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6話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「やっぱり理想の住まいは、可愛らしい系?それとも豪華系?そうねぇ、ライちゃんがいるから、鍛錬場くらいの広い庭は欲しいところよねぇ」



 私としては、可愛い系の家が良いですが、その前段階がすっぽり抜けてますよ。イザベラさん。



「ライオネルのやつが、ルルリーア嬢の好きな色を教えてくれなかったから、持てるだけ持ってきた」



 私が好きな色は空色ですが、騎士団長は知りませんし、その両手に持っている宝飾品はなんでしょうか。ヴィディカ様。


 目の前の、死んだ目をした騎士団長と目が合う。

 理解る。私は今、間違いなく騎士団長と同じ目をしている。



 ワー、オソロイダナー。



「やだもう!そんなに熱く見つめ合っちゃって!!」

「ライオネル。ルルリーア嬢にはどれが似合うと思う?」



 凄い自由だよ、この御二方は。

 どうすればいいんだ?この状況・・・。騎士団長は殆ど死に体だ。



「これは南方の国王を返り討ちにした時に差し出された首飾り。でこっちは、花嫁を奪い返した時にドワーフから貰った髪飾りで」



 説明が物騒過ぎるぅぅぅぅ!!!

 明らかに曰くのありそうなものばっかりなんですけどぉぉぉぉぉ!!??


 右手に大粒のダイヤと小粒のルビーが連なったネックレス(沢山ありすぎて数えたくない)と、至る所にサファイアが埋め込まれ小鳥の細工が施されたバレッタ(細かすぎてよく見たくない)。



 やばいいいぃぃぃいいい!!これ国宝級のお宝じゃないですかぁぁぁぁ!!??ヴィディカ様ぁぁぁ!!



「いやこれ高価すぎ」

「うん!よく似合うな!!・・・こっちもいいな」



 うわお!!断る前につけられてるぅぅぅ!!


 頭にも首にも腕にも胸元にも耳元にも、あらゆる所に宝石たちをつけられて固まる。

 壊したらどうしよう!!ヤバイよ!!今の私、国も買えそうだよ!!


 怖い。めちゃくちゃ怖い。・・・手が震えてきたし緊張しすぎて汗も出てきた。

 と思ったら、ひょいと持ち上げられた。



「・・・師匠、それくらいにして下さい」



 死に体だった騎士団長様だぁぁぁぁ!!


 ヴィディカ様につけられた飾りをさっと外してくれたありがとうございます騎士団長。

 でもヴィディカ様の膝から騎士団長の膝の上に移動ってどういうことなんでしょうか、いや今は助けられたことに感謝しよう。



「・・・ベザレル団長も、土地はいりませんから」

「ひゃう!!!」



 おっとぉぉぉ!!??静かだなと思ったら、イザベラさんが何か書いてるって土地の権利書だぁぁぁ!!


 血の気が引く思いをしながら、イザベラさんへ懸命に頭を横に振る。

 あぶなっ!!あとちょっとで騎士団長と私に土地を送られるとこだったぁぁぁ!!



「・・・なあに?私の祝いが、受け取れないっていうの??」

「・・・そう言う訳ではありません」

「・・・ほう、喧嘩か?私も混ぜろ」



 ゆらりと殺気を纏いながら立ち上がるイザベラさん。

 私を片腕に抱えて剣に手を当てながら立ち上がる騎士団長。

 小剣を既に抜き去って楽しげに立ち上がるヴィディカ様。


 一人なんだか違う人が混じっているけど、三者三様に立ち上がり互いに殺気を当て始める。

 窓ガラスは軋み、紅茶のカップはカタカタと震え、遠くから誰かの悲鳴が聞こえる。


 ・・・・・一ついいかな?

 私を降ろしてぇぇぇぇ!!この状況で騎士団長の腕(このばしょ)に居るのは、非常に不味い気がするぅぅぅぅ!!

 でもこの空気に何も言えないぃぃぃぃ!!


 一触即発の空気に、息を飲んでいると。



 ばったーーーん!!



「お願い申し上げますぅぅぅぅ!!!!!」



 派手にドアが開く音と共に、丸い物体が飛び込んできた。

 こ、こんどはなんだぁぁぁ!!???



「現在我が国は先の戦争にて国費をかなり放出致しました次第でございましてどうか悪夢・・右元帥閣下左元帥閣下に於かれましては何卒これ以上城を壊さないでいただきたく伏してお願い申し上げますぅぅぅ!!あとここにサインを頂けますかぁぁぁ!!」



 その丸い物体・・・じゃなくて財務大臣閣下が、平伏しながらお願いと書類を同時に差し出してきた。

 ・・・この空気の中、書類にサイン貰おうとしてるよ、たくましいな財務大臣閣下。



「ブロイデン様っ!なんと勇敢なっ!」「丸いジェフリー様が更に丸くなって可愛いっ!!」「頑張ってブロイデン様!その書類で最後ですよ!!」



 ドアの端から身を隠しながらも応援する財務官様たち、と貴族の装いの女性。

 いや上司が身の危険に晒されてるんですけど、それでいいのか??



「・・・しょうがないわねー。ジェフちゃんがそこまで言うなら」

「申し訳ございません。財務大臣閣下」

「奥方の前で、乱暴な事は出来んからな」



 捨て身の財務大臣閣下のお陰で、漸く殺気が静まる。

 ・・・・・ん??奥方??まさかさっきの貴族女性が・・??


 再度ドアの方を見てみるが、喜びながら涙を流す財務官様しかいない。・・・・気付かなかったことにしよう。



「あとはですなー。陛下よりお越しくださるよう伝言を受け賜っておりまする」

「まったく、ジェフちゃんは大臣なんだから、伝令みたいに使うなって言ってやったらどう?」


「はははっ!部下は全員御二方に近づけませんので」



 にこやかに笑ってるけど、ほんとにそれでいいのか???


 さらさらと書類に書き込みながら出ようとしたイザベラさんが、くるっとコチラを振り向く。



「宝石にも土地にも欲を出さず、ライちゃんの顔に惑わされてないし、私達の殺気にも耐えられる。・・・合格よ!ルルちゃん!!」

「・・・私は本当にあげようと思ってたんだが」



 え??えええ???なに??どういうこと???



「ってことだから、ルルちゃんは私達のお気に入り。旅気をつけてねー」

「ああ、もし何かあれば、我らの名を出すんだぞ?」



 よしよしとヴィディカ様に撫でられ、去っていく御二方を呆然と見送る。

 その後姿に、騎士団長が苦々しい声で呟く。



「・・・・やられたな」

「え??」



 ・・・もしかして、今までのは演技で、ヴィディカ様とイザベラさんが、私の後ろ盾になってくれるってこと???


 思わず、頬が緩む。ちょっと、じゃない大分嬉しい。

 これでいざという時に、例えば陛下とかに無茶難題言われたときとかに名前を出させてもらえば!!・・・いや、もっとココぞと言う時にしよう。


 一人でニヤけていると、騎士団長に床へ降ろされる。・・・腕の上に居るの忘れてたよ。相変わらず腕の筋肉半端ないな。

 っていうかそれじゃ財務大臣閣下や財務官様たちの前で抱えられてたんだ・・・。いやきっと誰も注目なんてしてない、はず。



「すまなかったな。師匠たちももう少し穏便な方法をとってくれればよかったのだが」

「いえ、むしろイザベラさんとヴィディカ様には御礼を言わなくては」



 じっと凝視してくる騎士団長。??なんだ???



「どうかされましたか?騎士団長?」



 なんだ?なにか変なこと言ったかな???



「・・・・・名前・・・・」



 ぼそっと呟く。え?なまえ??なまえが、どうか・・・??



「いや、なんでもない。では失礼する、ルルリーア嬢」

「え?あ、はい・・・??」



 煮え切らない態度で立ち去っていく騎士団長。


 え、まさか、自分も名前で読んで欲しいとかそんなこと言おうとしたんじゃないですよね??騎士団長ぉぉぉ!!??

 でも、文脈というか、前後の流れだと、そういう意味に・・・・。


 のわぁぁぁあああぁぁああ!!む、むずがゆいぃぃぃいいい!!!なんなのや、やめてぇぇええ!!


 言うならはっきり言えばいいじゃないか!

 妙にためらうから、色々考えちゃうじゃないかぁぁぁ!!!って何を考えてるんだ私ぃぃぃ!!



「うわあああぁあぁぁあああ!!!」

「・・・・・お嬢様??」



 叫び声を上げてソファに蹲っていると、壷を抱えたマーニャが不審げな顔でコチラを見ていた。



「マ、マーニャぁぁぁ!!!」

「なんです?お嬢様。ハチミツは持てるだけしか持ってきてませんよ?」



 そうじゃない、そうじゃないんだよぉぉぉ!!きいてく、いやっ!話したらからかわれるか、最悪婚約者説に真実味を与えてしまうぅぅぅ!!!




「??お腹でも空いたんですか?お嬢様。今準備しますね」

「違うけど食べるぅぅぅぅ!!!」




 出されたクッキーは大変美味しゅうございました。

 ・・・・・でもそうじゃないんだよぉぉぉぉ!!!!




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