3話
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「居たぞ!!そっちだ!!」
ど、どうもっ!絶賛森の中を逃げ回っております、ルルリーアですよっ!!
「逃げるな嬢ちゃん!ほんのちょっとばかし斬るだけだからよぉ!!」
「そうそう、足の腱を、ちょっとばかしなぁ!」
「だからぁぁぁ!!そんなん言われて、止まるかぁぁぁぁ!!!」
思わず振り返って叫ぶと、刃先が間近に迫っているのが見える。
のわぁぁぁぁ!!!!
思いっ切り前に転がり避けながらも、更に走り続ける私。
見るからに可憐な乙女なんだから、ちょっとは躊躇しろよぉぉぉ!!
「チッ!当たんねぇなコイツ!」
「なんだよ!貴族のご令嬢じゃねぇのかよ!!」
失礼な事を言い合うゴロツキども。
いや私は正真正銘、貴族のご令嬢だけれど??
だが!!!騎士団長と地獄の特訓をした私は、只の貴族のご令嬢とは、一味ちがうのさ!!
本当にありがとうございます!騎士団長!!
後ろを向かずに、ゴロツキどもに自慢する。
「はんっ!騎士団長を、四分の、一にして、思いっ切り手加減、しながら、小枝でかかって、きても避けられるぞ!!」
「なんだそれ!どんだけ手加減されてんだよ!」
「いやこれ俺ら舐められてね?四分の一以下の小枝以下って言われてね?」
その通りだよ!おまえたちのその小剣は、あの小枝以下の以下の以下だよ!!
まさか、人生で小枝に恐怖するときが来ると、私だって思わなかったよ!!
目の前に現れた倒木に手をついて飛び越え、勢いをなくさないように転がる。のついでに、土を掴んで起き上がり、後ろを見ずにとりあえず投げる。
あいつらに、当たるといいな!!
「ぐぁぁ!!」「め、めがぁ!!」
よし!顔に当たった!!奇跡に近いな!!もしや私、投擲の才能でもあるんじゃないか???
いやいやそれにしても、騎士団長の教えは凄いな!!
『とにかく何か投げろ、当たらなくてもいいから投げろ』ですよねぇ!!
後ろの二人が怯んだ僅かな時間で、ようやく、私が固定魔法陣を使えるだけの距離が空いた。
追いつかれる前に、急いで陣を展開して上へ逃げる。
「っ!あ、クソッ!!待てこの野郎!!」
「めがぁぁぁ!!」
野郎じゃなくて、淑女ですからっ!!!
・・・それにしても、思いの外戦果があったみたいだけど。
ちゃんと追いかけてきてくれるかな、あいつら。
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丁度私がすっぽり入るような木の洞があったので、そこで休憩。
ええと、一応計画は順調、かな?
一息ついてる今のうちに、これまでを振り返る。
ここ数日は、囮として捕まることを前提に、行動しておりました。
王都郊外の街とか村を、『竜騎士のごにょごにょ』にして『救国のごにょごにょ』である私が慰労として訪れ。
そこを、少数護衛でぶらつきながら過ごして。
ついでに、振る舞われる各地の名物を楽しんで。
いやいや、楽しそうにしてるじゃないかと思わないでくださいよ??
空いた時間は、騎士団長の地獄の特訓を受けてたんだからぁぁぁ!!
最初に、騎士団長が模擬剣を取り出したので全力で拒否した。
だってあれ武闘会で魔術師団長のローブ切ってたじゃん。私なんか胴体ごと切れちゃうよって怖いわ!!
そんな私の拒否を受けて色々取り出してきてくれた騎士団長、お世話かけます。
木の剣、小剣、ナイフ、ペーパーナイフ、バターナイフ・・・まで来て、ついに騎士団長が溜息とともに拾い上げたのが。
小枝だ。
これなら安心。なんたって小枝だよ?私にだってポッキリ折れちゃう小枝だよ??
当たってもそんなに痛くなさそうだし、コレでお願いします!と言ったのが運の尽き。
小枝だって、持っているのは、騎士団長。
はい、これ忘れてましたねー!!一番忘れちゃいけないところでしたねー!!
それからは、小枝から逃げまくる時間の始まり・・・。
大分手加減してもらって、避ける、という感覚を叩き込まれる日々。
そんな私達を見て、『団長が手加減してる!』と感動していた騎士様方。心中お察し致します。
そんなこんなで、ソラン君特製元気の出る薬を飲みつつ特訓する合間、じゃなくて、囮として訪れる何箇所目かのモアリオの街に到着。
そうして、ようやく来ましたよ、あいつらがね!!
・・・・でも、名物のリンゴパイを、食べる寸前じゃなくて良かったのに!
あいつらに拐われたところまでは良かったし、私、計画通り、素直に連れ去られようとしてたんだよ?
でもあのゴロツキども、私の足の腱切るとか怖いこというから、思わず全力で逃げちゃったよ。
・・・・・ええと、大分時間が経ったけど、あいつら何処に行ったんだ?
うーん、一体いつまで逃げれば良いんだろう。
なんだか、止め時、というか捕まり時がわからなくなってきたぞ?
だって、なんだかかんだ、逃げれちゃってるんだもの。
「多分こっちのほうだ!早く探せ!!」
「め、めが・・・・」
近くをやつらが通る。・・・あいつ、まだ目が痛いのか。乱暴に擦っちゃったんじゃないか?
私を拐うときは妙に手際がよかったけど、私みたいなか弱い少女に逃げられ続けて・・・。
あいつら、ちゃんと捕まえに来てくれるのか?
いやいや、私このまま逃げ切れちゃったら、囮になる計画、どうしよう・・・。
なーんて思ってましたよ。いやいや、悪い人舐めたらいけませんね、ホント。
「・・・こんな小娘に振り回されるな」
そう、私の後ろで誰かが呟く。
ぎゃっ!全然気づかなかった!!!誰だあんた!いつの間にぃぃぃ!!!
逃げる間もなく、トン、と額を指で突かれる。その途端に意識が薄れていく。
・・・あ・・このおじさん・・・帝国にいた・・・怖そうな人だ・・・。
なんてどうでもいい発見をしつつ、私は地面に倒れる。
・・・で、できれば・・足の・・足の腱・・・だけは・・・
そうして、私は深い眠りについた。
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