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8話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「---ですので、この首輪をドラゴンに着けて頂けないと、お通しする訳には」

「ぁんだとぉ??」



 先程私達調査団は、我がルメール王国の最大の壁にしてドラゴン島に最も近い場所、ヘルメル辺境伯直轄地の門に到着致しました。


 駄ドラへ首輪をという至極まともな門番さんの言葉に、喧嘩を売るように声を低める魔術師団長。

 門番さんは顔を青くするが、それでも言葉を翻そうとはしなかった、エラい。


 確かに、ここに来るまでに通った街や村は素通りしたんだよねー。

 それも、駄ドラの存在が大騒ぎになるから、だし。しかも野放し駄ドラ。

 門番さんの言葉は、当たり前といえば、当たり前だ。


 ・・・皆様、お気付きだろうか。

 つまり私達ずっと野宿、な上に私に至っては、街だろうが村だろうが、中に入れさせても貰えなかった。

 他の三人は交代で情報収集とかで文明に触れていたと言うのに。


 旅のアドバイスを下さった女騎士様のお陰で、一応無事に野宿出来たけど。けどぉぉ!!!


 私、淑女、なのにぃぃぃ!!!なんで野宿でしかも駄ドラと一緒にお留守番なのぉぉぉ!!??

 最近なんだかもうこんなのばっかりぃぃぃ!!!

 それもこれも全部、駄ドラの、駄ドラのせいだぁぁぁ!!!


 って、あっ!!魔術師団長に駄ドラをなすり・・譲ろう作戦忘れてたぁぁぁ!!

 なんて惜しいことを!!!


 ・・・・・・落ち着くんだ私、深呼吸するのよ、深呼吸。

 その作戦は次の機会を待つことにしようそうしよう。


 門番さんを睨みつけ、まったく譲ろうとしない魔術師団長を、遠い目で見る私達。


 まだかなー、あー早く毛布に直地面じゃなくて部屋のベッドで寝たい。

 それに浄化魔法で清潔度は保たれてても、やっぱりお風呂に入りたい。


 もう私限界。ホント、もうなんでもいいから進んで欲しいんですけど。

 そもそも、他の二人も勿論私も反対してないから、これ、魔術師団長が譲歩すればいいだけの話では??



「もう一度聞くぞ、お前!!ドラゴンに、首輪をつけろ、だとぉぉ!??」

「そ、そうですぅぅ!!首輪を着けて頂かないとぉぉ!!」



 完全に脅しにかかっている強面の魔術師団長。に負けずに涙目で対抗する門番さん。がんばれ。


 この門番さん、きっとすごく真面目なんだろうなー。

 だから魔術師団長の剣幕に屈しないんだろうなー。

 ・・・厳つい顔で、腰布と胸当てだけの格好で、ムキムキな筋肉を恐怖で震わせてるけど。


 別に門番さんの趣味、というわけではなく、ヘルメル辺境がルメール王国内で最南端の、一番暑い場所だからだ。

 つまりここでは、この開放的な軽装が普通なんだよね。


 もちろん私はサラから貰った手袋と、ソラン君から貰った温度調節魔法石を身に着けてるから、開放的な格好でなくても、とっても快適だ。


 ありがとう、サラにソラン君。

 お陰で、魔法で温度調節出来なくても年頃の乙女には辛いへそ出しな格好にならずに済んだよ。


 ・・・そう言えば、騎士団長もなんだか火傷の処置の仕方とか言ってたな・・・。

 確かに、強い日差しに肌がヒリヒリしているけど、単に「日焼け止め持っていったほうがいい」でいいじゃないか!!!

 なんなのさ!!流水とかアエロとかぁぁぁ!!


 ・・・いけないいけない。また興奮してしまったよ。ふぅ・・深呼吸、深呼吸。



「ぜってぇ、ドラゴンに首輪なんざ、着けねぇからな!!!」

「ぇえぇええええっ!??こ、困りますよぉぉ!!」


「団長、我儘は」「レナルド!!此処は譲らねぇからな!!」



 宥めようとしたレナルドさんが、魔術師団長の剣幕にすぐさま門番さんへ向き直る。



「・・・門番さん、これは無理です。幻術で首輪をしているように見せかける、というのはいかがですか?」

「い、いや、それでは、意味が・・・」

「どっちでもいいー。早く調査したいー」



 揉めに揉めてる。誰も彼も譲らないな。凄く帰りたい。


 駄ドラが小鳥を追いかけて何処かへいきそうになったので、蜂蜜で気を引く。

 ・・・・うん、平和だ。当ドラゴンなのに、全く蚊帳の外だ。


 はっ!!このまま揉めて入れなくて結局帰ってしまうという選択肢が浮上してっ!!



「がっはっはっはっはっはぁーーーーー!!!」



 ---筋肉の塊が、落ちてきた。


 ぎゃ、ぎゃあああああ!!は、はだかの変態がぁぁっていや一応腰布、でも殆ど裸だぁぁぁ!!

 淑女になんてものを見せるんだぁぁぁ!!!



「久しいの!!アレイ、いや魔術師団長どの!!!どうやら、何か揉めごとのようだなっ!!」

「・・・・久し振りだな、ヘルメル辺境伯」



 ・・・・・・・・・え、この筋肉しかないみたいな人が、ヘルメル辺境伯???

 魔術師団長は普通に受け答えしてるけど、え?辺境伯??ギリギリの腰布にサンダルしか身に着けていない、この人が??


 門番さんが敬礼してるし、レナルドさんも後ろに下がってる。うわぁ・・・本物なんだ・・・。



「俺はもう引退してるからな!辺境伯は息子だ!!」

「じゃあヘルメルのおっさん、引退したんならこんなところまで何しに来たんだ」


「もちろん!!ドラゴンを従えたという子女を見に来た!!」



 そう言って豪快に笑う、ヘルメル前辺境伯。

 テンション高いなー・・・って、えええええ!!ドラゴンをって、もしかして、私???


 周囲を見ると、レナルドさんが微妙な顔をして私を見ていた。

 ・・・やっぱり、私かぁぁぁ!!!ええええ!!わ、わたしを見に、だとぉぉぉ!!??


 見に来た、と言ったヘルメル前辺境伯が、私、ではなく、ミシェルさんを見る。・・・ほっ。

 としたのも束の間、ミシェルさんが表情を変えずに私を指差した。


 ヘルメル前辺境伯の視線が私に移る。


 いやだぁぁぁぁ!!ワタシ、チガウヨォォォ!!!!



「ほうほう、君が『あの』ルルリーア・タルボット嬢か!!」



 『あの』ってどの『あの』なのぉぉぉ!!

 辺境まで伝わってるのって、どれなのぉぉぉ!!???



「これは年もちょうどいい、どうだ?ウチの息子の「父上ぇぇ!!先に行かないでくださいよぅ!!」か?」



 えっ・・・何??息子って言ったら、現辺境伯のことだよね??その息子の・・何???

 混乱する私の前に、またしても大きなモノが落ちてきた。


 ---身の丈くらいある、ハンマーだ。・・・じゃなくて、ハンマーを背負った、少年だ。



「おお、来たか、我が息子よ!!遅いぞ!!」

「父上はもう少し安静にされたほうが・・・」



 満面の笑顔で迎える前辺境伯に、弱々しい声でハンマー少年が答える。

 ・・・に、似てないな、この親子。父親は筋肉の塊なのに、息子は妖精みたいに繊細そうだ。



「し、失礼致しました。ジークベルト・ヘルメルです。この度は我が領に足を運んで頂きありがとうございます、魔術師団長。そして調査団の皆さん」



 慌てながらも優雅に挨拶をするハンマー少年、じゃなくて辺境伯・・・ややこしいな。

 少年辺境伯、でいいか。


 それにしても、私より年下っぽいのに、この混沌とした場所でちゃんと振る舞えるなんて・・・。

 非常識な腰布の、彼の父である前辺境伯よ。息子を見習うといい。


 そしてさっきなんて言ったのさぁぁぁ!!!



「ジークベルトか・・・礼は受け取った。が、ドラゴンに首輪は着けねぇからなっ!!」

「そ、それは・・・・」



 少年辺境伯に対して、大人げない魔術師団長。



「ふむ・・・首輪は着けられないのか?ルルリーア嬢?」

「へっ!??試したことが無いのでなんとも」



 急に話しかけられたよ!!筋肉前辺境伯にっ!!びっくりしたーー!!



「この首輪は、伸縮可能変幻自在な魔法の鎖で腕輪につながっておりまして!!着脱も簡単でっ!是非お試しにっ!ひぃいい!!」



 ホント頑張ったよ、門番さん。

 魔術師団長に睨まれながらも、すかさず私にその腕輪付き首輪を手渡して遠ざかる。


 ・・・仕方がない、辺境伯の前だもんね。

 何回か試して駄目だったら、魔術師団長に頑張って首輪無しにしてもらおう。


 早く、ベッドで、寝たいぃぃぃ!!!!


「駄ドラーいっくよー」

「キュウーーー!!!」



 何故か楽しそうな駄ドラに向かって、首輪を投げる。


 ---ぱくり。



「・・・・駄ドラ、ぺってしなさい」

「キュルゥ??」



 首輪を咥えたまま、首を傾げる駄ドラ。

 ・・・あと三回投げて咥えられたら、本当に魔術師団長に頑張ってもらおう。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ---結論から言うと、無事駄ドラに首輪を着けられた。

 二回目に投げた時駄ドラが弾いた首輪が、すっぽりと首にはまったのだ。



「本当にドラゴンを従えられるのだな!!!」

「よく見て下さい。どう考えても偶然です」



 はっきりと言い切る私。

 不思議そうな顔で、そうなのか?と前辺境伯が私に聞くので、もちろんですと自信を持って答えた。

 だってその通りなんだからね!!



「従えてないとなると・・・困ったな!!!」

「そうですね・・困りました・・・」


「何か問題でも?」



 レナルドさんが尋ねると、親子で顔を見合わせた後、少年辺境伯の方が理由を話し始めた。



「実は、黒い物体の周りにドラゴンが複数「ドラゴンだとっ!??」「団長黙って」・・・複数体現れまして」



 ふむふむ、それで??



「どうもソレに干渉しながら「どんな方法でっ!??」「ミシェル黙って」・・・しながら囲んでいるようでして」



 へーそうなんだ。



「なのでドラゴンたちに訳を聞いて貰おうとルルリーア嬢に「わ、私ぃぃぃ!!??」「ルルリーアちゃんにぃぃぃ!!??」・・・はい、ルルリーア嬢にお願いしようと・・・」



 ドラゴンと話せるわけないよ!!無理に決まってるでしょぉぉぉ!!!

 ましてや、良く理解らない物体を前にしてるドラゴンに『今何してるの?』とか、聞けないからぁぁぁ!!!


 首を横に激しく振りながら助けを求めると、レナルドさんが辺境伯親子を抑えるように声をかける。



「それは・・・ルルリーア嬢は普通・・・身体的には普通のご令嬢なので、危険なことはちょっと」



 擁護してくれてありがとうございますレナルドさん。

 でもなんで普通を言い直したんだぁぁぁぁ!!レナルドさん!!!!



「困ったな!!・・・やってくれないかなー!!」

「困りました・・・頼りにしていたんですが・・・・」



 チラチラとコチラを見る辺境親子。


 ぐるりと周囲を見渡す。


 レナルドさんは・・・遠慮してるのか強く出られないみたいだ。

 ミシェルさんは・・・門番さんに何か質問攻めにしている。

 魔術師団長は・・・首輪をしている駄ドラを見て悲しんでいる。


 なるほど、なるほどね。

 つまるところ、自分の身は自分で守るぜってことだね!!!



「分かりました・・・・それではお見せしましょう!!!」



 ばっと両手を広げると、駄ドラが何事かとばかりに寄ってくる。


 よしよし駄ドラよ。その辺に居なさい。

 私は今から、危険を回避するところだからね!!!



「私と駄ドラの、意思疎通の出来なさを、とくとご覧あれ!!・・・さあ行くわよ!駄ドラ!」

「キュルゥゥ!!!」


「息ぴったりだな」

「ぴったりです!」

「・・・あー、これは・・・」



 だ、だまらっしゃい!!!今から!今からだから!!

 レナルドさん!そんな可哀想な子を見る目で見ない!!



 三人が見守る中、息を整える。



「駄ドラ!伏せ!!」

「キュ??」



 ほうら!見てくださいよ、この駄ドラの不思議そうな顔!!

 伏せどころか、こっちに向かって・・・え。



「キュキュウ!!」

「ちょ、駄ドラぁぁぁ!!じゃれるなぁぁぁ!だからお前と私じゃ大きさが違うって言ってるでしょうがぁぁぁ!!」


「仲がいいな!!」

「仲良しさんですね!」

「あー・・・ダイジョウブー?」



 いやいやダイジョウブじゃない!仲良くない!

 おわっ!は、鼻先がっ!!当たるぅぅぅぅ!!!!




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「ど、どうで、す??わかって、もらえました??」



 駄ドラからのじゃれ合いと言う名の攻撃を躱して、息も絶え絶えだよ・・・。

 こ、これだけやれば、皆もわかってくれるはず。



「つまり、ルルリーア嬢に任せてよい、ということだな!!」

「よかったです・・・本当によかった・・・」


「あー・・・フォローはちゃんとするね?」

「なにあれどうやって意思疎通してるの解剖、いや研究したい」

「・・・・・・」


 辺境親子の期待の目、レナルドさんの生暖かい目、ミシェルさんの獲物を見るような目、魔術師団長の恨みがましい目。

 それぞれが、私に集まる。


 な、なんでだぁぁぁぁ!!!ドラゴン、え、ドラ、いやだぁぁぁ!!


 私ただついてくればよかったんじゃないのぉぉぉ!??

 なんで他のドラゴンに、聞き取り調査しなきゃいけないんだぁぁぁ!!??




 ---もういやだここいやだオウチカエルゥゥゥ!!!





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