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3話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「居たぞ!!そっちだ!!」




 ど、どうもっ!絶賛森の中を逃げ回っております、ルルリーアですよっ!!




「逃げるな嬢ちゃん!ほんのちょっとばかし斬るだけだからよぉ!!」

「そうそう、足の腱を、ちょっとばかしなぁ!」


「だからぁぁぁ!!そんなん言われて、止まるかぁぁぁぁ!!!」



 思わず振り返って叫ぶと、刃先が間近に迫っているのが見える。

 のわぁぁぁぁ!!!!


 思いっ切り前に転がり避けながらも、更に走り続ける私。

 見るからに可憐な乙女なんだから、ちょっとは躊躇しろよぉぉぉ!!



「チッ!当たんねぇなコイツ!」

「なんだよ!貴族のご令嬢じゃねぇのかよ!!」



 失礼な事を言い合うゴロツキども。

 いや私は正真正銘、貴族のご令嬢だけれど??


 だが!!!騎士団長と地獄の特訓をした私は、只の貴族のご令嬢とは、一味ちがうのさ!!

 本当にありがとうございます!騎士団長!!


 後ろを向かずに、ゴロツキどもに自慢する。



「はんっ!騎士団長を、四分の、一にして、思いっ切り手加減、しながら、小枝でかかって、きても避けられるぞ!!」


「なんだそれ!どんだけ手加減されてんだよ!」

「いやこれ俺ら舐められてね?四分の一以下の小枝以下って言われてね?」



 その通りだよ!おまえたちのその小剣は、あの小枝以下の以下の以下だよ!!

 まさか、人生で小枝に恐怖するときが来ると、私だって思わなかったよ!!



 目の前に現れた倒木に手をついて飛び越え、勢いをなくさないように転がる。のついでに、土を掴んで起き上がり、後ろを見ずにとりあえず投げる。


 あいつらに、当たるといいな!!



「ぐぁぁ!!」「め、めがぁ!!」



 よし!顔に当たった!!奇跡に近いな!!もしや私、投擲の才能でもあるんじゃないか???


 いやいやそれにしても、騎士団長の教えは凄いな!!

『とにかく何か投げろ、当たらなくてもいいから投げろ』ですよねぇ!!


 後ろの二人が怯んだ僅かな時間で、ようやく、私が固定魔法陣を使えるだけの距離が空いた。

 追いつかれる前に、急いで陣を展開して上へ逃げる。



「っ!あ、クソッ!!待てこの野郎!!」

「めがぁぁぁ!!」



 野郎じゃなくて、淑女ですからっ!!!

 ・・・それにしても、思いの外戦果があったみたいだけど。


 ちゃんと追いかけてきてくれるかな、あいつら。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 丁度私がすっぽり入るような木の洞があったので、そこで休憩。


 ええと、一応計画は順調、かな?


 一息ついてる今のうちに、これまでを振り返る。

 ここ数日は、囮として捕まることを前提に、行動しておりました。


 王都郊外の街とか村を、『竜騎士のごにょごにょ』にして『救国のごにょごにょ』である私が慰労として訪れ。

 そこを、少数護衛でぶらつきながら過ごして。

 ついでに、振る舞われる各地の名物を楽しんで。

 

 いやいや、楽しそうにしてるじゃないかと思わないでくださいよ??


 空いた時間は、騎士団長の地獄の特訓を受けてたんだからぁぁぁ!!



 最初に、騎士団長が模擬剣を取り出したので全力で拒否した。

 だってあれ武闘会で魔術師団長のローブ切ってたじゃん。私なんか胴体ごと切れちゃうよって怖いわ!!


 そんな私の拒否を受けて色々取り出してきてくれた騎士団長、お世話かけます。

 木の剣、小剣、ナイフ、ペーパーナイフ、バターナイフ・・・まで来て、ついに騎士団長が溜息とともに拾い上げたのが。


 小枝だ。


 これなら安心。なんたって小枝だよ?私にだってポッキリ折れちゃう小枝だよ??

 当たってもそんなに痛くなさそうだし、コレでお願いします!と言ったのが運の尽き。


 小枝だって、持っているのは、騎士団長。


 はい、これ忘れてましたねー!!一番忘れちゃいけないところでしたねー!!


 それからは、小枝から逃げまくる時間の始まり・・・。


 大分手加減してもらって、避ける、という感覚を叩き込まれる日々。

 そんな私達を見て、『団長が手加減してる!』と感動していた騎士様方。心中お察し致します。



 そんなこんなで、ソラン君特製元気の出る薬を飲みつつ特訓する合間、じゃなくて、囮として訪れる何箇所目かのモアリオの街に到着。


 そうして、ようやく来ましたよ、あいつらがね!!

 ・・・・でも、名物のリンゴパイを、食べる寸前じゃなくて良かったのに!


 あいつらに拐われたところまでは良かったし、私、計画通り、素直に連れ去られようとしてたんだよ?

 でもあのゴロツキども、私の足の腱切るとか怖いこというから、思わず全力で逃げちゃったよ。



 ・・・・・ええと、大分時間が経ったけど、あいつら何処に行ったんだ?

 うーん、一体いつまで逃げれば良いんだろう。

 なんだか、止め時、というか捕まり時がわからなくなってきたぞ?


 だって、なんだかかんだ、逃げれちゃってるんだもの。



「多分こっちのほうだ!早く探せ!!」

「め、めが・・・・」



 近くをやつらが通る。・・・あいつ、まだ目が痛いのか。乱暴に擦っちゃったんじゃないか?


 私を拐うときは妙に手際がよかったけど、私みたいなか弱い少女に逃げられ続けて・・・。

 あいつら、ちゃんと捕まえに来てくれるのか?


 いやいや、私このまま逃げ切れちゃったら、囮になる計画、どうしよう・・・。



 なーんて思ってましたよ。いやいや、悪い人舐めたらいけませんね、ホント。



「・・・こんな小娘に振り回されるな」



 そう、私の後ろで誰かが呟く。

 ぎゃっ!全然気づかなかった!!!誰だあんた!いつの間にぃぃぃ!!!


 逃げる間もなく、トン、と額を指で突かれる。その途端に意識が薄れていく。


 ・・・あ・・このおじさん・・・帝国にいた・・・怖そうな人だ・・・。

 なんてどうでもいい発見をしつつ、私は地面に倒れる。



 ・・・で、できれば・・足の・・足の腱・・・だけは・・・



 そうして、私は深い眠りについた。




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

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― 新着の感想 ―
[一言] >四分の一以下の小枝以下って言われてね?」 分数がわかるなんて、インテリ!!(´º∀º`人)
[気になる点] モアリオのリンゴパイ。 はい、青森の林檎ですね。 なじみの地名が嬉しい。
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