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3話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「こんな仕打ちってあんまりじゃない!??でしょ!ソランくん!!」

「うんーそうだねー」



 全く気の入っていない返事をするソラン君。

 ちゃんと聞いてよ!!私の身に起きた、この耐え難い仕打ちを!!



 騎士様たち、話しかけてくれるのは嬉しいのだけど、『奇跡の少女』だの『最後の希望』だの『団長の良心』だの『騎士団の救世主』だの・・・。


 揃いも揃ってなんなのさぁぁぁ!!


 特に『団長の嫁』って言った前タオルくれた騎士様、後で絶対訂正させる。

 騎士団長との気まずい空気から救ってくれた恩人だけど、絶対、力尽くでも訂正だぁぁぁ!!


 騎士団長は笑ってて全然部下を諌めてくれないし・・・。

 魔術師様たちは増々遠巻きになるし・・・。



「あ」

「え?」



 -----どぉぉぉーーん!!



「げほっ!ちょ、ソラン君!!」

「あーごめんごめんー。リーア、無事?」



 突如現れた妙な煙を吸い込んでしまって咽る私。

 そんな私に心の篭っていない謝罪と安否確認をされる。


 無事なもんかぁぁぁ!!

 一体何事じゃぁぁぁ!!??



「失敗失敗・・・この配合だとやっぱり・・・」



 そう考え込むようにブツブツ言い始めるソラン君。

 私の返事はいらないのかい、そうかいそうかい。・・・ほんとに友達??


 そして、ソラン君よ、絶対私の話、聞いてなかったでしょぉぉぉ!!?



「・・・これ、何してるの??」

「ん?アイリーンに頼まれた、『だいず』の品種改良実験」



 ええぇ・・・それって爆発を伴うような、危険な実験なの??

 っていうか、私が居るのにそんなことしないでほしいんだけどぉぉぉ!!??


 さっと一振りして散らかった器具を魔法で片付けるソラン君。



「で?何か頼み事、なんでしょ?」



 うっ・・・そうなんですよ・・・。

 見抜かれてたか、ソラン君のくせに!!



「食堂でご飯食べない??私と一緒に」

「・・・食堂で???」



 そう、ソラン君は今や『次期魔術師団長』、そんなソラン君が横にいれば騎士様たちだって変な二つ名を言わない!!・・はずだ!!

 さぁ!今こそ、友達を、私を助けるんだ!ソラン君よ!!



「やだ」

「えええええええ!!??なんでぇぇぇぇ!!??」



 予想以上にあっさりと見捨てられたぁぁぁ!!

 ひどいぞぉぉぉ!!??



「食堂に行く時間が勿体無い。・・・この部屋でいいならいいけど?」

「ぇぇぇぇ・・・・」



 そう言われて周囲を見渡す。


 奥の棚にはなんだか怪しげな薬瓶。窓際には原色の毒々しい色の植物の鉢植えが何個か・・・。

 あれ・・なんか動いてる・・・ツタが・・・えええええ・・・。


 目の前のテーブルの上も、薬品が所狭しと並べられていて、ソファには紙の束が乱雑に置かれてて・・・。



 そう、一言で言うと、この部屋汚い。酷い有様だ。

 前にお茶をしに来たときよりも、段違いに汚い。・・・私に此処で何かを食べれる自信はない。


 ソラン君は此処で食べてるんだよね・・・逆に尊敬するわ・・・。



 斯くして、ソラン君で防衛作戦は失敗に終わったのであった。


 目論見が外れて意気消沈している私に、ソラン君は何かを寄越した。



「はいこれ。・・・必要ないと良いけど」

「え?なにこれ??」



 袋からコロンと出てきたのは、青い魔法石。・・・え?なになに??



「気温が一定以上になると、自動で魔法石の周囲を適温にするやつ」



 ・・・うーん?ありがたくいただくけど???

 なんかサラにも、暑さ対策グッズを貰ったばかりでコレって・・・なにかあるの??



「まあ、保険、みたいなもんだから、リーアは気にしなくていいよ」



 そう言って作業に没頭し始めるソラン君。


 え?えええええぇぇぇぇぇえええ!!!??

 なになになんなのぉぉぉ!!?怖いよ何が起こるのよ、教えてよぉぉぉ!!???



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 鍛錬場にて、呑気に日向ぼっこをしている駄ドラの横で、ぼんやりする私。


 結局何なのか、ソラン君教えてくれなかったなぁ。

 というよりも作業に集中しすぎてて、返事もしてくれなかったなぁ。


 現在、私と主に駄ドラのために、鍛錬場の隅は貸し切り状態だ。

 そこに天幕が用意され、絨毯が敷かれ、机椅子、飲み物や軽食も揃っている。


 ・・・この完璧な配慮に、暗にあまり従者を呼び出すな、と私は受け取った。うん、わかってるよ・・・。


 とおーーーくの方で、騎士様たちが訓練しているのが見える。


 本当に、遠い。



「キュルゥ??」



 こうしてたまに私が居るのを確認する駄ドラ。

 それにもう慣れてしまった自分が居る。そう、不本意ながらも慣れてしまったよ。



 ・・・・あー、なんだか強い視線を感じるけど、いい天気だなー。


 ますます強くなる視線に、耐えきれなくなってきた私は、振り返って視線の主たちを見る。


 柱に隠れている魔術師団長サマと、それとは別の柱に隠れている神官長サマ、だ。

 ・・・本当は仲いいでしょ、あの二人。


 さてと。


 やることはないし、『のんびり過ごしていい』って陛下からのお墨付きもあるし。

 裁縫セット一式持ってきたから、刺繍でもしようかな。



「おい、嬢ちゃん!!」

「ちょっと、ルルリーア嬢」



 ・・・・・やっぱり無視できなかったか。

 声を掛けられたら仕方がない。本当に仕方がない。


 渋々、振り向く。その間に居なくならないかな、とも思ったけど、やっぱりまだ居た。

 魔術師団長と神官長が。・・・まだ柱の陰だけど。


 すごい勢いで手招きするので、はちみつを駄ドラに与えてから、仕方なくそちらに向かう。

 そういえば、なんであの二人、こっちに来ないんだ??



「・・・・なにか、御用ですか?」


 そう言って近づくと、二人はとても良い笑顔で迎えてくれた。

 ・・・なんだか、嫌な予感しかしないんですけど。



「嬢ちゃんに」「ルルリーア嬢に」



 台詞が被る。途端に二人が睨み合う。

 いやいや、そこほんとどうでもいいから。あっ、足踏み合ってるよ、まったく、二人共大人でしょうが・・。



「こういう時は、年長者に譲るのが若者の務めですよ」

「いつもじじい扱いすると怒るじゃねぇか。都合のいい頭だなぁおい」



 仲裁に入るべきなのか、それとも二人が持っている分厚い何かを注目すべきなのか、迷った上で。


 くるりと踵を返すことにした。

 ら、がしり、と肩を掴まれた。・・・デスヨネー。


 仕方がないな、と言わんばかりに溜息をつく二人。

 いやいやいや、溜息つきたいのこっちだから。溜息どころか悪態をつきたい気分だから。



「この『ドラゴン生育日誌』をルルリーア嬢に」

「俺からも『ドラゴン観察記録』を嬢ちゃんに」



 そういうと、二人はやはり抱えていた分厚い本を差し出してきた。

 やっぱり、私宛かぁぁぁぁぁ!!!そしてやはり駄ドラ関係かぁぁぁ!!


 なんなの、日誌だの記録だの、厚さが10センチくらいあるんだけど。

 いらないな、嫌だな、と言う気持ちを隠さずにいると、二人共これが如何に大事なことかと力説してきた。



「ドラゴンがこのように一処に、しかも人間の居住区にいることは、史上初の出来事なのですよ!!」

「そうだ。しかも人に懐いている様子なんざ、どの文献を探してもねぇからな!!」


「はぁ・・・」


「なので、今まさに謎に包まれたドラゴンの生態を知る絶好の好機なのです!!」

「ああ、このチャンスを逃すわけにはいかねぇんだ!!」


「はぁ・・・」



 目を輝かせて説明されたけど、今一二人の熱が伝わらない私。

 と、ふと気づく。それ、私じゃなくても、よくないか??



「それならば、お二人で生育日誌なり観察記録なりをつければよろしいのでは?」


「・・・・・・」

「・・・・・・」



 至極当然のことを言った私の目の前で、急に二人がもそわそわし始めた。

 え?なんなの?普通、そういうのって自分でやりたいものじゃないの??


 ・・・・なんで顔を赤らめて髪を指に絡め始めたのさ魔術師団長よ。

 ・・・・なんで服の端を握ったり離したりし始めたのさ神官長よ。



「それは・・・その・・やはり・・直接ドラゴンと会うというのは・・・」

「そ、そうだなっ!その、こ、こころの準備とかがなっ!」



 意味がわからない。二人ってドラゴンマニアじゃなかったのか?

 これじゃあまるで、初恋の人に会いに行く前の少年のようじゃないか。・・・両方共少年にしては年が・・。



「では、他の方にお願いしては?私そういった観察は素人ですので」



 全力でその観察だかなんだかを回避しようとする私。

 だって、その本、絶対細かく書かなきゃいけない気がする。面倒な日々が待っている気がする。


 絶対やりたくない。



「いや、それはちょっと・・・なぁ?」

「ええ、他の人間がドラゴンに近づくと思うと、腹立たしいですね」



 言い切ったよ!この神官長め!!清々しい笑顔でも駄目だからね!

 なんなのそのよくわからん理屈はぁぁぁぁ!!


 その理屈のために、私、面倒そうな作業、押し付けられるのかぁぁぁぁ!!??



「ほらこれやるから」



 魔術師団長が手渡してきたのは、青い魔法石だ。・・・なにかな?これ。



「この中に色々と収納できるからな。これで持ち運びも楽だろ?」



 自慢げに言うが、私まだ了承してないからね?魔術師団長よ。



「私はこちらと・・・おや、石だけですか。ではこれを差し上げます」



 神官長は見るからに繊細な加工のされた万年筆を渡してきた。

 そして、首から下げていた華奢な金のネックレスを外し、私に渡してきた。



「これなら、その収納魔法石も付けられるでしょう?」



 うん、神官長、良い笑顔だね。凄く良い笑顔、なんだけど。



「・・・・この、一緒についている、神殿紋が刻印された金板は、外して頂けますか」

「・・・・おっと、これは失礼。うっかりつけたままにしていましたよ」



 ははは、と神官長が笑うので、私も乾いた笑いを返す。


 ちらっとみたけど、あれ『神官長の神殿紋』っぽかったぁぁぁ!!

 あんなん持ったら、神官長の後ろ盾ありですと宣伝しまくって、即神官の道まっしぐらじゃないかぁぁぁぁ!!


 神官の長のくせに、なんて悪どい事をするんだ!こんなか弱い乙女に向かってぇぇぇ!!



「じゃあ、こんなか、入れとくからな」



 ・・・はっ!そうだった!まだ私了承してないからね!!!



「あの、私では荷が「団長ーー!やっぱりここにいたんですねー!」・・・」



 私の抵抗を朗らかな声で断ち切られる。

 ぎっと睨みつけると、そこにはほんわかとした雰囲気を持つ、以前魔術師団長から身を呈して私を逃してくれた魔術師様が居た。

 その節はどうもありがとうございます。


 でも、それはそれ、これはこれだ。


 魔術師団長の側の、恨みの篭った視線を送る私を見て、その魔術師様の顔が少し引きつる。

 が、そこは大人。きちんと、神官長と私に挨拶をしてきた。


 ・・・・そうされたら、淑女としては挨拶を返すしかないじゃないか・・・。



「団長、用事終わったみたいですし、そろそろ仕事戻ってくださいよ」

「・・・おう、わかった。・・・嬢ちゃん、注意事項とかは中に書いてあるからな」



 そう言うと、魔術師団長はあの収納魔法石に自分の持っていた『ドラゴン観察記録』を入れて私に渡して去っていった。

 ・・・・・ん?



「神官長様ぁぁぁ!!いずこに、何処におられるのですかぁぁ!」

「ここですよ、アズィール」



 息を切らせた、見るからに優しそうな年配の神官様がこちらに来る。・・・この方も誓約させようとする神官長から結果的に逃してくれた神官様だ。

 その節はどうもありがとうございます。


 その神官様は、私を見てはっと顔を青くする。



「よ、よもやまたっ!か弱き少女に無体を!!」

「・・・・するわけがないでしょう。何を言っているんです?アズィールよ」



 いやいやいや、さっきも私に無体を強いようとしていたよ、この神官長は!!

 目で訴えたものの、その人の良さそうな神官様は、神官長の言葉にほっと安心したように顔をほころばせた。


 ・・・・うん、騙されてるよ!!その神官長、息をするようにこっちを騙そうとしてくるよ!!



「おお、そうでした。そろそろ訓辞の時間にございますぞ。神官長様」

「おや、もうそんな時間でしたか。・・・ではルルリーア嬢、よろしくおねがいしますよ?」



 そう言うと、神官長は万年筆と『ドラゴン生育日誌』を収納魔法石に入れて、去っていった。


 ・・・・・ん?????


 私の手の中には、収納魔法石と金の玉鎖が、残っている。




 ああああああああああ!!!

 結局、断れてないぃぃぃぃ!!わたしのばかぁぁぁ!!!




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