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5話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 フェイラス帝国の花の都ヴァリから少し離れた森に居ます、なんでなのか疑問しか感じない私、ルルリーアでございます。



「此処も、違うか・・・後は」

「あのーーー王弟殿下」



 何かを見回しながらブツブツと呟く王弟殿下。

 この言い方だと、あやし・・じゃなくて危ない人だな。その通りなんだけどね。



「どうかしたのかな?」



 木漏れ日が御髪にあたって麗しい顔が金に縁取られる。・・・反射して私の目に優しくない。

 ・・・・あれか?私の微妙な金髪に喧嘩でも売ってるのか?



「どうかしたのか、ではありません。なぜこんな所に?」

「もちろん、帝国の双子を探してるんだよ?」



 当然の事のように言う王弟殿下。

 いやいやいや、それはもう聞きましたよ??


 希少な転移魔法の使い手である王弟殿下に、帝国のあの枯れ木のような賢者様が双子探しを申し付けてきたんだよね。

 ・・・枯れ木賢者がどんな態度だったかは聞かないでおこう。


 先の内乱で、帝国にはもう継承権を持つのが双子しかいないから、必死なのはわかるけど、他国民に世継ぎを探させるってどうなの?


 いや・・んーー、必死、かな・・・?


 今の今まで、捜索をしている帝国側の誰かと、すれ違いもしていない。

 皇位継承者が誘拐されたと言うのに、兵士たちが鎧姿なこと以外は、特に変わったこともなく、厳戒体制もしかれず、都は平穏そのもの。


 道中の襲撃といい、昨日の夜会といい、怪しい。

 怪しすぎるよ帝国、ああ早く愛すべき我が国に帰りたい。


 ・・・・って私が聞きたかったのは。



「違います。なぜがこんな所に?」



 暗黒面、じゃなかった有能なるネクロ補佐官様はお留守番だ。

 そう、補佐官様が一緒じゃないのに、私が捜索に同行するのはおかしいのではないか??


 いいかな?魂の叫びを聞かせてあげるよ??



 わたし!淑女!!だからぁぁぁ!!!




「それはもちろん」



 まるで世界の法則について尋ねられたかのように、王弟殿下は迷うことなく、平然に、言い切った。



「ルルリーア嬢みたいな危険物を、放置なんて出来ないからね」

「・・・ぇぇぇえええ」



 危険物ってなんだぁぁ!!既に私は者じゃなくて物かそうですかぁぁぁ!!

 睨む私、微笑む王弟殿下。


 ここは、一歩も、引かぬぞ!!



「小ドラゴンに乗った挙句大ドラゴンに対面した君に、反論の余地はないよ?」



 もっと理由を挙げて欲しい?と邪神様顔で問われて、全力で王弟殿下から目を逸らす。

 聞いたら負ける、何にかはわからないけど、とにかく負ける。


 ・・・・勝負に負けて試合にも負けた気分だ・・・。

 いや!負けが確定しなければ、勝負はまだ続行中だ!!



「まぁ見たい所はもう回ったし。ルルリーア嬢、次何処に行きたい?」



 え?これ双子の捜索じゃなかったっけ?

 言い方が観光っぽいからァァ!!王弟殿下!!


 いくらこの誘拐が、帝国側が仕掛けてきた罠っぽくみえて、双子は人質っぽくみえるけど、流石に双子が可哀想だよ!?


 ・・・可哀想、だよ??ほんとだよ???



「・・・じゃあ、かの有名なコロセスの遺跡に」



 あぁ一度も国から出ていない私、観光地への誘惑に負けてしまったよ!!


 大丈夫、あの双子ももう12歳だし、うちで魔術体術剣術を仕込んだし。

 そもそも、緊張状態にある各国が集まった日にとか、凋落した帝国の皇位継承者を生きたまま攫ったこととか、どう考えても胡散臭い。


 王弟殿下だって、たまに邪神様のように見えるとは言え、多分人の子。

 本当に双子が危険だったら多分ちゃんと探しただろう。多分。・・うん多分。



「いいけど。何ていうか、王道な名所だね・・・・ルルリーア嬢」



 確かに、『フェイラスのヴァリの名所 第一位』に輝いているけどもぉぉぉ!!

『フェイラス帝国に来たら行かなきゃ損』って書いてあるんだものぉぉぉぉ!!

(出典『世界の観光地~フェイラス編~』)



「じゃあ、行くよ?」





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 今日一日王弟殿下に連れ回されて一言。



 転移魔法って、便利だな!!



 これは転移魔法の使い手が、商人であれば出世街道まっしぐら、傭兵であれば引っ張りだこ、冒険者であれば大成功間違い無し、と言われるのもわかるな!!


 ・・・・比べて高位の貴人が持っていても、いきなり移動したら警護が大変だし、勝手に転移魔法使って他国に行ったら外交問題か・・・。

 そう言えば、私が見た限り王弟殿下が移動してるのいつも非公式だな・・・。



 王弟殿下、宝の持ち腐れなんじゃ、いえなんでもありません。

 ええ、なんでもございませんとも!!



「おお!これはこれはルメール王国のパーシアス殿下!・・と、ええとお嬢サマ」



 コロセス遺跡の入り口に移動すると、門番らしき人に大歓迎された。・・・王弟殿下がね!!

 なんでこんな小娘が一緒に?と顔に書いてある彼。


 ふむふむ、例の忌まわしき二つ名と私の顔は、まだまだ一般では一致していないようだ。

 

 よし。よし!!



「ワガ国の、えーっと両皇子のためにアリガトウゴザイマス!ささどーぞこちらに!!」



 ・・・・・あぁ、なんて棒読み、かつ適当なんだ!!


 有名観光地の門番にしては体格が良すぎて傷だらけで棒読みのお兄さんよ。


 あからさますぎるぞ?存在自体が既にあからさますぎるぞ??

 罠?罠だよね???


 台詞も棒読みだし、見るからに演技だし、その上ものすごい下手だ。

 ・・・・これ!チラチラと手を見ない、見ないの!!


 あーいや、これは、あれかな・・・一周回って逆に罠じゃないとか??


 王弟殿下と『コレ乗るんですか?』『・・・しょうがないかな』と小声でやり取りしつつも、大人しく偽門番の後ろに続く。



「ぇぇと・・・コチラで二人の子供を見たという、・・なんて読むんだ?もくげき、証言・・そう!目撃証言があったのですよ!」



 ・・・・いいから、もう手の平の文字見ながらでいいから、もう少し演技してくれぇぇぇ!!

 この大根役者偽門番にどう反応すべきか、真剣に悩み始めたところで、彼の・・目的地に着いたようだ。


 くっ!この大根役者が裏道を進んだお陰で、コロセス遺跡で有名な闘剣の間も舞姫の間も、どこも!見れなかったじゃないか!!


 もちろん、『コロセスパン』も食べられなかったよぉぉぉぉ!!!

 せっかくコロセス遺跡にいるのに・・・くすん。



「さあココです!では!ワタシはこれで!」



 自分の役目は終わったと言わんばかりの笑顔で言い切る大根役者。

 君の案内でこの薄暗い部屋の扉の前に到着したが、此処まで来るのに、隠し通路を通ったり、地下道を通ったり、としたわけで・・・・・。


 ・・・・こんな、奥まった部屋、どう考えても、誰も目撃できないよねぇぇ??!!

 誰が証言したのかなぁぁ!!??私、とっても、気になるなぁぁぁ!!??


 そんな疑惑の目でしか見れない私達のことなどお構いなしに、足取り軽く元来た道を帰る大根役者。



 ・・・・・・・・あれはあれで幸せな人生を送れそうだな。



「・・・・入ろうか」

「・・・・そうですね」



 多分この部屋に双子もいて、今回の黒幕もいるんだろうな・・・。


 ・・・・・ダレカナーキニナルナー。


 あぁ、今からでもオウチカエリタイ。百歩譲って補佐官様のところでもいい、カエリタイ。



 だが、無情にも王弟殿下の手によって、扉は開かれるのであった。





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