6話
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気を取り直して、敵に攻撃を開始しようと思って、魔法石の入った袋を漁る。
・・・ちっ、もう魔法石が無くなってる。
結構に投げたのに、一つもネズミ男に当たらなかった。解せぬ。
だがだが、心配無用。
人外たちのお陰で、周りは手頃な石だらけだ。うむ、まったくもって問題ない。
「や、やめろぉぉ!!おわっ!あぶない石がぁぁ!!」」
「くっ!ちょこまかと!!じっとしなさい!!当たらないでしょうがぁぁぁぁ!!」
中々目の前で逃げるネズミ男に、当たらない。
いや、たまにかすってはいるが、やつを昏倒させるまでには至らない。
あぁ、自分の、投擲能力の無さが恨めしい!!
ん?いやそうか!!当たらないなら、投げる石を大きくすればいいじゃない!
私、天才かっ!!!
そうと決まれば、その素晴らしい考え実行するのみ。
ネズミ男を見失わないようにしつつも、良さそうな石を探す私。
おっと??拳大の丁度投げやすそうな、石があったそ!!
その素晴らしい石を拾う。と、ネズミ男はその大きさに顔を青くする。
くっくっくっ!これでネズミ男など、一撃よ!!
私はその石を、振りかぶって、投げたァァァァ!
「っい!!」
え?
声のした方を見ると、頭を抑えて呻いている緑野郎と、目が合う。
・・・・・あっ、えっ、当たったの?あいつ確か私の視界には居なかったはずなんだけど。
・・・・・・・・・・・・。
い、いよぉぉし!!け、計算どおりぃぃぃ!!
石だけど、一発に変わりない!やったよ!私!!
喜ぶ私に、青筋を立てた緑野郎が、こっちに来るぅぅぅぅ!!
い、いやぁぁぁぁ!!
「行かせるわけ、ねぇだろうがよぉ!!!」
「ちっ」
緑野郎の周囲に魔法陣を展開する魔術師団長。それを避けるために、緑野郎は私から離れる。
あ、ありがとうございます!!魔術師団長!!
貴重な逃げる隙に、私は全力で走った。
ふう、此処までくれば平気だろう。周りに人外たちも居ないし。
さあて!ネズミ男を探さねば!!
そう、決意を固めて、私は一歩踏み出す。
ん?なんだか、地面が光って・・・??
「っ!おい!!嬢ちゃん!!」
あ。
しょ、召喚陣の中に、はいっちゃったぁぁぁぁ!!!いやぁぁ!!
光ってるけど、これ、は、発動しちゃったのこれぇぇぇ!??
「くはははは!!馬鹿だな!この石投げ女めぇ!」
さっきまでの情けない態度から一変、勝ち誇ったように言うネズミ男。
腹立たしいけど、これは否定できないぃぃぃ!!私の馬鹿ぁぁぁ!
その様子を見て、騎士団長が堕ちた英雄を陣外にはじき出そうと動こうとした。
が、召喚陣内で上から押さえつけられるような圧力が生じる。
騎士団長も堕ちた英雄も召喚陣内。両者とも膝をついてしまう。
そして、魔術師団長も緑野郎も、私も、陣内にいた、全員がだ。
な、なにこれ!?立てないっ!
「さぁ!!時は満ちた!邪竜よ、復活したまえ!!!」
一人だけ召喚陣外にいたネズミ男のその一言に、召喚陣が一際輝きを放つ。
----そう、私は少しだけ、勘違いしていた。
帝国で封印を解かれた『龍』は、威圧感はあったものの、こちらを害さなかったから、今回もそうなるんじゃないかと。
そんな甘い考えは、召喚陣から現れようとする存在を目にして、吹き飛んだ。
それは、恐ろしくて悍ましくて厭わしくて忌まわしくて穢らわしくて。
まさに『邪なる竜』、そのものだった。
《------------っ!!!!!》
声なき咆哮を浴びて、体中の力が抜ける。
それに相対するは、明確な死の恐怖。
絶望する私の前に、死を突きつけられた私の前に、凶悪にして醜悪なる顎が、現れた。
-----ああ、私は、なんてことを
すとん。
その、巨大な邪竜の顎に似つかわしくない、か細い藁色の少年が、降り立った。
次の瞬間、彼の右手に、『邪なる竜』が吸い込まれて消えた。
・・・・・・・・・・え?????き、えた???
ぽかんと呆けていると、その少年は、私ににこりと笑いかけて消えた。
・・・・・うん、消えた。
えっ、あれって、天眼竜、様????
・・・・・・・・・・・え??今の、え??どういうこと???
先程まで死闘を繰り返していた彼らは、この事態に固まっているようだ。
私は混乱しながらも、そんな彼らに答えを求めて、視線を転じる。
だ、誰か教えてぇぇぇ!!
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
しかし現実は無情だった。
迷える子羊である私に、『お前・・・』みたいな、濡れ衣を着せるかのような疑惑の視線が、敵味方問わず集まる。
・・・おおっと、これは既視感があるぞぉぉ!!??
い、いまのはぁぁぁ!!!わたしも、わからないからぁぁぁ!!!
腕で大きくバツ印を作るが、うん!誰も納得してくれてないね!!!
せめて騎士団長と魔術師団長は、私の事、信じてよぉぉぉ!!
そんな少し弛緩した空気から、いち早く脱したのは騎士団長だった。
「っ!」
騎士団長は堕ちた英雄に一瞬で詰め寄ると、その右腕を切り飛ばした。が、次の瞬間、すごい勢いで壁に激突する。
・・・どうやら、堕ちた英雄に蹴られたらしい。
凄惨な笑みを浮かべつつも、ぐらりとよろめいた堕ちた英雄を、魔術師団長から離れあの緑野郎が支える。
そんな中、ネズミ男の姿は、どこにもない。
あ、あいつ、逃げたなぁぁぁ!!
騎士団長と魔術師団長が、私の前に来る。その装備はボロボロで、激戦であったことを物語っている。
・・・あの、騎士団長がぶつかった壁、穴空いてるんだけど、そこは突っ込まなくていいのかな?
堕ちた英雄と緑野郎と、相対する。
あれだけ人が居たのに、もう立っているのは四人だけだ。
・・・・申し訳ないが、私は座っている。だから、数にいれてない。
またもや闘いが始まりそうな、真剣な空気だけど、ちょっとだけ、言っていいかな?
わたし、まだ、突然の天眼竜様のせいで、混乱してるよ!!???
全員何も言わないけど、あれ何だったの?死の覚悟しちゃった私は、どうすればいいのぉぉぉ!!??
そんな私の心の叫びに、呼応したわけじゃないだろうけど、洞窟全体が揺れ始めた。
ぎゃぁあああ!!生き埋めになるぅぅぅ!!
「崩れるぞっ!早く逃げねぇと・・おいライっ!」
「・・・・っ!」
再度、落ちた英雄へ向かおうとする騎士団長の肩を、魔術師団長が抑える。
「嬢ちゃんが居るんだ!ここは抑えろっ!」
「・・・理解った」
まだ騎士団長を見つめる落ちた英雄を一瞥し、騎士団長は軽く目を閉じた。
目を開けたときには、戦っていたときの、あの狂気は既に無く、いつもの騎士団長に戻っていた。
その騎士団長は無言で、私を肩にひょいと担ぐ。
そうして、両団長が壁を壊して空いた穴へ、急いで向かう私達。
担がれた私は、堕ちた英雄を支えたままその場を動かない緑野郎と、目が合う。
天井からは、次々と大岩が落ちてくる。
それを気にする様子もなく、今まで見せていた軽薄な様子もなく、ただこちらを見ている。
そんな緑野郎を、私もただ見返す。
----視界が岩で埋め尽くされる、その瞬間まで。
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騎士団長に担がれながら、これでよかったのかなと『仲間』に問いかける。
・・・もちろん、返事は返ってこない。だから、自分で答えを返す。
----私は、力の限りを尽くしたよ。
肩に担がれて、圧迫された胃が悲鳴を上げているが、それに反応する元気もない。
ああ、早く帰って皆に会いたい。
そしてもう何も考えずに眠りたい。
・・・・早く、お家に、帰りたいな。
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※しんみりした後だけど、構わず裏設定いれちゃいますよ!!
※裏設定
・主人公が持っていた光る魔法石さん
魔術師団長に位置を知らせるための魔法石。普通のものだと、相手に気づかれちゃうので、単なる明かり用の魔法石、と思わせつつ、独自の光の波長を出す一品。それだけだと弱くて探せないですが、大方の場所はわかっていたので、両団長は近くでひっそり待機。手に持つだけで発動します。便利ー!
・魔術師団長
洞窟に入ったら、『龍』と『竜』の壁画があったのでテンション上がったが、状況を見て自重。他の奴らが魔法攻撃で壁に傷をつけようとすれば過剰攻撃。騎士団長は壁を抉るわでキレそうになってた。が、倒したら壁画をえぐり取って持ち帰ろうと、自分を宥めてたのに、落盤して全部潰れてショックで立ち直れなそう・・・。←イマココ
・騎士団長
・・・・・・・・・・・・・くそ。←イマココ
(騎士団長がモヤモヤしてるので、ここで披露。装備は最強の海魔物ヒュドラの皮を魔法で強化した鎧。万全の状態で駆けつけました。が、最後に蹴られて肋骨折りました。)
・主人公
今回ものすごく疲れた・・もうこれ・・つかれた・・・しばらくオウチヒキコモリタイ・・・。←イマココ




