3話
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小雨降りしきる本日。
ガラスのはめ込まれたテラスで相談中のルルリーアです。
もちろん、元救護室だった私の部屋(仮)に、そんな小洒落たものはありませんでしたよ?
色々とあった辺境から帰ってきたら、魔術師様たちが私の部屋(仮)に何故か整列しておりました。
そして、あっという間に吹き抜けテラスにガラスドームを完成させて、わっという間に去っていったのだ。
一体なんだったのだろうか・・・。真意は未だ謎のままだ。
まあそれは置いておこう。ちょっと、いや大分気になるけど置いておこう。
私の前には各々寛ぐ三人。
今私の身に降り掛かっている重大な案件を話し合うために、本日皆様を招集したわけなのだが。
珍しく起きているダドラを膝に、問いかける。
「どうしたらいいのぉぉぉぉ!!???一体、なにが正解なのぉぉぉ!!??」
「キュルゥ??」
「リーアの結婚、ねぇ・・・」
「ルルリーアさんが結婚かぁ・・・・」
「リーアが結婚って・・・・」
私の心からの叫びに対して、三者三様の反応が返ってくる。
サラは相変わらずの楽しそうな笑顔、アイリーン様は夢見るように手を組んで、ソラン君はこちらを疑わしそうな顔で見てくる。
理解るよソラン君、私も疑わしい状況だよ。
サラは絶対に面白がってるし、アイリーン様はお花畑だし。
共感できるのが男のソラン君というこの不思議。
じゃなくてぇぇぇぇ!!!
再び訴えかけようとするも、そんな私を素通りして、みんな一斉に釣書へ手を伸ばした。
ええぇぇ・・・・・もうちょっと私にかまってよ・・・。
「で?誰にするの?」
「誰・・・それを相談したいのさ、サラ様」
楽しそうに王弟殿下の釣書をひらひらさせるサラ。
なに?欲しいの??いいよあげる・・・す、すみませんでしたぁぁぁぁ!!サラ様ぁぁぁ!!
「わぁ学園長が居るー学園長はどう??すっごい美人で意外と優しいし!」
「優しいのはアイリーン様限定だよ、彼アイリーン様に求婚してたんじゃなかったっけ??」
そうだっけ?と首を捻るアイリーン様。
これだから・・・美少女は・・・罪な女だよ、アイリーン様め。
「・・・そう・・・アイリーンに・・・あいつ・・・」
「はいはい、ソラン君、抑えて。今は私の問題に集中して」
アイリーン様から奪った学園長の釣書をぐしゃりと握りつぶしながら、魔力を揺らがせるソラン君。
それ私のなんだけど・・・まあいいか。
「この中の誰を選んでも苦労しそうね、リーア」
「で、でしょぉぉぉぉ!!!もうほんとどうしよう・・・・」
嘆く私を見て微笑むサラ。
なになに!なにか妙案でもっ!!???流石サラ様!!
「ということは、この中以外から。そうね、例えばこの中に居ない騎士団長、とかかしらね?」
「な、なななな、なにを言われるのですかねっシャラさんてばっ!!」
いきなり発言のせいで噛み噛みの私を見て、サラはまるで古の邪悪なるダークドラゴンが目の前でミエミエの罠に嵌まった哀れな盗人を楽しむような笑顔でこちらを見た。
だ、だからぁぁぁぁ!!こわいってサラ様ぁぁぁぁ!!!
恐ろしきサラの視線から逃れるように目の前の紅茶に縋り付く。
ま、まったくっ!!陛下といい、一体なんなのかねっ!??
き、騎士団長は、まったく!!関係ないんだからね!!??
冷や汗を垂らしながら味のしない紅茶を楽しんでいると、珍しく凛々しい表情で考え込んでいたアイリーン様がぽつりと呟く。
「ルルリーアさん・・・ウチに弟か兄が居れば良かったのに・・・そういえば遠縁にちょうど良さそうな子息がいたな・・・養子にしてルルリーアさんの旦那にしてウチの家族にルルリーアさんを」
「それはその人が完全に巻き込まれてるから。止めてアイリーン様」
「・・・しょぼんぬ」
しょんぼりと肩を落とすアイリーン様。
うんありがとう、アイリーン様。真剣に考えてくれたのはわかってるよ、うん。
だけど今どさくさに紛れて私をディラヴェル公爵家にいれようとしたでしょぉぉぉぉ!!??
・・・まったく油断も隙もない・・・。
なんだか、一気に気が抜けちゃったよ。
深くソファーに座り込むと、みんなそれぞれ考え込むように沈黙する。
改めて、皆に荒らされて微妙に崩れたそれを見る。
・・・・そうだよ、わかってるよ。
陛下に言われた以上、この国の貴族である以上、選択肢はこの紙の束の中にしかない。
けれども、だけれども、どうしても正答のない選択肢を突きつけられている、その感覚が消えなくて気持ちが悪い。
というより、この早急に決められた相手と結婚をしなければならない、という状況がそもそもおかしいのだよ。
そう、だからこの状況を打開しなくては!!
「・・・・よし、なんとかするぞ」
思わずぽろりと零すと、三人はそれぞれ呆れたような表情で見合わせた後、笑いあった。
え??え、なになに、え???も、ももも、もしかしてっ!!
あれですねっ!!この現状を打開する良い方法を思いついたんだねっ!!!!
「そう言えばソラン、例のダイズはどうなったの?」
「そうそう!!私超楽しみにまってるんだよ!!」
「うっ・・いや、爆発はなんとか・・・しないようになったんだけど・・・」
「ば、ばくはつぅぅぅ!!???」
まって、ちょっとまって。
「どうして植物の品種改良の過程で爆発、なんて面白いことがおきるのかしら?」
「いや、僕もさせようとしてたわけじゃないんだよね・・・ただちょっと近道を・・・」
「そ、それのせいだっ!!絶対そうだ!!!」
まってまってまって。
「味の保証は?それがないと品種改良の意味がないわよ?」
「そうそう!!うーん、爆発かぁ・・・爆発ダイズって美味しいのかな?」
「前よりは食べられるようになったよ。ただ、まだアイリーンの口に入れられるレベルじゃない」
まってぇぇぇぇぇぇ!!いまは、わたしの、人生最大の、問題をだねぇぇぇ!!??
「キュッ!!」
「・・・いや、ダドラ。今立ち上がったのは決して遊ぶためじゃないから」
「・・・本当に、ドラゴンと意思疎通が出来ているんだね」
しみじみと呟くソラン君。
いやいやいや、いやいやいやいや!!!
疎通できてないからね!??私の一大事なのに遊ぶ気満々だったからね??
机の上で楽しそうにしっぽを揺らめかせるダドラ。
・・・・ん?ダドラ・・・・あっ---
「そ、そうだ!!わかった!!ドラゴン付きの私が狙われているというのであるならばっ!!」
ダドラを天高く掲げて、真剣に頼み込む。
「ダドラよ!!さぁ!!犬になるのだっ!!」
「キュルゥ??」
「「「は???」」」
何言ってるの、という視線を全員から浴びた。心外である。
大丈夫、みんな落ち着いて。私は冷静だよ??
「つまりダドラがドラゴンに見えなくなって無害な犬を飼っていると思われればいいんでしょ!??」
・・・あれ???まだ何言ってるのという視線が消えない。
なるほど、ドラゴンが犬になるなんて、皆信じられないもんね!!理解るよその気持ち!!
「行けるよダドラ!なにせ天眼竜様は友達の姿になってるって言ってたし!!」
「・・・これ、機密情報だよね?」
「・・・あれほど注意したはずなのだけれど、ね?」
「・・・人間のトモダチ、いるんだー、へー、わーすごーいー」
なんやかんやワイワイ言っているが、今はそれどころではないのだよ!!
さあ、ダドラよ!私のイメージを読み取って、犬になるのだ!!
いぬ、いぬ・・・いぬ・・・・。
けむくじゃらの・・つぶらな瞳の・・・ちっちゃくて・・・かわいい・・しっぽ・・・。
「キュウッ!!」
腕の中に居たダドラが高く鳴いた後、くるり、と存在が反転した。
「キュルゥ!!」
自慢げに鳴いたダドラをじっくりと見る。
「・・・・・・・・・・・・犬??」
うーん、なんだろう・・・。
確かにけむくじゃらでつぶらな瞳でちっちゃくてしっぽがあるんだけど・・・・。
「目が一つ多い」「角はないんじゃないかなー」「二股の犬は、見たことはないわね」
「---これ犬じゃないっ!!!魔物だぁぁぁぁぁ!!!」
これ連れて歩いたら『魔物マスター』とか言われそうっ!???
・・・いやいやいや、でもダドラが頑張ってくれた証だし、微妙に犬に近しい形だし、何回か挑戦すれば犬になれそう。うん!なれるよ、ダドラ!!やったね!!!
これで私の『ドラゴン付き』が無くなって結婚も焦らなくて良くなって・・・・なるほど完璧っ!!!
三つ目のダドラの薄茶色の毛並みを撫でながら、未来への希望を----
ん?薄茶?たしかダドラはあのとき黒い斑になって???
「あ」
天井近くにふよりと浮かぶ、見覚えのある、黒い、たま、が。
「っぁ!??これっ」
「リーアッ!??」
「ルルリーアさんっ!!」
ソラン君やアイリーン様が張る魔法陣を掻い潜って、真っ直ぐ私に向かってくる。
なんでまた私なんだぁぁぁぁ!!この間ので黒いのの出番は、終わったんじゃかったのぉぉぉぉ!!????
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※こっそりと・・・
長い間更新が無かったにもかかわらず、読んで頂きありがとうございます!
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