1話
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ドウモ、ゴキゲンヨウ。
最近、王宮の門番さんと仲良くなりつつある、ルルリーアでございます。
騎士塔までの案内を待っている最中です。今逃げてもいいかな?
天眼竜様が駄ドラを私の元に置き去りにしたために、淑女の身に起こりえない『騎士塔に住む』という悲劇が起きてしまった。
またまた陛下冗談でしょーと思っていたが、本気だった。
本当に、本気だった。
私淑女ですよ?と思わず言ってしまったけれど、陛下からの返事は変わらなかった。
ほんとに、わたし、しゅくじょ、なんですよぉぉぉ!!
「またせたな、ルルリーア嬢」
・・・・騎士塔への案内に騎士団長が来て良いのか、暇なのか?
そんな私の疑問いっぱいの視線を、こともなく受け止めて騎士団長は応える。
「あいにくとドラゴンに近づけるやつがいなくてな。・・・あいつら後で追加鍛錬だな」
ですよねぇぇぇーー!!騎士様たちわかるよ!私だってそうしたいもん!!今からでもそうしたい!!
・・・ぼそっと騎士団長が言った最後の一言は聞かなかったことにしよう。
そう言いつつも、私をエスコートしてくれる騎士団長。
後ろの駄ドラを全く気にしてないよ!すごいな!騎士団長!!
「騎士塔への道のりは把握していると思うが、ドラゴンの通れる道を進むからな。・・・少し足場が悪いぞ」
「・・・・ありがとうございます」
ココ最近、会う人会う人、皆後ろの駄ドラを怖がっちゃうからな。
サラとかソラン君とかアイリーン様は、何故か今だに戦闘態勢というか駄ドラに敵意剥き出しだしな。
だから、こう、自然な態度でいてくれると、気が抜けてほっとする。
のんびりと、裏ルートらしき林の中を歩く。爽やかな風、頬に当たる木漏れ日。
絶好の散歩日和だ。
ああ、これで後ろに駄ドラもいなくて、これから騎士塔で暮らすことも無ければ、文句なしなのにっ!!!
「・・・そういえば、ルルリーア嬢は聞いているか?」
騎士団長にしては、奥歯に物が挟まったような言い方だな。なんだ??
「聞いている、とは??」
「・・・いや、聞いていなければいい」
なになに、気になるじゃん!なんだろう??
騎士塔での生活のことかな??
「火傷にはアエロの果肉が、よく効くようだ」
「は?」
「本来なら流水で冷やすほうがいいが、出来ない際はそうするといい」
「はぁ・・??」
いきなり何なんだ?今私はいかなる場所にも火傷なぞ負ってないぞ??
それから、騎士塔に着くまで、騎士団長は謎の応急処置について、話し続けた。
え??本当に、なんなの???
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
初夏の爽やかな風がとても気持ちいです。
騎士団長からのよくわからない忠告を貰い、案内された騎士塔の前で、放心状態のルルリーアです。
「キュルゥ?」
そんな私の後ろにいる諸悪の根源、こと駄ドラが覗き込んでくる。
・・・次の瞬間、駄ドラ帰ったりしないかなー。
そしたらこの騎士塔で生活するなんて、しなくていいんだけどなー。
我が家の侍女マーニャを待つ間、ほんのちょっぴり現実逃避する。
(ちなみにマーニャは駄ドラに近づきたくないので先に騎士塔へ来ていた薄情者だ)
改めて思う。騎士塔で生活することは決定事項、なんだよね・・・。
・・・・ホント、なんでなのぉぉぉ!!??
だって、ドラゴンが居るとしても、もっと他にあるじゃないかぁぁぁ!!
よりによって、騎士塔なんて、騎士塔なんて!!どうしてなの陛下ぁぁぁ!!
我が家では、皆の協力のお陰で、駄ドラの視界に入りながらお風呂やなにやらを辛うじて出来たが、此処では違う。
周りには騎士様がたくさんいる。
そう、女性騎士様もいるけれど、圧倒的に男性騎士様のほうが多い。
私、どう、生活すればいいのぉぉぉぉ!!
「おはよう、リーア。今日からよね?此処で生活するの」
・・・この声は、我が心の友、サラだぁぁぁぁ!!
振り向くと、外交官服を身に着けたサラが、こっちに向かってに歩いてきていた。
「助けてぇぇぇ!!サラ様ぁぁぁ!!」
サラに向かって両手を広げて突進する。が軽やかにサラに避けられた。
・・・避けられた・・・。くすん。
「随分切羽詰まっているようね?リーア」
くすくすと笑うサラ。
わかってるでしょぉぉぉ!!サラ様ぁぁぁ!!今の私の危機的状況がぁぁぁ!!
「問題は後ろのドラゴンね」
サラがすっと目を細めると、駄ドラが震え始めた。流石、古の邪悪なるダークドラゴン、サラ様。
・・・そして、駄ドラよ。お前、なんていうか、ほんとにドラゴン??
「そうなのよう!!どうしたらいいの!?やっぱりドラ島に返すしか!!」
「それは無理ね」
「何故にぃぃぃぃ!!??」
悲痛な私の叫びを聞き流して、サラは駄ドラの額を指差す。
ん?何かあるの??
・・・・おんやぁ??何か・・見覚えの・・ある・・模様、が・・・。
信じたくない私と目が合うと、古の邪悪なるダークドラゴンが盗人が当に今金塊を手に掛けた盗人を見るが如く、サラはにやりと笑った。
「どうやら本当に契約済みのようね」
「い、いやだぁぁぁぁ!!えっちょっこれ龍紋だぁぁぁ!!気付かなかったぁぁぁ!!」
いや待てよ?もしかしたら駄ドラに龍紋が移っただけかもしれない!!
そっと左手を確認すると・・・・いやだぁぁぁぁ!!まだ、あるぅぅぅぅ!!
なんでだ!邪竜復活は終わったんだから、これも消えててよぅぅぅぅ!!
「・・・龍紋がまだ残っていることに対しては、いくつかの仮説は立てたけれど、まだ調査中よ」
「・・・わかったら、オシエテクダサイ・・。サラサマ・・・」
ああ、やっぱり駄ドラをドラ島に帰せないのか・・・。
なんとなくそんな気はしてましたよ・・・。天眼竜様が契約とか言ってたもんね・・・。
いやいや!それは横に置いておいて!!
「サラ!!どうしよう!今着替えとかお風呂とか外でしか出来ないんだけど!!」
「・・・・報告は聞いてたけれど。よく生活できてたわね・・・リーア」
呆れ顔で言われてしまったが、ここは乙女としての死活問題。
サラ様ぁぁぁ!!どうか私に知恵を授け給えぇぇぇ!!
「そうね・・・。ドラゴンに効くかはわからないけれど、動物は自身の匂いをつけたり餌を置いたりすると、自分の住処だと認識する、という話を聞いたことがあるわ」
「そ、それだァァァァ!!!ありがとう!サラ!!」
感激する私に、サラは何かの包みを渡してきた。
ん?なにかな???
「なんだろ・・。おお!!これは!!」
今評判の、夏用手袋じゃないか!!
確か雲グモの糸を使ってて、軽くて丈夫で日焼け対策にはバッチリ!しかも冷感作用もあるのだ!!
・・・ん?でも今年夏あんまり暑くないはずだけど???
「必要ないことを祈るけど、あげるわ。まあ、引越し祝いよ」
「わーい!!ありがとう!!サラ!!」
まあいいか!!夏だしね!
満面の笑顔で御礼を言うと、サラも古の邪悪なるダークドラゴンの笑顔で返してきた。
だから、それ、怖いってェェェ!!!
でも、サラのお陰で希望が出てきたよ!!
よし!気を取り直して、まずは駄ドラの餌探しだ!!
私の平和な生活の為に!!乙女の名誉の為に!!!
・・・・あれ?駄ドラ、なにか食べてたっけ??
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




