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6話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 気を取り直して、敵に攻撃を開始しようと思って、魔法石の入った袋を漁る。

 ・・・ちっ、もう魔法石が無くなってる。

 結構に投げたのに、一つもネズミ男に当たらなかった。解せぬ。


 だがだが、心配無用。

 人外たちのお陰で、周りは手頃な石だらけだ。うむ、まったくもって問題ない。



「や、やめろぉぉ!!おわっ!あぶない石がぁぁ!!」」

「くっ!ちょこまかと!!じっとしなさい!!当たらないでしょうがぁぁぁぁ!!」



 中々目の前で逃げるネズミ男に、当たらない。

 いや、たまにかすってはいるが、やつを昏倒させるまでには至らない。


 あぁ、自分の、投擲能力の無さが恨めしい!!



 ん?いやそうか!!当たらないなら、投げる石を大きくすればいいじゃない!

 私、天才かっ!!!


 そうと決まれば、その素晴らしい考え実行するのみ。

 ネズミ男を見失わないようにしつつも、良さそうな石を探す私。


 おっと??拳大の丁度投げやすそうな、石があったそ!!

 その素晴らしい石を拾う。と、ネズミ男はその大きさに顔を青くする。


 くっくっくっ!これでネズミ男など、一撃よ!!


 私はその石を、振りかぶって、投げたァァァァ!



 「っい!!」



 え?

 

 声のした方を見ると、頭を抑えて呻いている緑野郎と、目が合う。

 ・・・・・あっ、えっ、当たったの?あいつ確か私の視界には居なかったはずなんだけど。


 ・・・・・・・・・・・・。


 い、いよぉぉし!!け、計算どおりぃぃぃ!!

 石だけど、一発に変わりない!やったよ!私!!


 喜ぶ私に、青筋を立てた緑野郎が、こっちに来るぅぅぅぅ!!

 い、いやぁぁぁぁ!!


 

「行かせるわけ、ねぇだろうがよぉ!!!」

「ちっ」



 緑野郎の周囲に魔法陣を展開する魔術師団長。それを避けるために、緑野郎は私から離れる。

 あ、ありがとうございます!!魔術師団長!!


 貴重な逃げる隙に、私は全力で走った。

 ふう、此処までくれば平気だろう。周りに人外たちも居ないし。


 さあて!ネズミ男を探さねば!!

 そう、決意を固めて、私は一歩踏み出す。


 ん?なんだか、地面が光って・・・??



「っ!おい!!嬢ちゃん!!」



 あ。


 しょ、召喚陣の中に、はいっちゃったぁぁぁぁ!!!いやぁぁ!!

 光ってるけど、これ、は、発動しちゃったのこれぇぇぇ!??



「くはははは!!馬鹿だな!この石投げ女めぇ!」



 さっきまでの情けない態度から一変、勝ち誇ったように言うネズミ男。

 腹立たしいけど、これは否定できないぃぃぃ!!私の馬鹿ぁぁぁ!


 その様子を見て、騎士団長が堕ちた英雄を陣外にはじき出そうと動こうとした。

 が、召喚陣内で上から押さえつけられるような圧力が生じる。


 騎士団長も堕ちた英雄も召喚陣内。両者とも膝をついてしまう。


 そして、魔術師団長も緑野郎も、私も、陣内にいた、全員がだ。

 な、なにこれ!?立てないっ!



「さぁ!!時は満ちた!邪竜よ、復活したまえ!!!」



 一人だけ召喚陣外にいたネズミ男のその一言に、召喚陣が一際輝きを放つ。



 ----そう、私は少しだけ、勘違いしていた。



 帝国で封印を解かれた『龍』は、威圧感はあったものの、こちらを害さなかったから、今回もそうなるんじゃないかと。

 そんな甘い考えは、召喚陣から現れようとする存在を目にして、吹き飛んだ。


 それは、恐ろしくて悍ましくて厭わしくて忌まわしくて穢らわしくて。



 まさに『邪なる竜』、そのものだった。



 《------------っ!!!!!》



 声なき咆哮を浴びて、体中の力が抜ける。

 それに相対するは、明確な死の恐怖。



 絶望する私の前に、死を突きつけられた私の前に、凶悪にして醜悪なる顎が、現れた。



 -----ああ、私は、なんてことを




 すとん。



 その、巨大な邪竜の顎に似つかわしくない、か細い藁色の少年が、降り立った。

 次の瞬間、彼の右手に、『邪なる竜』が吸い込まれて消えた。




 ・・・・・・・・・・え?????き、えた???



 ぽかんと呆けていると、その少年は、私ににこりと笑いかけて消えた。



 ・・・・・うん、消えた。



 えっ、あれって、天眼竜、様????

 ・・・・・・・・・・・え??今の、え??どういうこと???


 先程まで死闘を繰り返していた彼らは、この事態に固まっているようだ。

 私は混乱しながらも、そんな彼らに答えを求めて、視線を転じる。


 だ、誰か教えてぇぇぇ!!



「「「「「・・・・・・・・・」」」」」



 しかし現実は無情だった。

 迷える子羊である私に、『お前・・・』みたいな、濡れ衣を着せるかのような疑惑の視線が、敵味方問わず集まる。

 ・・・おおっと、これは既視感があるぞぉぉ!!??


 い、いまのはぁぁぁ!!!わたしも、わからないからぁぁぁ!!!



 腕で大きくバツ印を作るが、うん!誰も納得してくれてないね!!!

 せめて騎士団長と魔術師団長は、私の事、信じてよぉぉぉ!!


 そんな少し弛緩した空気から、いち早く脱したのは騎士団長だった。



「っ!」



 騎士団長は堕ちた英雄に一瞬で詰め寄ると、その右腕を切り飛ばした。が、次の瞬間、すごい勢いで壁に激突する。

 ・・・どうやら、堕ちた英雄に蹴られたらしい。


 凄惨な笑みを浮かべつつも、ぐらりとよろめいた堕ちた英雄を、魔術師団長から離れあの緑野郎が支える。

 そんな中、ネズミ男の姿は、どこにもない。

 あ、あいつ、逃げたなぁぁぁ!!



 騎士団長と魔術師団長が、私の前に来る。その装備はボロボロで、激戦であったことを物語っている。

 ・・・あの、騎士団長がぶつかった壁、穴空いてるんだけど、そこは突っ込まなくていいのかな?



 堕ちた英雄と緑野郎と、相対する。


 あれだけ人が居たのに、もう立っているのは四人だけだ。

 ・・・・申し訳ないが、私は座っている。だから、数にいれてない。



 またもや闘いが始まりそうな、真剣な空気だけど、ちょっとだけ、言っていいかな?



 わたし、まだ、突然の天眼竜様のせいで、混乱してるよ!!???

 全員何も言わないけど、あれ何だったの?死の覚悟しちゃった私は、どうすればいいのぉぉぉ!!??



 そんな私の心の叫びに、呼応したわけじゃないだろうけど、洞窟全体が揺れ始めた。

 ぎゃぁあああ!!生き埋めになるぅぅぅ!!



「崩れるぞっ!早く逃げねぇと・・おいライっ!」

「・・・・っ!」



 再度、落ちた英雄へ向かおうとする騎士団長の肩を、魔術師団長が抑える。



「嬢ちゃんが居るんだ!ここは抑えろっ!」

「・・・理解った」



 まだ騎士団長を見つめる落ちた英雄を一瞥し、騎士団長は軽く目を閉じた。

 目を開けたときには、戦っていたときの、あの狂気は既に無く、いつもの騎士団長に戻っていた。


 その騎士団長は無言で、私を肩にひょいと担ぐ。

 そうして、両団長が壁を壊して空いた穴へ、急いで向かう私達。



 担がれた私は、堕ちた英雄を支えたままその場を動かない緑野郎と、目が合う。



 天井からは、次々と大岩が落ちてくる。

 それを気にする様子もなく、今まで見せていた軽薄な様子もなく、ただこちらを見ている。


 そんな緑野郎を、私もただ見返す。



 ----視界が岩で埋め尽くされる、その瞬間まで。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





 騎士団長に担がれながら、これでよかったのかなと『仲間』に問いかける。

 ・・・もちろん、返事は返ってこない。だから、自分で答えを返す。



 ----私は、力の限りを尽くしたよ。



 肩に担がれて、圧迫された胃が悲鳴を上げているが、それに反応する元気もない。


 ああ、早く帰って皆に会いたい。

 そしてもう何も考えずに眠りたい。



 ・・・・早く、お家に、帰りたいな。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※しんみりした後だけど、構わず裏設定いれちゃいますよ!!

※裏設定

・主人公が持っていた光る魔法石さん

 魔術師団長に位置を知らせるための魔法石。普通のものだと、相手に気づかれちゃうので、単なる明かり用の魔法石、と思わせつつ、独自の光の波長を出す一品。それだけだと弱くて探せないですが、大方の場所はわかっていたので、両団長は近くでひっそり待機。手に持つだけで発動します。便利ー!

 

・魔術師団長

 洞窟に入ったら、『龍』と『竜』の壁画があったのでテンション上がったが、状況を見て自重。他の奴らが魔法攻撃で壁に傷をつけようとすれば過剰攻撃。騎士団長は壁を抉るわでキレそうになってた。が、倒したら壁画をえぐり取って持ち帰ろうと、自分を宥めてたのに、落盤して全部潰れてショックで立ち直れなそう・・・。←イマココ


・騎士団長

 ・・・・・・・・・・・・・くそ。←イマココ

 (騎士団長がモヤモヤしてるので、ここで披露。装備は最強の海魔物ヒュドラの皮を魔法で強化した鎧。万全の状態で駆けつけました。が、最後に蹴られて肋骨折りました。)


主人公ルルリーア

 今回ものすごく疲れた・・もうこれ・・つかれた・・・しばらくオウチヒキコモリタイ・・・。←イマココ

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