1話
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「まったく・・・・八カ国会議中、大人しくして貰うために辺境へ飛ばしたというのに、何故問題が増えるんだ・・・」
麗しい顔に深いシワを刻んだ王弟殿下に深い溜め息を吐かれる私、ことルルリーアです。
王都に戻って数日後、陛下に呼び出されたので王宮へ向かっていた。
そうしたら、いつの間にか来ていた外務大臣執務室。
途中、補佐官様に捕まって連れてこられた私です。
いやいやいや??問題って・・・私解決した方じゃない??むしろ褒められる方じゃない???
そんな不満が私の顔に出てしまったのだろう、邪神様が、へぇ?と目を細める。
怖ぁぁぁぁ!!!でもここは怖くても頑張って、しゅ、主張しよう!!
ほら、何か誤解があるかもしれないしね!!??
「私結構頑張りましたし、黒い奴の解決にも貢献したんじゃないかなーなんて思うのですが・・・」
小さく挙手をしながら邪神様に捧げ物を恐る恐る差し出すように、ひっそり反論する。
が、邪神様は私のその言葉を予期していたみたいで、全く表情を変えなかった。
「うん、そうなんだけどね。増えた仕事の所為で休む暇も無くて腹立たしい」
・・・・・・・・ちょ、え、それって酷い八つ当た・・はい邪神様ですもんね!
人間に八つ当たりくらい、しますよね!!
まったくなんて酷い邪神様なんだ。こんなか弱い淑女に八つ当たりするなんて!!
反論は止めたけど、半眼で王弟殿下を見ることで無言の抗議をする。
そんな私に、再度深い溜め息を吐く王弟殿下。幸せが逃げますよ。
「本当に次から次へと・・・君は一体なんなんだ?」
「えー・・・・なに、と言われましても・・・・」
なにって、私はルルリーア・タルボットですけど?それ以外の何かになった覚えはない。
・・・うん、そういうことじゃ、ないんだろうな。やっぱり、最近の出来事に関係したやつだよね。
ちょっと考え込む。・・・・王弟殿下は一体どれのことを言ってるんだ???
黒い奴は私関係ないし。
ダドラが寝ちゃってるのも私わからないし。
少年辺境伯ことジークベルト様のハンマーが壊れたのはどうしようもないやつだし。
疑問符を浮かべる私に、王弟殿下は、古の混沌たる邪神が生贄を捧げすぎた不届き者を見るような、苛立たしげな顔でこちらを見てきた。
な、なんでぇぇぇぇ!!!うわ久々に見るよ、その絶対零度の視線に凍え死にしそう!!
私何もしてな・・くはないけど、少なくとも王弟殿下に凍死させられるようなことはしてない!!はず!!
「全てだ。今君が思い浮かべてる君のその活躍で、他国が騒ぐ、仕事が増えて睡眠時間も殆ど無くなる、サラに負けるし、悪夢の双璧は自由、神官長は煩い・・・それもこれも全て君の所為だな」
「え・・・えええぇぇぇえええ!!!!」
なにそれどういうこと全部、私どうしようも出来ないんですけどぉぉぉぉ!!???
最後の方完全に私関係ないでしょ!!
これは酷いぞ!!言いがかり以外の何物でもないよ王弟殿下めぇぇぇ!!!
あまりの仕打ちに、再度抗議しようか?いやでもやっぱり邪神様だよ?と迷っていると、がちゃりとドアが開く音と共に紅茶のいい香りがしてきた。
「言い掛かりも程々に、閣下。私の勝ちは揺るぎませんし、これがリーアですわ」
「くっ・・・ここまで読めない人間が居るとはね・・・」
手に紅茶一式を持って、サラが入ってきた。
サラ様ぁぁぁ!!!よく言ってくれた王弟殿下が酷いことをって、顔ぉぉぉぉ!!??
古の邪悪なるダークドラゴンが、生贄との生死を賭けた知恵比べに勝利したかのような笑顔だよ!!!
って横を見たら、古の混沌たる邪神が、侮っていた人間如きに裏をかかれて腹を立てたかのような苦い顔だよ!!!
・・・・何この部屋、古の恐ろしいものが揃ってる。コワイ。
そしてさっきから勝ちとか負けとかなんなの???
そんな私が恐ろしさに震えているというのに、勝利に浸る笑顔のダークドラゴンが渋面の邪神様へ紅茶を注ぐ。
・・・・・・・・・・・・・・・え?サラが紅茶の仕度、してる??????
確かにサラは紅茶好きで、一部好事家しか知らないような各地の茶葉を独自に揃えるくらいはまってるんだけど。
それを、私以外に、淹れてる、だと???
驚く私に構わず、王弟殿下はその希少な紅茶の香りを嗅ぐと呟く。
「・・・・ディワ3、セロイン5、ウダ2」
「正解ですわ」
謎の呪文を唱えてサラもそれに応じた後、王弟殿下はまるで日常のことのように飲み、邪神顔が緩む。
そうそう、サラの淹れた紅茶おいしいよね!私にも淹れてくれたサラよ、ありがとう・・・・。
ん??え??これを疑問に思うほうが変なの???
サラも王弟殿下も何も変わったことしてませんみたいな顔なんですけど???
それに突っ込もうかどうしようか悩んでいると、王弟殿下は再び不機嫌な邪神様顔になってこちらを睨む。
「そう、サラに負けてしまったんだよ、君の所為で。本当に恨むよ、ルルリーア嬢」
「えっちょっ、今の何、っていうか私のせいって、それなんなんですかぁぁぁぁ!!!!????」
当然の権利で叫ぶが、全く答えてくれる気配のない王弟殿下。
だからその負けって何なの、王弟殿下!呑気に紅茶飲んでる場合じゃないですからぁぁぁぁ!!!
丁度私の横に来たサラに、目で訴えかける。
一体今何が起こってるの、サラ様教えて整理してぇぇぇぇぇ!!!!
「ふふっ、我らが外務大臣閣下とリーアの行動予想で賭けをしてたのよ」
「えぇぇ・・・そんなの、賭けとかにならないって・・・。お見通しだったでしょ??」
そう言った私に対して、サラはご馳走を前にした楽しそうなダークドラゴンの顔で、王弟殿下は新種の生物を見るような邪神様の顔で見てきた。
なんでだ、私ってばちょっとドラゴンがついてきてるけど、普通で平凡な淑女だよ???
でも王弟殿下は予想出来ずにサラに負けたってことか。ふふん!いい気味だ!!
やっぱりあれかな、ダドラに乗って飛んだとか、かな??
私も一人で乗れるとは思わなかったしな!
しかも不可抗力だったし、びっくりしたもんなー、あれは予想出来ないね!!
「閣下はリーアがドラゴンを増やすと、私は黒い物体に反応されるって予想したの。ね?私の勝ちでしょう?」
「サラ、ソランや分析官に最新分析結果を控えさせていただろう?あれは反則だよ」
「まあ!不確定な情報が閣下に伝わらぬよう、尽力したまでですわ?」
ニコリと嗤い合う二人。怖い。
・・・二人共飛んだ所じゃなかったのか。あれ想定内なの??私そんなイメージなの??
しかし流石サラ様、なんで黒い奴が私に反応するってわかったんだろうか・・・・。
確実に言えるのはソラン君とその分析官様が巻き込まれて犠牲になったってことだけだね!
それに辺境のあの海辺にドラゴン一杯居たしな・・・王弟殿下の予想通り、ドラゴンが増えてたかもしれなかった、ってだからぁぁぁ!!
私ドラゴン飼いとかじゃないから!!!増えないから!!!
「情報戦は外交の基本ですわ。閣下も現場情報を閲覧制限しましたわよね?情報を得るのに苦労しましたわ」
「そこは大臣の特権を振るわなくては、ね?ルルリーア嬢?」
「私を巻き込まないで下さい」
キッパリ言う。この人達ヤバイ。賭けのために全力を尽くしてるよ。
・・・ソラン君、無事かな・・・。
ダドラの鱗を撫でて心を落ち着かせる。
この問題、突っ込んでも恐ろしい事実しか出てこなさそう。
特に勝者が何を得るのかは絶対に聞かない。・・・よし、話を変えよう、変えさせて下さい。
衝撃的な賭けの話に紛れちゃったけど、サラの紅茶問題もキニナルシ、ネ??
恐らく死んだ目になってるであろう私と目が合うと、流石私の親友は理解ってくれた。
「ああ、紅茶ね。この間、休憩の時に自分に淹れた紅茶を閣下が勝手に飲んだの。そうしたら気に入ったようで、たまに淹れてるのよ。もちろん、条件付きで」
「サラ様が!!??一体どんな条件でそんな凄いことをっ!!!???」
「何なのかな、その反応は・・・・」
私がその事実に驚愕していると、呆れたように王弟殿下に言われた。
だって!サラ様だよ??興味のないことは一切やらないことで(私に)有名な、あのサラ様だよ!!??
「毎回茶葉の配合を変えてるの。で、その比率を間違えたら飲めない上に私の欲しい情報一つって条件」
「そうそう、最初の頃は中々当たらなくてね。・・・情報を獲られたのは痛かった」
情報かー!!なるほどね、それなら納得。
ちょっと遠い目の王弟殿下、何獲られたんだろう。いや聞かないけれども。
・・・・・・・・・ねぇ、なんだか二人仲良くなってない???
サラが私以外にダークドラゴン顔を全開にしてるの、初めてに近いんだけど???
アイリーン様やソラン君と一緒のときだって、サラなりに抑えてたのに・・・・。
くぅぅぅ!!!王弟殿下め!!私のサラなのにぃぃぃ!!邪神かっ!邪神様だからか!!??
親友をとられそうな、そんな嫉妬に燃えていると、ふと気付く。
さっきからいちゃもんつけてるだけで、用件をちっとも言わないぞ?この王弟殿下。
「そういえば、私なんでここに呼ばれたんですか?」
そう聞くと、何故かきょとんとした顔で王弟殿下に見返された。
いや私がきょとんだよ、何も聞かされずに連れてこられたんだからなぁぁぁ!!!
「え?ああ、君が兄上に呼ばれたついでに、仕事の愚痴と賭けに負けた文句でも言おうと思って」
「ええええぇぇぇえええ!!!!???それだけの為に呼ばれたの私ぃぃぃ!!??」
なんで私の預かり知らない所で賭けた事で、私が文句を言われねばならぬのだ!!!
確かに愚痴聞き係を拝命したけど、国王専属なんだから王弟殿下は対象外だぁぁぁ!!!
「本当に器が小さいですわ、閣下」
「・・・君はもうちょっと上司を敬ってくれても良いんじゃないか?」
なんだか仲の良さを見せつけられた、只それだけの時間になっていた気がする。
・・・・サラは、私の親友なんだからねぇぇぇぇ!!???あげないんだからね!!王弟殿下めぇぇぇ!!!
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※未読スルーOKの裏設定ですよ!
※賭けの予測期限:ルルリーアが辺境に着くまで
・邪悪なるダークドラゴン サラ様:
最新情報は、辺境の調査機関、ミシェルさんから日々リアルタイムで更新されている、が、王弟殿下に邪魔されて見れないので、ソラン君をおど・・頼んで分析結果報告を遅らせた。その分析結果から現状を推察。(分析だけから推察するには不確定要素が多すぎて楽し・・・大変だったわ)
→ルルリーアに黒い物体が反応する
・混沌たる邪神 王弟殿下:
現場状況で複数ドラゴン、それも祭りに参加していたドラゴンであることが判明。それと分析結果を合わせようと思ったら中々報告が上がってこない。ので、現状から結果を推察。(黒い物体の情報は予測締め切り期限ギリギリに変動があって、そこをつかれたのが楽し・・・敗因だったね)
→ルルリーアがドラゴンを増やす
サラ「貸し一つ、ですわ。閣下」
王弟「貸し、ね・・・。君の貸しは高くつきそうだね・・・」
サラ・王弟「「でも、ドラゴンが小さくなるとは思わなかった」」




