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1話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ごきげんよう。ルルリーア・タルボット伯爵令嬢でございます。

 今日も、何故か王宮へ参上しております。



 左を向いても右を向いてもどこにでもいるような伯爵令嬢が、場違いにも王宮にいるのかというと、それにはふかぁーーい事情があるのです。


 そう、あれは、王太子殿下(現在保留)の婚約破棄宣言から始まりました・・・。


 卒業パーティーでいきなり始まった、婚約破棄宣言という茶番。


 他人事のように聞いていたら、殿下の婚約者であるアイリーン・ディラヴェル公爵令嬢が、殿下ご執心のマリア・ルージュ男爵令嬢を突き落とした、その目撃者が私、とういうことで、この茶番に引っ張り込まれた。


 もちろんそんな事件見ていなかったから、正直に言って(も、もちろんですよ??)その場は収まった。


 その後がいけない。


 権力をチラチラちらつかせた男どもが、アイリーン様に侍りながら友情を強要してきたことはどうでもいい。


 その後王宮へ呼ばれ、何を気に入ったのか、陛下から『国王専属愚痴聞き係』といういまだかつて無い名誉(笑)あるお役目を賜ったのです・・・。


 ええ、そうです、陛下から、直々に・・・・。



「どうしてこうなったのかしらね。お兄様」



 返事はない。あ、私一人でした、さみしい。

 幻影のお兄様は『身から出た錆』などと酷いことを言うので、きっとあれは兄ではないそうに違いない。


 トボトボと一人歩く私。ここは王家の秘密通路らしく、侍女の同行は許されませんでした。

 前回はあった騎士団長のエスコートもない。


 彼曰く、「そんなに暇じゃない」とのこと。私の扱い酷くないか???


 ま、此処は秘密通路なのだから不審者などいないだろうし、道も覚えてしまったし(何故教えたし)、まあ良いかと思ってました。


 思ってましたよ。


 隠し部屋に引っ張り込まれるまではねぇぇぇ!!!




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「ルルリーア・タルボット嬢、だね?」



 薄暗い部屋の中では、昨日会った人間の顔もわからんのかそうですか。



「・・・・何か御用ですか、王弟殿下」



 そうでしたよーーー!王家にはこの人いましたよーー!

 王家の秘密通路、気を抜いたらあかんかったーーー!!



「そうだね、まずは質問。どうして君はここにいるんだい?」



 そう言うと、王弟殿下は、私を壁に押し付けると、両側に腕をおおおお!

 ち、ちかーーーい!!離れてくれぇぇぇ!その髪毟りたくなるぅぅ!!



「お答えする義務はございません」



 毛を毟りたい衝動を、扇子を握りしめることでなんとか逃がす。

 え?我慢しなくてもいいんじゃ???いやいかん、このひとの毛を毟ったら社交界のお姉様方に何されるかっ!!



「へぇ、いい度胸だね」



 目を細める王弟殿下。顔は柔らかに微笑んでいるものの、目の奥が笑ってないよ怖いよ。

 麗しい顔かもしれんが、何故これにときめきを感じるんだお姉様方。


 明後日の方向に目を向けていたら、顎をクイッとやられたぁぁぁ!!!!



「そんな生意気な口を利くのは、この口かな?」



 ゆ、指がくちにぃいぃぃっぃ!!!



 スッッパーーーーーーーン



「え」



 若干マヌケな声を出す王弟殿下。

 思わず扇子で手を叩いてしまったが、これは正当防衛だ!冤罪だ!!



「失礼致しますぅぅぅぅ!!」



 今までの人生で、一番速く走れた気がする。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「じゃからの、唯一の王太子を廃嫡して臣下としたのに、あやつらときたら手緩いなどとゆうてきてな・・・」



 40過ぎたおじ・・・成人男性が、クッションを腕に抱えて拗ねてもかわいくないですよ陛下。


 あの後、猛然と指定された部屋に逃げ込むと、待ってましたと言わんばかりに陛下が現れた。

 それからずっっっっっとこの調子である。


 正直に言っていいだろうか、鬱陶しいことこの上ない。

 というか公式発表前に聞いちゃったよ、廃嫡か殿下、神よ彼を憐れみ給え。



「はぁ、ソレは酷いですねー」

「じゃろう!!!わし、王なのに・・・・・」



 よよよ、とクッションに顔を埋める陛下。威厳どうした仕事しろ。


 陛下が来る少し前に、妃殿下が現れ、『ふっ』と鼻で笑って去っていった。

 安心してくれ、こんな情けない・・・じゃなかった、権力に興味ないので、女同士の張り合いはしないからねっ。



「まぁ、後継はもう見つけておるからいいんじゃがな」



 いいんかい。さっきまでの涙はどうした陛下。

 王家の闇を垣間見た気がするぞ、オウチカエリタイ。


 はぁぁぁぁ、と深い溜め息を吐く陛下、いい加減クッション離した方がいいぞ。



「周りはアイリーンの信奉者がウヨウヨしておっての。迂闊に愚痴も言えん・・・」



 陛下曰く、妃殿下もアイリーン様の毒牙にかかっているとのこと。女性に毒牙って・・。



「はぁ、ソレは大変ですわねー」

「そうなんじゃよ、わかってくれるか!ルルリーア嬢!」



 明らかに適当に返事をしたのだが、クッションを抱きしめながら顔を輝かせる陛下。

 そ、そんなに相手が居なかったのか。



「いやあ、今まではあのライオネルのやつしか話し相手がおらんかったんじゃが、無表情すぎてな・・・」



 騎士団長ライオネル・アレスタントは取り巻きじゃなかったのか????

 まあ、あの鉄面皮じゃ、相談してもなんかこう晴れないよねー、反応が欲しいのよ反応が。



「というわけでこれからも宜しくの。ルルリーア嬢」

「え、嫌なんですけど」



 思わず断ってしまった。途端に悲壮な顔になる陛下。



「そう言わずに!なんじゃったら、また、申請とか受理するからっ!」

「いや、あんまり優遇されると、それはそれで周りが煩いので」



 またもあっさり断ると、ぐぬぬと唸る陛下。



「金か、金が良いのか!?それとも宝石か!くっ、この欲張りめ!国宝でもなんでももっていくがよいっ!」

「人を悪女みたいに言わないで下さい。国宝とか一番いらないです」



 そんなもんもらってどうしろと?売れないし見せられんし、家の中で眺めていろと???



「それに、此処に来る途中で、王弟殿下に難癖つけられそうになったんですよ。身の安全のためにも辞退したいのですが」

「ほうほう!!!やつになっ!そうかそうか!」



 なんでそんなに嬉しそうなんですか陛下。ちょっと殺意が湧きます。



「今日一日、やつからは何も言われんかったと思うていたら、そうかそうか。そっちにいったか!」



 それどういう意味ですか陛下ぁぁぁぁ!!まさかの人身御供かぁぁ!!

 思わず殺意を込めて睨んだが、満面の笑顔で返された。



「あやつも紳士の端くれ。淑女にそう無体はせん・・はずじゃ。なに、帰りはライオネルをつけるから安心せい」



 全然安心できないんですけどぉぉぉ!???



 それからどんなに断っても、陛下は解任してくれませんでした。ぐすん。


 でもそのかわり我が領地収入1ヶ月分相当の宝石を頂きました。・・・・冬の備蓄費に回すか。




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