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【閑話】どうでもいいので魔術師は達観する

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「団長・・・。そろそろ話しかけては如何です?」



 騎士鍛錬場の近くの柱に潜む、自分の上司に声を掛ける。


 もうかれこれ、2時間は経っているんだけどなー。

 そろそろ、仕事して欲しいなー。



「ばっ、ばかやろう!そ、そ、そんなおいそれと、声かけらんねぇよ!!」



 普段の強気な団長が、顔を真赤にして俺に怒鳴る。


 はいはい、わかったから、まだ心の準備の時間が欲しいってことね。

 ・・・まったく、好き過ぎて話しかけられないって、どこの純情少年だよ。


 一応、魔術師団の長なんだけどなー。今は全然見えないなー。



「・・・そうか、美しい身体全体で、というよりも、あの綺麗な鱗の一枚一枚が、見事に調和し構成することで、魔法干渉を防御して・・・」



 ブツブツとドラゴン観察を呟き始める、我が国の誇る魔術師、アレイ・ベザレル。

 ドラゴンへの賛辞は省いて、その考察のみ書き留める俺、通称『団長のドラゴン係』。


 団長のドラゴンへの熱意が暴走した時に、監視するのが俺の仕事・・・の一つ。



 団長は、俺と同年代なのにいくつも新たな複合魔法を発見したりしていて、本当に素晴らしい魔術師だし、普段は尊敬もしてるんだけど。


 今は、なんか、尊敬出来ない、というかなんかやだ。


 そんな身を屈めて密かに見ないで、もうちょっと堂々とすればいいのに。

 ・・・ああ、そうすると憧れのドラゴンにみつかっちゃうからか。うん、これもなんかやだ。


 もう、ほんとぉぉに、コレさえなければ、団長モテるだろうになー。


 目の前の、見事な赤金色の髪の、野性的な美貌を持つ彼を、醒めた目で見る俺。


 養子がいるくせに、今だに独身なのは、ドラゴンマニア過ぎるせいだ。

 ・・・・俺に、その美貌の一部をくれれば、もっと有効に活用するのに。こういうのを、『宝の持ち腐れ』っていうんだよ。



 それにしても、ドラゴンに夢中な団長を見守るこの位置、誰か代わってくれないかなー。


 良い笑顔で俺に『団長のドラゴン係』を押し付けた副団長、並びに同僚たちを思い出す。

 うん、誰も代わってくれそうにないな!・・・あれはまさに血で血を洗うような気持ちで始まった、熾烈な戦いだったもんなー。

 ・・・・ドラゴン手当とか、ないかなー。


 あっ、でも給料増えても、趣味ないし、彼女もいないから、俺使う機会ないんだった・・・・。



 寂しい我が身を思い出してヘコむ。



 ・・・うん、よし、現実逃避しよう。

 今団長は、ドラゴンを褒め称えてるところだから、聞き流して問題ないからね。



 団長が熱心に見ている、鍛錬場に目をやる。


 ドラゴンは・・まあ置いておいて、そこには、あの少女が居た。



「だーかーらー!お前のいる場所は、ここじゃないのよ!!」

「キュウ?」



 何故か、ドラゴンを説得しようとしている。

 ・・・うん!新しい視点だ!!流石、『竜騎士の花嫁』にして『救国の聖女』だね!


 少し前に、いきなり魔術師塔に訪ねてきて、自分からドラゴンの話を団長にするなんて、自殺こう・・・おかしな少女だと思ってたけど。

 やっぱり、二つ名の付く人は違うねぇー。


 そうそう!団長も騎士団長とお揃いの、『炎の魔術師』とかいう恥ずかしい二つ名、持ってるもんねー。



 おっと噂をすれば、騎士団長だ。

 ・・・そう言えば、あの二人、婚約関係なんだっけな。『竜騎士の花嫁』だし。


 あれ?でも最近、彼女ソランの部屋によく来てるみたいだし・・・。

 いやいや、ソランはアイリーン嬢一筋のはずだよね?


 俺は無害そうな少女の顔を見る。・・・女って恐ろしい。


 そんな恐怖に震えていると、横から歯ぎしりの音が聞こえる。

 これは、騎士団長に対して、『同じ寂しい独身者だったのに裏切り者め!』じゃなくて『あんな堂々とドラゴンに近づきやがって羨ましい!』の歯ぎしりだ。


 まったく、同僚である騎士団長にも、自分の息子にも、浮いた話があるっていうのに、ドラゴンに興味持ちすぎじゃないかな、団長?

 生粋の魔術師の家系のはずなのに、その辺は頑張らなくていいのかなー?

 まあ、俺が心配することじゃないけど。



 そうのんびりと構えていたら。



 ヤバイのが、来た。



 離れているはずなのに、少年にしか見えないソレの、その魔力の密度に、圧力に、思わず膝をつく。

 ・・・あれが、例のドラゴンか。


 確認次第、速やかに騎士団長及び魔術師団長に報告、って両方共ココに居るじゃないかー!

 現れた時に両方共居る時は、どうすればいいんだ?


 と、俺が混乱している間に、騎士団長が少年を弾き飛ばして何処かへ消えていった。



 ・・・・とりあえず、ほっとする。


 団長は?と、様子を見ると、案の定、両手で顔を覆っている。



 うん、わかってた。


 邪竜召喚の時は、戦闘中、魔力が荒れててきちんと観察できなくて落ち込んでたんですよねー。

 ・・・戻ってきた時、団長上の空だったから、仕事は捗ったけれども。


 それなのに、この間来た時、あの『悪夢の双璧』の左元帥閣下である母上から逃げるのに必死で、出遅れちゃって悔しかったんですよねー。


 それが、今、目の前に現れて、感動している、と。



 もう、生暖かい目で、見るしか出来ないよ。団長。



 この状態は暫く続くから、今のうちに執務室に連れて行こう。そうしよう。

 長いドラゴン観察時間の所為で、仕事溜まってるからなー。



「団長ー。行きますよー」



 一応上司なので、一言声を掛けてから引きずる。

 だが、返事はない。それもわかってた。




 さあて、団長!溜まった仕事を片付けましょうねー!!




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


※この後の話を大幅に変更したので、次回更新時まで暫しお待ちいただけますと幸いです。

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