7話
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目の前で割れた『竜の宝珠』を信じられないかのように、呆けた目で眺めていた枯れ木賢者が、ようやく復活した。
「わ、わしの・・さん、じゅうねん・・・が・・・」
びっくりした、そのまま儚くなっちゃうかと思ったよ!お帰り!枯れ木賢者よ!!
・・・・・いやいやいや、そう言えばこいつ私も生贄にしようとしてたんだった。そのまま呆けてればよかったものをっ!
震える手で、割れた『竜の宝珠』の破片をかき集めようとする枯れ木賢者。
・・・そもそもこいつが『竜の宝珠』を使って『邪竜』の復活を目論んでたわけでしょ?我らを生贄にして。
そんなやつに渡さんっ!!
・・・・・たとえ涙目で、『あ、ぁあ、あ』みたいに手をふらつかせながら、『竜の宝珠』の破片を取ろうとしてきても、心を強く持って、枯れ木賢者よりも先に拾い切る。
・・・・・ひ、ひろうんだからねっ!!!
だってまた、『邪竜様の復活じゃあ!!』ってされても困るからね。
・・・・誰かの呆れ混じりの視線を感じるものの、最優先はこの『竜の宝珠』だよね?
っていうか手伝いなさいよぉぉ!!!
んあっ、視線の先、あの怖い感じの人だったぁぁ!!それならいいです、私が拾いますぅぅ!!
幸運なことに、『竜の宝珠』は大きく2つに割れていて、細かい破片は3、4片くらいのようだ。
とりあえず全部まとめたら、王弟殿下に渡す。絶対渡す!!!
震える枯れ木賢者の手を掻い潜り、細かい欠片も左手に集めていく。
お!コレが最後の一欠だね!!これを拾ったら王弟殿下に・・・・
-----ぐぅぉおおおおぉぉぉおおおおぉんっ!!
魔法陣が突然光りだした。
なんだ、と思っている内に、その魔法陣から、白長い何か、が出てきたぁぁぁぁ!!!????
私、もう、お腹いっぱいだよぉぉぉぉ!!!???
それは、いきなり出てきたと思ったら、地下部屋のはずの、ここの天井をいとも簡単にぶち抜いた。
・・・・・・・・・わー青空が見えるーー。
「っ!!わしが呼んだのは、邪竜様であるぞッ!!何だあれはっ!!!」
枯れ木賢者が悲痛な声で叫ぶ。
え?知らない何かを呼び起こそうとしたの???しかも三十年もかけて????
うーん、それは、なんか、もう何も言えないや・・・・。
いきなり現れた目の前の存在は、威圧感だけならドラゴンのものと同じだ。
少し輪郭が曖昧に見えるけど、あれ、ゆ、幽霊なの??昼なのに??
いやいやいや、天井ぶち抜いたんだから、実体があるはず!アレは幽霊じゃない、ないったらないんだぁぁぁ!!
・・・ちょっと錯乱してしまったが・・・。
----それにしてもあいつ、『邪竜様』のはずなのに、蛇みたいじゃない?????
そう、蛇のように長い身体をくねらせ、鋭い牙を持つ口元には顔と同じくらいの長さのひょろりと生える髭、どう浮いているのかわからないが、私達の頭上にとぐろを巻くようにして漂う。
威圧感と体を覆う鱗は私達に馴染み深いドラゴンなのだが、ドラゴンにはあるはずの飛膜が、このドラゴンのような蛇にはない。
うーん・・・・でも、これを蛇と言い切る事もできないなぁ・・・。
マニアたち!!今だぁぁ!!!今こそ来てくれぇぇぇ!!!
・・・・うん、来ないよね。むしろ来たら、ソレこそびっくりするわ。
よし!ちょっと冷静になってきたな。
確かにあいつ『邪竜の復活』とか言ってたな。・・・・じゃあこれもドラゴン??
それにしては、鱗が白く透き通っていて、太陽の光を浴びてまるでダイヤモンドで飾られているように神々しく美しい。
うーーーん、邪竜っぽくないな。
邪竜って、こう、サラみたいに禍々しさがないと・・あっすみませぇぇぇんん!!サラ様ぁぁぁ!!
<<・・・・妾の残滓を呼び起こすものは・・・だれかの・・・>>
如何にも寝起き、といった風の目が殆ど開いていない蛇ドラゴンがあたりを見回す、と、私と目が合った。
・・・・ですよねぇぇぇぇ!!!『竜の宝珠』持っちゃってるんだよね!!割れてるけど!!
拾ったそばから王弟殿下に渡しとけばよかったァァァ!!!
<<そなたか・・・まあ割れておるが『龍の宝珠』を持つものか?>>
「いいえ!!滅相もございません!!!!!私のものではまったくもってございません!知りもしません!!」
力強く、真実を述べる。まごうことなき、一片の曇りなき、真実だ。
本当に、今の今まで、『龍の宝珠』??そんなものは知らん!!だったしね!!
そもそも『龍』って何なのさ!!『竜』しか知らないよ???まったくね!
どう?私だってちゃんと断れる子なんだよ????最近学んだのさ!!
後ろを振り返ると、全員から「「「「・・・・・・」」」」という無言と、『お前じゃん』という事実無根な疑惑の目で見られた。
・・・・見なかったことにしよう。
<<しかし、そのほうが妾を解放したように見えるの・・・それに>>
顔を寄せられてじっくり見られる。・・・おう、顔が、ちかい・・・。
ドラゴンに表情なんて無いのかと思ったけど、たぶんこの蛇ドラゴン、今微笑んだんだと思う。
<<珍しきものがおるのう。・・・『龍紋』を刻む故、しばしそなたと共に過ごさせてもらおうかの>>
そういうと、その巨躯をあっという間に縮め、私の左手の割れた『龍の宝珠』が消え、手のひらの上にぼんやりとした白い光が残った。
「・・・・・・・王弟殿下」
「・・・・・・・なにかな」
「これ、蛇ドラゴンが言ってた、『龍紋』ですかね?」
「まぁ十中八九、そうだろうね」
「これ浮いてますし、こう、ぎゅっと握らなければ受け取ったことにならないんじゃないでしょうか?」
「・・・・それ本気で言ってる?・・・ほら、周り見なよ」
ーーーーーーわあぁぁぁぁああぁぁぁあああぁぁぁああ!!!!!
なにか、嫌な予感が。例の竜騎士騒ぎのときと、似たような空気が・・・。
・・・・またか、またなのかっ!!
「既に外では、君が帝国を脅かそうとした異種ドラゴンを鎮め、帝国を救ったことになってるよ」
「ふぁっ!!?????」
「それに」
頭をおさえて深く溜息をつく王弟殿下。
なになに、何なのぉぉぉ!い、いややっぱりききたくな-----
「君、『竜騎士の花嫁』で『救国の聖女』だってさ」
「えぇぇぇぇええええぇぇ!!!・・・あっでも私の顔あんまり有名じゃないから、自分から広めない限り知られないですよね!?だから王弟殿下お願いしますこの件はご内密にぃぃぃ!!!!」
何処かに希望が残っているはずだっ!!!
必死に訴える私を、生ぬるい目で見てくる王弟殿下。き、きぼう、は・・??
「ここ、何処だと思ってるの?」
「え?有名な観光地の・・・・・・・・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」
周囲を見渡すと、ぽっかり開いた天井を覗き込むようにたくさんの人が歓声を上げていた。
『有名な観光地コロセス』ですもんねーーー!!!
人、一杯居ますよねぇぇぇぇ!!!
・・・・なんか『救国の聖女』とか『竜騎士の花嫁』とか聞こえてくるんですけど、王弟殿下のコトカナーー??
きっとそうですよね??王弟殿下!!・・・オウテイデンカァァァァ!!!
ぽん、と肩に手を置く王弟殿下。その顔はいつもどおりだ。
そうそれはまるで、古の混沌たる邪神が逃亡を謀った生贄が自らの首を締める様を見るかのように、楽しそうに嗤った。
「決まり、だね。『竜騎士の花嫁』で『救国の聖女』よ(笑)」
そう言うと、私の左手を、指差した。
そうそう、此処には、あの蛇ドラゴンが言ってた白いふわふわの『龍紋』とかいう握ったら面倒そうなものがーーーーーー
・・・・・私、手、閉じちゃってる。
そっと、手を開く。心臓が痛いほど鼓動を打つ。
いやいやいや、まだ分からないよ??もしかしたら、『そなたにそんな資格はない』とかで与えられなーーーーーー
・・・・・なにかなーこの白い模様・・・・。
振り向いて、王弟殿下になんとかなすりつけられないかと、腕とか手の甲とかに、『龍紋』をこすりつけた。
が、王弟殿下を大爆笑の渦に落としただけで、模様は落ちませんでした・・・。くすん・・・・。
い、いやだぁぁぁぁ!!!!すっごい巻き込まれたァァァァ!!
もう即刻国に、オウチニカエリタイィィ!!!!!
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※毎度お馴染み、読まなくても問題ない裏設定ですよ!
※裏設定
・コロセスパンさん
コロセス遺跡に来たら誰もが食べるパン。ふんわりとした食感のパン生地の中にトマトベースの野菜肉がじっくり煮詰められたソースが入っている、『まあ、話の種に食べたら?』くらいの美味しさ。でも、『救国の聖女』誕生の地となったため、急遽『コロセスパン』から『セイジョパン』に変える屋台が続出。←イマココ
・大根役者偽門番
本当は知り合いが受ける仕事だったが、『ルメールに関わるのやばい』とばかりに逃げ、代わりを頼まれてしまった、お人好しのゴロツキ。本人は自分を悪い裏社会の人間だと思っているが、他人の毒気を抜くような彼が関わった仕事は、全てなあなあで終わる。今回も『手荒な真似をしても』と指示が合ったけど、忘れてあんな感じ。大金が手に入るとホクホクしてたら、依頼人が投獄されててショック!?←イマココ
・主人公
あれ?例の言ってはいけない二つ名を一生懸命消そうとしてるのにふえたぁぁぁぁもういやぁぁぁ聖女って聖なる女性がなるもんでしょぉぉぉ私違うオウチニカエリタイィィィィ!!←イマココ




