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5話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ズカンッ!!

 ドカンッ!!



「「・・・っ!」」



 両者無言で剣を交える、騎士団長と堕ちた英雄。

 いやいやいや!その交差したときの衝撃波、こっちにすっごいくるんだけどぉぉぉ!!??


 その衝撃を、魔術師団長が何かの魔法で霧散させたようだ。



「おいこらぁ!ライ、てめえなぁ!此処の召喚陣壊したら地脈が暴走すんだぞ!!??ちったぁ考えて戦えよ!っと」


 魔術師団長の魔法陣から、細く青白い光が直進して敵方に当たる。



「ぎゃあ」「ひぃいぃ!もうむりぃ!!」「よけらっねぇぇぇ!!」「にげたいぃぃぃ!」



 魔術師らしき人たちと兵士らしき人たちから、悲鳴があがる。のは、置いておいて。


 いやいや、魔術師団長??

 今さらっと命にかかわる重要なこと、言いませんでした??え?違うの??


 この場にいる全員が無視してるみたいだから、重要だとしても無意味だけどねぇぇぇ!!



「全滅させてやっから、かかってこいやぁぁ!」

「へぇ、じゃあ遠慮なくっ!」



 炎を再度剣に纏わせて、魔術師団長の懐まで入る緑野郎。の纏う炎を魔法で吹き飛ばし、腕で剣を弾く。


 両者の間隔が空いた瞬間、あの青白い光が八方に分かれ、緑野郎を包囲するように追撃する。


『ぎゃああああ』とか『あづづづづぅぅぅ』とか叫び声が聞こえるけど、うん!問題なしだね!


 しかし緑野郎は、あっさり剣を手放し、多数の小刀を全ての青白い光に投げ当てて、相殺する。



 ・・・・おう、なんか、まさに人外の戦い・・としかいえないな。

 なんて、呑気に感想なんて考えてる場合じゃなかった!!


 私の安全地帯、安全地帯はどこぉぉぉ!!!!

 キョロキョロと探していると、魔術師団長が話しかけてきた。



「おいっ!嬢ちゃん!」

「は、はいいいい!!」



 呼びかけられてそちらを見ると、魔法攻撃をせずに、雑魚っぽい敵を、拳で殴り昏倒させる魔術師団長がいた。

 ・・・魔術師の長よ、魔法はどこへ????



「嬢ちゃんは例の魔法石を投げろ!・・・っ!雑魚が多くてなっ!」

「りょ、了解致しましたぁぁ!!」



 そうは言われましたが。


 あれだよね。緑野郎はともかく、魔術師団長に向かってる雑魚っぽい人たちは、なんかもう詰んでる気がするし・・・。

 あっ!!そうか!!さっき、堕ちた英雄にさらっと言われてた『トルク』とかいう人の、準備を邪魔すればいいのか!



 丁度見つけた私の多分安全地帯であろう、召喚魔法陣外の隠れられそうな岩影へ移動してっと。


 さあて、あの辺でコソコソと固まってる人たちに向かって、投げるよー!



 ヒュン・・・ぽとん



「ん・・?なんだこれは?」



 ドゴォォォォォォォオオオオ!!



「ぎ、ぎゃぁぁぁあああ!」「あ、あついぃぃぃい!!」



 投げた辺りにいた、二名ほどを閉じ込める、炎の竜巻が現れました。


 ・・・・あんなの、この袋の中にはいってたのか・・・ソ、ソランくーん!!???

 いやしかし、消し炭にはならず、どうやら戦闘不能になるまで効力が続くよう。

 なんて便利なんだ!!!


 くっくっくっ!死なない程度、とわかれば、こちらも躊躇しないぞ!!!



 よおし!!思いっ切り投げてやる!!

 覚悟しなさい!!邪竜復活準備をしている、雑魚っぽいやつらよ!!




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ふう。

 粗方投げて、一息つく。


 準備していたっぽい人たちは、戦闘不能になってその場に倒れ伏している。


 うむ、いい仕事したわ!



 しかし、安全地帯の向こう側では、今だに人外たちは乱戦の真っ只中・・・。

 このまま観戦で、いいかな?



 ガキィィン!!



 おわぁぁぁ!!あぶないぃぃぃ!!

 私の隠れてる岩に、誰かの何かがぶつかったよぉぉぉ!!


 ほんとにもう!



「こっちは凡人なんだから、気を使ってほしいもんだわ!」

「ほんとうに・・・僕らのことなんて忘れてるんじゃ・・・」



「あっ、ソレあり得る!!ホント困るわぁ・・・」

「やっぱり・・・僕今魔法使えないから・・余計困るよ・・・」



「え?」

「え?」



 振り返って、背中合わせで喋っていた相手を見る。

 窶れた頬、目の下の隈、痩せた身体に少し寂しい生え際、猫背でどこからどう見ても悪い魔術師然とした、落ち着きのないネズミのような男がいた。


 お、お前は!!堕ちた英雄に『儀式の準備しろ』って言われてた『トルク』ってやつだなぁぁぁ!!


 つ・ま・り!



「敵じゃあああああああ!!!」

「えええええぇぇぇえええええ!!!!!」



 驚愕したようだがネズミ男。さっきは一瞬和んじゃたけど、貴様、邪竜を復活させようとしてるんだからね??

 さあ!私と、戦えぇぇぇええ!!



「い、いたっ!髪引っ張るなぁぁぁ!!」

「うる、さい!儀式なんてさせないからな!っていひゃい、ほお、引っぴゃるなぁぁ!!」



 人外たちの闘いの脇で、非常に小さな闘いの火蓋が切って落とされた。

 いやいや、そうは言っても、私は真剣そのものだからね??


 私の頬をつねってた手を払い、ネズミ男の服の襟を掴んで締め上げる。



「さあさあ、吐きなさい!!なんで今魔法が使えないのかなぁぁぁ!!??」

「ぐえっ!!い、いわれて、はなす、ばかが、いるかぁ!!」



 いいや!わからないぞ!!?過去にそんな馬鹿に会ったことがあるからね、私!?


 ・・・そう言えば、ネクロ補佐官様が言ってたな。

『真偽が不明な時は、適当に言って相手の反応をみる』だっけな?


 いやもうちょっとちゃんと教えてもらったけど、忘れちゃったな!!

 しかしここは、試してみよう!このネズミ男にな!



「うーん、単なる魔力切れ?」

「そんなわけないだろ!!」


 これは違うか。


「それじゃ、邪竜の召喚と関係があったり??」

「そ、そんなわけ、ないだろうっ!」


 お?近いかな?


「まさかの、第三の生贄とか?」

「そんなわけないだろ!!」


 これも違うか。


「もしや、召喚陣の維持のため、とか?」

「そそそそ、そんなわけ、ないないない、絶対ない!!」


 話さないと言った割には、わかり易すぎだろ!!

 ・・・・ほほう、ということは?


 ニヤリと笑う私。震えるネズミ男。



「貴様を昏倒、もしくは意識混濁にすれば、私達の勝ちだなぁ!!!」

「なんでそんなに暴力的なんだぁぁぁ!!!」



 おっと、振り払われてしまったぞ。

 ちっ、流石に男女差があるし、疲れてきたのか手に力が入らなくなってきた。


 そんな私には!ちゃっちゃちゃーん!ソラン君特製『元気の出る薬』!!


 ぐびりと煽って袖で口元を乱暴に拭う。意外と美味しいんだよねこれ。

 空になった瓶を、ネズミ男に投げつける。・・・うぬ、当たらなかったか。



 そうして元気になった私は、頭突いてやろうとにじり寄る。が、怯えたように距離を取ろうとするネズミ男。

 ・・・いやいや、私か弱い乙女だからね?そんなに警戒しないで?


 ちょっと頭を揺らすだけだから、ねぇぇ???



「ま、まてっ!!」



 手を振りかざして、私を制止しようとするネズミ男。

 なに?時間稼ぎなら、受け付けないよ??



「い、今頃、お前の国は魔物で溢れてるぞっ!きにな、ぶへぅっ」



 更に続けようとしていたネズミ男に、体当たりする。


 ・・・何を言うかと思えば、何だそれか。

 そんなこと、ウチの国王陛下にはまるっとお見通しに決まってるでしょ。


 陛下も、王弟殿下も、神官長も、宰相閣下も、財務大臣閣下も、騎士様も、魔術師様も。

 今までルメールを守っていた人たち。


 サラにソラン君にアイリーン様。

 私の我儘なのに、私の背中を押してくれた人たち。


 今ここにいることが出来るのは、全部、皆のお陰、なんだ。


 だから、そんな凄い人たちが居る我が国を、私が心配するわけ、無いでしょうが。

 腹を抱えて涙目になるネズミ男を、私は鼻で笑った。



「あんまり、ウチの国、舐めんなよ?」




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