5話
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ズカンッ!!
ドカンッ!!
「「・・・っ!」」
両者無言で剣を交える、騎士団長と堕ちた英雄。
いやいやいや!その交差したときの衝撃波、こっちにすっごいくるんだけどぉぉぉ!!??
その衝撃を、魔術師団長が何かの魔法で霧散させたようだ。
「おいこらぁ!ライ、てめえなぁ!此処の召喚陣壊したら地脈が暴走すんだぞ!!??ちったぁ考えて戦えよ!っと」
魔術師団長の魔法陣から、細く青白い光が直進して敵方に当たる。
「ぎゃあ」「ひぃいぃ!もうむりぃ!!」「よけらっねぇぇぇ!!」「にげたいぃぃぃ!」
魔術師らしき人たちと兵士らしき人たちから、悲鳴があがる。のは、置いておいて。
いやいや、魔術師団長??
今さらっと命にかかわる重要なこと、言いませんでした??え?違うの??
この場にいる全員が無視してるみたいだから、重要だとしても無意味だけどねぇぇぇ!!
「全滅させてやっから、かかってこいやぁぁ!」
「へぇ、じゃあ遠慮なくっ!」
炎を再度剣に纏わせて、魔術師団長の懐まで入る緑野郎。の纏う炎を魔法で吹き飛ばし、腕で剣を弾く。
両者の間隔が空いた瞬間、あの青白い光が八方に分かれ、緑野郎を包囲するように追撃する。
『ぎゃああああ』とか『あづづづづぅぅぅ』とか叫び声が聞こえるけど、うん!問題なしだね!
しかし緑野郎は、あっさり剣を手放し、多数の小刀を全ての青白い光に投げ当てて、相殺する。
・・・・おう、なんか、まさに人外の戦い・・としかいえないな。
なんて、呑気に感想なんて考えてる場合じゃなかった!!
私の安全地帯、安全地帯はどこぉぉぉ!!!!
キョロキョロと探していると、魔術師団長が話しかけてきた。
「おいっ!嬢ちゃん!」
「は、はいいいい!!」
呼びかけられてそちらを見ると、魔法攻撃をせずに、雑魚っぽい敵を、拳で殴り昏倒させる魔術師団長がいた。
・・・魔術師の長よ、魔法はどこへ????
「嬢ちゃんは例の魔法石を投げろ!・・・っ!雑魚が多くてなっ!」
「りょ、了解致しましたぁぁ!!」
そうは言われましたが。
あれだよね。緑野郎はともかく、魔術師団長に向かってる雑魚っぽい人たちは、なんかもう詰んでる気がするし・・・。
あっ!!そうか!!さっき、堕ちた英雄にさらっと言われてた『トルク』とかいう人の、準備を邪魔すればいいのか!
丁度見つけた私の多分安全地帯であろう、召喚魔法陣外の隠れられそうな岩影へ移動してっと。
さあて、あの辺でコソコソと固まってる人たちに向かって、投げるよー!
ヒュン・・・ぽとん
「ん・・?なんだこれは?」
ドゴォォォォォォォオオオオ!!
「ぎ、ぎゃぁぁぁあああ!」「あ、あついぃぃぃい!!」
投げた辺りにいた、二名ほどを閉じ込める、炎の竜巻が現れました。
・・・・あんなの、この袋の中にはいってたのか・・・ソ、ソランくーん!!???
いやしかし、消し炭にはならず、どうやら戦闘不能になるまで効力が続くよう。
なんて便利なんだ!!!
くっくっくっ!死なない程度、とわかれば、こちらも躊躇しないぞ!!!
よおし!!思いっ切り投げてやる!!
覚悟しなさい!!邪竜復活準備をしている、雑魚っぽいやつらよ!!
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ふう。
粗方投げて、一息つく。
準備していたっぽい人たちは、戦闘不能になってその場に倒れ伏している。
うむ、いい仕事したわ!
しかし、安全地帯の向こう側では、今だに人外たちは乱戦の真っ只中・・・。
このまま観戦で、いいかな?
ガキィィン!!
おわぁぁぁ!!あぶないぃぃぃ!!
私の隠れてる岩に、誰かの何かがぶつかったよぉぉぉ!!
ほんとにもう!
「こっちは凡人なんだから、気を使ってほしいもんだわ!」
「ほんとうに・・・僕らのことなんて忘れてるんじゃ・・・」
「あっ、ソレあり得る!!ホント困るわぁ・・・」
「やっぱり・・・僕今魔法使えないから・・余計困るよ・・・」
「え?」
「え?」
振り返って、背中合わせで喋っていた相手を見る。
窶れた頬、目の下の隈、痩せた身体に少し寂しい生え際、猫背でどこからどう見ても悪い魔術師然とした、落ち着きのないネズミのような男がいた。
お、お前は!!堕ちた英雄に『儀式の準備しろ』って言われてた『トルク』ってやつだなぁぁぁ!!
つ・ま・り!
「敵じゃあああああああ!!!」
「えええええぇぇぇえええええ!!!!!」
驚愕したようだがネズミ男。さっきは一瞬和んじゃたけど、貴様、邪竜を復活させようとしてるんだからね??
さあ!私と、戦えぇぇぇええ!!
「い、いたっ!髪引っ張るなぁぁぁ!!」
「うる、さい!儀式なんてさせないからな!っていひゃい、ほお、引っぴゃるなぁぁ!!」
人外たちの闘いの脇で、非常に小さな闘いの火蓋が切って落とされた。
いやいや、そうは言っても、私は真剣そのものだからね??
私の頬をつねってた手を払い、ネズミ男の服の襟を掴んで締め上げる。
「さあさあ、吐きなさい!!なんで今魔法が使えないのかなぁぁぁ!!??」
「ぐえっ!!い、いわれて、はなす、ばかが、いるかぁ!!」
いいや!わからないぞ!!?過去にそんな馬鹿に会ったことがあるからね、私!?
・・・そう言えば、ネクロ補佐官様が言ってたな。
『真偽が不明な時は、適当に言って相手の反応をみる』だっけな?
いやもうちょっとちゃんと教えてもらったけど、忘れちゃったな!!
しかしここは、試してみよう!このネズミ男にな!
「うーん、単なる魔力切れ?」
「そんなわけないだろ!!」
これは違うか。
「それじゃ、邪竜の召喚と関係があったり??」
「そ、そんなわけ、ないだろうっ!」
お?近いかな?
「まさかの、第三の生贄とか?」
「そんなわけないだろ!!」
これも違うか。
「もしや、召喚陣の維持のため、とか?」
「そそそそ、そんなわけ、ないないない、絶対ない!!」
話さないと言った割には、わかり易すぎだろ!!
・・・・ほほう、ということは?
ニヤリと笑う私。震えるネズミ男。
「貴様を昏倒、もしくは意識混濁にすれば、私達の勝ちだなぁ!!!」
「なんでそんなに暴力的なんだぁぁぁ!!!」
おっと、振り払われてしまったぞ。
ちっ、流石に男女差があるし、疲れてきたのか手に力が入らなくなってきた。
そんな私には!ちゃっちゃちゃーん!ソラン君特製『元気の出る薬』!!
ぐびりと煽って袖で口元を乱暴に拭う。意外と美味しいんだよねこれ。
空になった瓶を、ネズミ男に投げつける。・・・うぬ、当たらなかったか。
そうして元気になった私は、頭突いてやろうとにじり寄る。が、怯えたように距離を取ろうとするネズミ男。
・・・いやいや、私か弱い乙女だからね?そんなに警戒しないで?
ちょっと頭を揺らすだけだから、ねぇぇ???
「ま、まてっ!!」
手を振りかざして、私を制止しようとするネズミ男。
なに?時間稼ぎなら、受け付けないよ??
「い、今頃、お前の国は魔物で溢れてるぞっ!きにな、ぶへぅっ」
更に続けようとしていたネズミ男に、体当たりする。
・・・何を言うかと思えば、何だそれか。
そんなこと、ウチの国王陛下にはまるっとお見通しに決まってるでしょ。
陛下も、王弟殿下も、神官長も、宰相閣下も、財務大臣閣下も、騎士様も、魔術師様も。
今までルメールを守っていた人たち。
サラにソラン君にアイリーン様。
私の我儘なのに、私の背中を押してくれた人たち。
今ここにいることが出来るのは、全部、皆のお陰、なんだ。
だから、そんな凄い人たちが居る我が国を、私が心配するわけ、無いでしょうが。
腹を抱えて涙目になるネズミ男を、私は鼻で笑った。
「あんまり、ウチの国、舐めんなよ?」
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