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4話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 大分不安感のある隣国アルファイド皇国の、女嫌い第二皇子のことは忘れ、フェイラス帝へお目通りを願う人たちの列に並ぶ。

 それにしても、やっぱり我先にと並ばないのね・・・。

 何処もかしこも、不安感煽ってくるなぁ・・・。

 

 そして、これが外交か、私には無理だな無理。

 あぁ、列が疎らで直ぐに順番が来そうだ。



「ルメール王国パーシアス殿下、並びフローラ・ネクロ補佐官殿、・・・ルルリーア・タルボット嬢!」



 もう我らの順番になったようだ。

 ・・・・・私の名前で一瞬詰まった彼は悪くない。こんな所に連れてきた王弟殿下が悪いのだよ。


 フェイラス帝と双子を前に出て、三人で一礼する。もちろん立礼だ。

 あれから時間が経ったというのに、双子からの視線は変わらないままだね。


 そんなに見るなって!!王弟殿下に睨まれちゃうから!!



「お久しぶりにございます。フェイラス帝にかれましては、変わらず健勝な御様子、帝国は安泰でございますね」



 滑らかに嘘を吐く王弟殿下。嘘が上手かッ!

 なんだか皇国を見た後だと、うちの国ダイジョブなんだな、と安心する。王弟殿下なのにな。


 フェイラス帝との謁見は、王弟殿下に全部まかせていいんだそうだ。やったね!楽だね!カーテシーするだけだもんね!!

 こっそりフェイラス帝の様子をうかがうと、その後ろに影のように寄り添っている枯れ木のようなおじいさんが見えた。


 あれが帝国の賢者様か、帝国では『賢者』はただの称号で、実際は『相談役』みたいな立ち位置だ。

 うーーーん、賢者ねぇ・・・・それにしても、身体折れそうに細いな!そこばっかり気になっちゃうよ!

 その賢者の身体を私が心配していると、枯れ木賢者がフェイラス帝に何事か耳打ちする。



「ルメールの。ふむ、大儀であった」



 ・・・・?なんだか会話がずれているような気がするけど・・・。



「では、我らはここで失礼させて頂きます」

「うむ、良きにはからえ」



 いやったぁぁぁ!!オウチ、には帰れないけど、この会場からは出られる!!


 フェイラス帝の受け答えに違和感を感じたけど、もういいや!!

 私の、帝国側に割り当てられた部屋だけど、そこに戻れるぅ!!!


 ウキウキする私と対照的に、王弟殿下とネクロ補佐官様は深く考え込んでいるようだ。

 どうかしたのかな??



「ここまで進んでいたとは、決起は近いな・・・ちっ証拠がまだ足りないね」

「そうですね、私の見通しが甘かったです。・・・不手際の私消えればいいのに」



 補佐官様って自分にも厳しいのね・・・。それにしても不穏な単語が色々と聞こえてくる。

 何?決起って、また帝国内乱でも起こるの?


 いやいいです、説明いりません。

 いざその時になったら私を国に帰してくれれば十分です。


 まっ、私に出来ることなんて殆ど無いし、部屋で、大人しくのんびりと過ごそー!!





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 あぁ、まったく何だというのだろうか。


 目の前には、ヴェールで顔を隠した、二人の子供が居る。

 どうやら隠し扉から来たようだ。


 対してこちらは、あの恐ろしい金額のドレスを速攻で脱ぎ、お茶でも飲んでから寝ようと思っていたので、ゆったりしたドレスに化粧も飾りも全てない状態です。


 ・・・・なんの用かな?このまま黙ってたら、帰ったりしないかな?



「あ、あの!!僕達のこと、覚えてますか?」

「たった1年前のことだぞ、覚えてるに決まってんだろ?なぁ、ルルリーアお嬢様??」



 ・・・やっぱりあの双子だったかぁぁぁぁ!!

 嘆く私の肩が突然重くなる。


 あ、私これ最近やられた。そうそう、後ろを振り向くとそこには----



「君は、本当に、何なんだ?」



 はい、古の混沌たる邪神様ですねー。私の部屋だけど居るって知ってた知ってた。



「説明、してくれるよね?」

「も、もちろんであります!!」



 えーと、あれは何年前だっけ・・・「二年前だよ!」あーそうそう二年前。


 我がタルボット領に代々仕える部下が、防波堤に引っかかっていた海藻塗れの人間二人を拾ってきたことを、学園から久々に帰省した私に報告したことから始まる。

(その時、父様母様は新婚気分で旅に出てるわ、兄様は王宮に出仕してるわで、私しかいなかったのだ、不運!)


 もちろん私は常識的に行動しましたよ?『拾ったところに返してきなさい』ってね。

 そうしたら、ぐったりしてると思ってた人間が急に跳ね起きて『戻したらおれたちは死ぬぞ!』と叫んだのです。

 びっくりしたし『死ぬぞ』なんて脅されてしまったので、仕方なく、我が家の忠実なる部下の養子にしたのです。


 そうして一年が経った頃、二人は忽然と消えたわけです終わり。



「・・・・それで終わり?」

「もちろんです、王弟殿下。部下に預けっぱなしでしたし」


「おい!嘘をつくな!!!もういいおれが説明する!」



 そう叫んだのは双子の、口の悪い妹の方だった。


 えぇ??いいけど、変わらないと思うよ?


 彼女曰く、海藻にまみれた二人を『返してこい』と私に言われたのは本当で。(王弟殿下に冷たい目で見られた)

 でもその後『貴方達色々とボロボロね・・・うち弱小領だから、巨大な権力来たら守りきれないけど、それでもここで生きたい?』と続けて言われて、何が何でも生きてやるっ!と思ったらしい。


 ・・・親切心で言ったんだけど、どうも死を願っているように聞こえたらしい。悲しい話ね。


 頷いたら養子となっていて、男女関係なくそれはもう徹底的に体術剣術魔術を叩き込まれた、と。

 いやいや常識の範囲内ですよ?だってルメールの民になったんですからね??


 そうして稽古をしていると、私がたまにやってきて、『その髪色やばいからコレで染めな』とヘドロのような緑の物体を寄越してきたり、散髪していると『顔がよく見えるとやばいから前髪長めで』とか言ったりと、正体を隠そうとしてきたと。


 その後、帝国からの迎えが来てしまったので、迷惑をかけられないと連れられて帰ったそうな、ちゃんちゃん。



「・・・・つまり、ルルリーア嬢は、このお二人が、フェイラス帝の血を受け継ぐものであると知っていた、ということだな」

「えぇぇぇ・・・だってそうじゃないですかー。フェイラスの皇族の代名詞である紫髪をしてたんですよ?気付くなって方が無理だと思います」


「なぁ!そんなのどうでもいいんだよ!!」



 まだ聞きたそうにしている王弟殿下を遮って、彼女はヴェールを毟り取る。ソレをみたもう一人も、躊躇いがちにヴェールを脱ぐ。

 ・・・・顔出しちゃ駄目なんじゃなかったっけ?


 まあ私はもう二年前に不可抗力で見てるけどさ。


 生意気そうなつり目で濃い青紫の髪の持ち主が妹の『ユユイ』、大人しそうな垂れ目で薄紫の髪の持ち主が兄の『ナナイ』だ。

 うん、私覚えてる。名前合ってるよね??あれ・・『ニニイ』だったかな・・・いや『ユユア』に『ナナエ』・・?



「「助けてほしいんだ!!」」



 おお!双子ならでは、息ピッタリだね!!

 ・・・え?助ける??私??こらこら双子よ、君たちはいまや唯一の皇位継承者なんだぞ??

 他国の人間に、そんなこと言っていいのか??


 私が返事をする前に、王弟殿下が双子に、まるで良い人のような顔で柔らかく微笑む。


 アイよユイよ。顔を赤くしてる場合じゃないぞ。

 目の前の御方こそ、君たちがもっとも警戒しなくちゃいけない邪神様なんだぞ??


 そんな声に出せない忠告を無視して、双子は王弟殿下に切々と話してしまった。



「おれら、もう限界だったんだ」「皇帝陛下がどんどん喋らなくなって」「全ての指示をあの賢者様が出し始めてたんだ」「そうしたら僕達のこと『穢れた血』っていい始めて」「食事の毒もどんどん強いものになってくしさ」「暗殺者も来るようになって」


「「お願い!助けてよ!!」」



 二人共真っ赤になりながらも切なる願いを込めて、交互に伝える。

 さぁ、王弟殿下はどう出るかな?


 少し沈黙した後、殿下は人の良さそうな顔のまま、双子へ優しく問いかけた。



「君たちは、助けられた後、どうするつもりだい?」



 ただ単に命だけを助けるのはそう難しいことじゃないよ、と王弟殿下は続ける。

 そして、滑らかに柔らかに、言葉で双子を的確に確実に抉っていく。



「平民になる気? その髪色がある限り無理だね」

「今のまま帝国に留まる? 皇国が帝国を狙っている限り生きていられるとは思えないね」

「うちの国に、またルルリーア嬢のところへ行く? 前回は君たちの価値は無いに等しかった、でも今は違う」


「さぁ、どうするんだい?どう動くんだい?」



 人を安心させるような笑顔のまま、追い詰めていく。追い詰められていく。



「おれたちは・・・」「ぼくたちは・・・」



 先程の勢いがみるみるうちに萎んでいき、出せるのはか細い声だけだ。

 はぁ・・まったく、世話の焼ける双子だよ。



「王弟殿下」

「なんだい?ルルリーア嬢」


「ワザと駄目な選択肢ばっかり挙げるのは酷いですよ、子供相手に」

「・・・・ふぅん」



 そう指摘すると、王弟殿下は目を細めて嗤った。それはまるで古の混沌たる邪神が面白いことを言う生贄に遭遇した、と言わんばかりの楽しそうな笑顔だった。

 ・・・なんで私に向けては邪神様になるのぉぉぉぉ!!凍えるっ!!凍死しちゃうううううう!!!



「じゃあルルリーア嬢に免じて、君たちに猶予をあげよう。明日の夜までに私に答えてもらおうかな」



 え、猶予短すぎじゃない?大人げないな王弟殿下、え、あ、なんでもないです。



「「わ、わかった!」」



 王弟殿下の勢いにつられて言ってしまった、という感じだね双子よ。答えほんとに出るのか??


 ではまたここで、と言い残して帰る三人。・・・・帰る三人、残る私。



 えっ、ここに集まるの・・??

 ・・・・・ここ、私の部屋なんだけどぉぉぉぉ!!!???





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 そんな盛り沢山な一日から夜が明けて。



 朝食の時に聞いた今日一番の良い知らせは、私は会議に出なくていい、ということだった。


 なんでも、昨日の夜会で存分に『竜騎士のごにょごにょ』を知らしめたらしい。

 しかし、あまり出しすぎると、私に神秘性が無いのがバレてしまうから今日はいい、とのこと。



 ・・・・まだいうかぁぁぁ!!王弟殿下めぇぇぇ!!



 私に指定された部屋はとても豪華で、寝室衣裳部屋応接間が一人ずつに揃えられていて、更に細やかな彫刻となんか凄く上手い壁画とフカフカの絨毯に彩られていて、居心地はとてもいい。



 ネクロ補佐官様もお留守番なので、一緒に応接間で紅茶を飲む。・・・あれ?ネクロ補佐官様は、補佐官なんだよね??

 王弟殿下と一緒に会議に出なくていいの?


 しかしネクロ補佐官様は、時折漏れる呪詛を気にしなければ、有能かつ知識豊富な話し相手だ。

 とっても楽しく過ごせから、まあいいか!!


 特に、『コレなんだ!』ゲームはネクロ補佐官様が面白いように当てるので、ついつい遊びすぎてしまった。

 あぁ、これで外交の旅じゃなければいいのになぁ。



 -----ぱたん



 突然、扉が開かれる。とそこにいるのは今会議中のはずの王弟殿下ではありませんか。

 どうかしたのかな??



「どうかされたんですか?王弟殿下」

「・・・・えー。あの双子が何者かに拐かされた、らしい」




 ・・・・・・えぇぇぇええええ!!こんな帝国のど真ん中でぇぇぇ!!??

 そ、そんなのってありなのぉぉぉ!!???





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※主人公に興味を持ってもらえなかった、裏設定ですよ!(涙)

※裏設定

・飛水船さん

 主人公が住むルメール王国は島国で、隣国の皇国との距離は近い。なので、魔法で強化したロープで二国間を繋いで電車みたいに走っているのが『飛水船』さんです。風魔法の使い手と魔石で走らせているので、当然コストがかかって、小さな船しか走らせられず、裕福な商人か貴人か王弟殿下のような外交官が利用。主人公は初乗船!なのに王弟殿下と一緒で楽しめない!?←イマココ


・クーラケントちゃん

 大型の軟体な魔物。海の暴れん坊ですが、味は意外と美味しい!他国では『見かけたら即逃げろ』ですが、ルメールの漁師は『見かけたら祭り』とばかりに襲われる哀れな魔物。ちなみにクーラケントちゃんの生息域は、東ルメール。主人公の領は西ルメールなので、何なのあれ初めてみた!←イマココ


・フローラ・ネクロ第二補佐官様

 マイナーな『人間学』を細々と研究していたところ、王弟殿下に発掘されて一躍外交官に!?(本人が喜んでいるかは謎)第一補佐官と両片思いだけど、王弟殿下に阻まれて思いは遂げられていない、【ピー】歳女性。・・・あれ?音がつたわら---


主人公ルルリーア

 なんで外国に行ってるの私観光したいよあれ?不穏な空気がもうオウチニカエリタイ←イマココ


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