2話
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夏の一番暑い季節だというのに、涼しい風が入ってきて、とても気持ちのよい朝です。
お早うございます、ルルリーアです。
私のものではないベッドから降りて、私のものではない部屋からでる。
そう、ここは騎士塔の一角を急遽改造した、私の部屋(仮)なのだ。
重要なことなので、もう一度言おう。
わたし、部屋に、居る!!!
的確なアドバイスをくれたサラのお陰で、乙女の尊厳は守られました。
ありがとう、サラ様。本当にありがとう、サラ様。
サラの助言通り、餌を用意することにしました。
(驚いたことに、駄ドラは無臭だった)
そうして、色々と食材を用意して駄ドラの前に並べて、真っ先に駄ドラが食べたのは。
はちみつ、でした。
なんなの、アイツ。ドラゴンはクマなの??
いや、天眼竜様はワインだったから、好み・・・の問題と片付けていいの、かな?
そんなこんなで判明した駄ドラの好物、はちみつを鍛錬場に置くと、駄ドラはそこが自分の住処のようにくつろぎ始めた。
・・・・私に、着いてこられないようにした筈なんだけど、なんかこう、アイツの中で私とハチミツが同価値かと思うと、少しだけ腹立たしい。
が、お陰で私は漸く建物の中に入ることが出来ました。
・・・何故、部屋で寝るという普通の行為に、こんなにも労力を割かなくてはいけないのだろうか。
どうしてこうなったんでしょうかね?兄様。
私が何をしたと『してないと思ってるのか?』・・酷いぃぃぃ!!
窓の外の、抜けるような青空を見上げる。幻影の兄様は、今日も冷たいなぁ。
あ、本物の兄様も最近冷たいんだった。くすん。
「お早うございます、お嬢様」
「おはよう、マーニャ」
マーニャに仕度をしてもらいながら、激動の騎士塔生活初日を思い出す。
まずは案内された、この私の部屋(仮)だ。
案内してくれた騎士見習いの従騎士くん(12歳)曰く、鍛錬場から一番近いという理由だけで救護室の一つを潰して改造したのだそう。
なんとも、非常に力技だ。
・・・ちょっとこれ騎士様たちに、恨まれるやつじゃないですかぁぁぁ!!??
『おいおい、俺らは遠くの救護室使えってことかぁぁ?貴族のご令嬢サマはエラいもんだなぁぁぁ!??』とか言われちゃうやつだ!!!
そんな前情報を聞いた私は、戦々恐々としながら、元救護室、今私の部屋(仮)に足を踏み入れた。
のだが。
嫌な視線は一切なく、むしろとても歓迎された。両手を挙げて歓迎された。解せぬ。
いやそれ以前に、騎士様たちよ、なんでここに集まってるんだ。
女性騎士様も多いからむさ苦しくはないけど、十数人くらいの鍛えられた方々が集まると圧迫感が半端ない。
・・・ちょっとぉぉぉ!!誰よ!!
私の部屋(仮)に『歓迎・団長の嫁来る!!』って垂れ幕作って掛けたのはァァァ!!
くっ!!即座に引き剥がしたいが、背が足りぬ!!
でもなんとか引き剥がそうと足掻いていると、後ろで聞き慣れた笑い声が聞こえた。
振り返るとやはりの騎士団長だぁぁぁ!!
よし!騎士団長よ!笑ってないでコレを外すがいい!!
私がそれよりはもう少し丁寧な感じで頼むと、快く、だが私のことを笑いながら、その垂れ幕を剥がしてくれた。
のまでは良かったのだが、何故か丁寧に畳んで私に寄越した騎士団長。なんでだよ。
(何故か騎士様たちから拍手喝采が沸き起こった・・・理由は聞かないようにしよう)
い、いらないぃぃぃぃ!!これ、まったく、私いらなぃぃぃぃ!!
でももしかしたらここにいる誰かが作ってくれたのかもしれないし、捨てられないよコレ、どうしよう。
・・・・そうだ!後でそこにあるタンスのおくぅーの方に押し込んでおこう、そうしよう。
そうしていると、従騎士くん、ではなく周囲の騎士様たちが口々に私に話しかけてきた。
どうやら部屋の説明をしてくれるようだ。
その話を聞くと、ベッドとか家具とかの移動を、騎士様たちが率先してやってくれたらしい。
というよりも、たくさん参加しすぎて、あっという間に終わったそうだ。
嬉々として報告する騎士様達の後ろで、私を案内してくれた従騎士くんが遠い目をしていた。
なんか、すみません・・・。
取り敢えず、騎士様たちの説明を聞きながら、部屋を見学する。
救護室は元々広い一部屋だったので、間仕切りによってそれらしく設えられていた。
ベッドもそこそこの大きさで、意外と寝心地が良さそう。
本棚もあって、種類も充実している。
おお、家から持ってきた刺繍セットもある。
ちょっとしたお茶もできるよう、繊細な作りのテーブルセットもあるし。
・・・元救護室の無骨な壁に合ってないが。
風呂、トイレは別の部屋にあったし、マーニャ用の部屋も水場もある。
うん、なんか、まあ、いいか!!
・・・一時的、そう、一時的だもんね!!
ずっと住むわけじゃないもの!・・・陛下がいつまでか言ってなかったけども!!
・・・期間限定、だよね??
「お嬢様、朝食はどうされますか?」
マーニャの声で、初日の濃すぎる記憶から意識を戻す。
「・・・昨日と同じ場所で」
「はいっ!畏まりましたッ!!」
元気よく返事をするマーニャ。いつもはやる気のないのが特徴なのに。
まあ、理由はわかっているのだけどね・・・。
そうして身支度が終わり、食堂へ向かう。
・・・そう、騎士様魔術師様が利用する、食堂に、だ。
え?貴族のご令嬢が、食堂で朝食をとるの?ですって??
もちろん流石に、初日は自分の部屋(仮)で食べたよ?
でも、いつも家族の誰かしらと食べてたのが、いきなり一人だよ??
寂しい!!寂しすぎる!!!
だからと思い、次からは食堂に行くことにしたのだが。
目の前を楽しそうに移動するマーニャが、羨ましい。
騎士塔に移る私についてくるのを渋るマーニャを『もしかしたら騎士様か魔術師様との恋が芽生えるかも・・』という甘い誘いで引き込んだのだから、仕方ないんだけど・・・。
「おっ、今日も早いですね!『奇跡の少女』ルルリーアさん!マ、マーニャさん!」
「・・・・・・・・ドウモ、オハヨウゴザイマス」
「お早うございます!」
「今日も来たかぁ!『最後の希望』の嬢ちゃん」
「・・・・・・・・キョウモ、ヨロシクオネガイシマス」
「朝食は卵料理がオススメですよ。『団長の良心』ルルリーア嬢」
「・・・・・・・・ドウモ、アリガトウゴザイマス」
これですよ。
なんなのぉぉぉぉ!!!??
知らない間に、二つ名付けられすぎじゃないかぁぁぁぁ!!??私ィィィ!!!
しかも、身に覚えのないものばっかりなんですけどぉぉぉ!!??
「何にしましょうか?お嬢様」
「・・・・・卵料理で・・・・」
騎士様たちは皆、各々私に二つ名を付けている模様。
歓迎してくれるのは嬉しいけど、これはやめてほしいぃぃぃ!!
見てよ!食堂にいる魔術師様たちは、ドン引きしてるよ!!??
いや、最初から何故か遠巻きではあったが・・・。
・・・・まあ、二つ名なんて、聞き流しちゃえばいいのさ。
最初こそ、ムキになって反論していたが、騎士様たちにはまったく受け入れられなかった。
むしろ、なんだか喜ばれた。『活きがいい』とか『さすが』とか聞こえたけど、恐らく気の所為。
だって、私、伯爵令嬢で、淑女なのだから!!!
そう、私は淑女。こういうのは、サラッと流せちゃうのが淑女。
・・・よし、落ち着いてきた。
朝食を持ってきてくれたマーニャ。
おお!ふわふわの卵美味しそう!!
そして、満面の笑みで、私の前に置いて一言。
「お持ちしましたよ!『運の悪い』お嬢様!!」
・・・マーニャ!!!お前は別だぁぁぁ!!
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