほしい、お願いしますサラ様」



 そうだ、そうだよ!お人形さんのように綺麗なサラなら、あの忌々しいやつらを引きつけられるんじゃ!!

 その間に逃げればいいのでは!??



「いやよ、他人事だから楽しいんじゃない」



 断られた、普通に断られた。いやいや、麗しき王弟殿下だよ??いいじゃんサラお似合いだよ。

 押し付けたい気持ち満々の私を見透かすように、目を細める。怖いよサラさん。



「その上陛下とお茶友達なんて。大出世ね、リーア」



 誓って言うが、私はあの『国王専属愚痴聞き係』の話等々、サラに一切喋っていない。王族関わりのことだからね。

 なのに知っているというこの矛盾。


 どうやってその情報入手したんだ???あっ、いえ大丈夫です、むしろ知りたくないです。はい。


 明後日の方向を向いて、とりあえず無駄だけど一応黙秘権を行使する。

 私は喋っていないよ!国王陛下!!!


 そんな私を放置して我が家の粗茶を優雅に飲むサラ。私も飲もーっと。

 そしてなんでもないことのように、一言。



「ああ、そっちにもディラヴェル公爵家の暗部が行ったでしょ?うちにも来たわよ」



 ぶっほぉおお!(あ、紅茶吹き出しちゃった)

 ちょ、なに、『知ってるでしょうけど』みたいな感じで言ってくれちゃってるのさァァァ!!



「えぇぇぇぇ!!なにそれ知らないよ!!!え、いつ来たの?」


「あら、そうだったの。昨日よ」



 昨日??昨日昨日・・・なにがあったっけ、唸れ私の頭脳よ!!


 朝起きて、丁度パンが焼き立てで今日はいい日になるなーと思って。

 続きの本を読んで、招待状にお断りの返事を書いて。

 お昼は久々に兄様と庭で食べて、スモークサーモンのサンドイッチ最高に美味しかったです。

 お母様と一緒に刺繍して、使用人雇用の面接して。

 夜はカキの季節だから、フルコースで出てきて最高だなと思って。

 家族で団欒した後、本を最後まで読んで満足して寝ました。



 ・・・・・・・・・??????どこで来たんだ????



「知らないうちに入り込んできたとか?」


「違うわよ、雇用希望の使用人、普段より多かったでしょ?」



 ソレに紛れてたのよ、と冷静なサラ。動揺を隠しきれないワタクシ。


 ・・・確かに、いつもなら、一人二人しか来ないのに、十三人も来て妙だなーとは思ってた。ほ、ほんとに思ってましたよ??

 まさか、『ついに我が家の人望もここまで来たか!』とか、父様共々喜んでなんかいないんですよ??



「もちろん変だなと思ってましたーやーあれかーー」


「棒読みにも程が有るわよ、リーア」



 道理で一人しか採用できなかったわけだよ。ぬか喜びか、父様めっちゃ喜んでたのに。



「いつも思ってたんだけど、どうやって弾いてるの?」


「お、今回もアタリか!んーーーー???・・・・勘???」



 なんとなーーく出来そうな人を弾いてるだけなんだよねーー?

 そうするとあら不思議、裏も表もない純粋な使用人の出来上がり!となるわけなのよ。


 それにしても毎回(さほど回数はない)我が家に入り込む密偵を探り当てるサラは、一体どこから(以下略)



「勘、ねぇ・・・・。ほんと、リーアは面白いわ」



 ぞ、ぞくぞくするぅぅぅ!!怖いからその顔やめてェェェ!サラ様ァァァ!!!

 まるで巨大な肉塊を前にしたドラゴンのような、いや、普通のドラゴンじゃこの迫力は伝えられないな。


 そうまるで、古より伝わる邪悪なダークドラゴンが、金塊を前にしてにやりと笑ったかの如き笑顔だ。



「そうそう、今回は我が家に来た密偵、全て追い払ったわ」


「おや珍しい、どういう風の吹き回しで??」



 いつもなら『変なのに目をつけられるのが嫌だから』とかいって、気づかないふりするのに。



「どうやら、私の親友にちょっかいを出そうとしてる奴らがいるみたいだから、かな」



 おいおい照れるじゃないか、うへへへ。さすが我が親友だよ!!!



「それに最近退屈してたから。色々と面白そうだし」



 ・・・そっちが本音に聞こえるのは私の気のせいだよね?サラさん???


 そしてだから顔ぉぉぉ!!さっきよりも怖くなるのやめてよぉぉぉ!!


 まるで、古より伝わる邪悪なダークドラゴンが、金塊を盗もうとする盗人に相対するときの、獲物を捕捉したような顔だよ!


 あぁ、怖い怖い。騎士団長の殺気よりマシだが、恐ろしい女だよサラよ。

 ・・・・・・ん??もしや胆力がついたのはサラのせいじゃ??????


 まぁなんにしても。



「サラが楽しそうで何よりだよ」


「あら、ありがと」



 こうして楽しいお茶会は続いていくのであった。





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