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3話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 花の都ヴァリに着いてすぐ、帝国兵士たちに取り囲まれ、(私の)目当ての水晶宮を、じっくり眺める事もできなかった。

 

 うぇぇぇえん!せ、せめて、周りをぐるっとするくらいはしたかったぁぁぁ!!


 

 あれよあれよと言う間に、我らルメール王国一行は、とある客室に押し込められた。

 ・・・丁寧な態度ではあるけど、急かされて、普通在るだろう水晶宮の自慢話もなく、連れてこられた。だから、こっちの気分的には『押し込められた』だね!

 

 それに、案内してくれた兵士たち、妙に何かを警戒してるような態度の兵士だったけど、気の所為だよね??

 ・・・・今だに鎧姿なのは、昨年の内乱騒ぎを警戒して、だよね?

 ・・・・武装不可の宮内で帯剣してるのは、再内乱の前準備、とかじゃないよね??



 だれか説明してぇぇぇ!!

 そして、その隙に、私を国に返してぇぇぇ!!



 そんな私の心の叫びを、全く無視して、夜会が始まる。・・・・まあ、中止になることは無いと思ってたけどさっ!


 無情にも始まった、帝国主催の夜会は、贅沢品に囲まれた、とても綺羅びやかなものだった。

 雅やかな音楽が流れる会場。淑やかに笑い合う紳士淑女の皆様。



 ・・・うん!普通の夜会だね!!



 水晶宮に来るまでの道中がアレだったからなー。こう疑心暗鬼になっちゃって・・。

 切合いとか、殴り合いとか、皇帝への簒奪とか、起きるのかなー??と少し期待していたのだけど・・。

 これは、何も起きなそうだなー。



 あぁ、フェイラスに着いてすぐに目的の会議が始まって、その日の内に帰国の途につけると願っていた私の出鼻は、思いっ切り挫かれた。

 王弟殿下曰く、この夜会は、会議前の腹の探り合い時間らしい。


 面倒だな外交、時間を掛けないでくれよ。帰りたいんだよ私は、すっごくなぁぁ!!



 王弟殿下のエスコートで会場に入る私。突き刺さる視線。

 ・・・これは王弟殿下を見てるんだよね?アレでアレだけど、王弟殿下はイケメンだしねー。そっちそっち!!

 

 後ろにいる控えているネクロ補佐官様、エスコートされる役、代わってくれないかな・・・・。

 『嫌に決まってます』って視線感じるよぉぉぉ!!でも代わってほしぃぃい!!

 


 あぁ、本当に、私は何故、此処に在るんだろうか・・・。

 そんな、自身の存在意義という深い考察と言う名の現実逃避をしていると、王弟殿下に偉い人達がこぞって話しかけてきた。


 えぇっと、大公の子息に、共和国元首に、王国の宰相に・・・。


 そんな雲の上の人々に、王弟殿下が『竜騎士の花嫁』と紹介し、『ごきげんよう』と言うと微妙な顔をされる、私傷つきやすい年頃の乙女。

 がしかし、装飾にドラゴンの鱗を使用していると聞くと、皆様感心したように頷く。


 ・・・・なに、着たいの??偉い方々よ。

 王弟殿下が許せば喜んで貸して差し上げるよ??

 

 あーなんかもう、最初は一人一人緊張していたけど、偉い人たくさん見過ぎて、偉いの感覚が麻痺してきたよ。


 エラいって、ナンでしたっけ???



 ・・・・今話しかけてきたのは『色黒のジャガイモ』、不躾な目で見てくるのは『栄養の足りすぎたニンジン』、こちらを全く信じていなさそうなのは『眉の濃いカボチャ』・・・・・。

 

 これなら、名前は覚えられないが、顔は覚えられるぞ!!


 ・・・まあ、この自分の考えが漏れれば不敬罪で訴えられること間違い無しだが、構わない。

 ふふふふっ!知られなければいいだけなのだ!!



 それからも、私は、壊れた魔法道具のように、『ドラゴンに乗りました』とか『ドラゴンは私に従いました』とかを繰り返す。


 ・・・嘘は言っていない。乗ったし落ち着けって言って落ち着いたし。

 ほんのすこぉし、誇張してるだけだ。



「皇帝陛下の、御成ぃ!!!」



 カンッと杖を鳴らし、会場内のざわめきを打ち消すように大声で告げる帝国兵士。


 ちょっと!いきなり叫ばないで欲しい、びっくりして『私はドラゴンに従いました』って言っちゃったじゃないか。

 私の話を聞いてた『人の良さそうなサツマイモ』さんもびっくりしちゃってるじゃないか。



 静まった会場に、フェイラス帝が二人の子供を伴って現れる。

 彼らは、一年前の帝国の内乱で、唯一生き残った皇位継承権を持つ双子だ。

 

 三人とも、ヴェールに覆われていて、その顔を見ることは出来ない。

 えーっと??たしか、皇帝は『現人神』で、下々の前では決して顔を見せないらしい。


 あのヴェール、薄く見えるけど、こっちから角度を変えて見てみたけど。(途中で王弟殿下に頭を鷲掴まれた、解せぬ)

 ・・・おお!本当に顔が見えない!!ちょっと凄いね!!

 


 そんな一人興奮していると、上段に上がったフェイラス帝が、各国要人を見回す。

 

 た、態度がァァァ!睥睨しちゃってるよぉぉぉ!!??

 ・・・・・・・・空気が、悪くなっていく。


 さっと手を上げたフェイラス帝の合図に、音楽は止み会場にいた人々は立礼・・をする。



 ・・・聞いてはいたけど、これ程帝国から各国が離れてると思わなかったわ。誰も膝を折らない。

 むしろ、一番最後に登場し上段に立つ皇帝に対して、不満げな顔をしている人すら居る。・・・若いやつだけだけど。


 うわ、今回の会議、思ったよりドロドロしてるんじゃ・・・。


 ねーねー、王弟殿下ー。

 もう私、帰っていいんじゃない?皇帝出てきたし、帰ろうよー王弟殿下ァァ!!



「よく集まった。ゆるりと過ごせ」



 ・・・えぇぇぇぇ・・・言い方・・ぇぇえ??うーん、なんか、もう、うん。・・・・まあいいか!!!

 周りの人の不満が、更に高まったように感じるけど、まあいいか!!


 その一言で、先程より少しざわめきが大きくなったが、再度歓談が始まる。

 

 ん??あれ、サツマイモさんが居ない・・・おお、彼はフェイラス帝に挨拶しに行ったようだ。

 訂正、できなかったな・・・『ドラゴンは私に従いました』、よし!次からはちゃんと言えるぞ!!



 じーーー



 ????なんだか凄く誰かに見られている。私ものっすごく誰かに見られている。

 誰だろう?と当たりを見回すと、ひたりと視線が合った。たぶん、合った?


 なんせ、ヴェールをすっぽり被ってるからね。しかも子供の方、そして両方から見られてる。



 心当たりは・・・・残念ながら今回はある。ほんとうに、残念ながら・・だ。

 あぁほんとにもう、とっても残念だよ、過去の自分。



 だがしかし!!!


 相手は帝国の皇位継承者の双子、こっちは別国のしがない伯爵令嬢。

 直接対峙することなど無いだろう。

 と思っている。とっても思っている。そして願っている。



 ・・・・ソレよりも。


 双子の視線の先(残念なことに私)に気がついた王弟殿下が、麗しく優しげな顔で『どういうことだ後で吐け』と目で脅してきました。

 こっちのほうが脅威ですわぁぁぁ!!!



 この危機どうしようと考えていると、明らかに酔った様子の男性が近寄ってきた。

 ・・・・どちらの視線も外れてちょっとホッとした。



「これはこれは、ルメール王国の華と名高い、パーシアス殿、ではございませんかぁ??」



 ええぇぇ・・・開口一番、王弟殿下のこと『華』とか言っちゃったよ。


『華』は女性を指す賛辞ことで、男性に言うとその彼を『女性として見てます』ってことになるはず・・・??

 

 ・・・・え???大陸とうちだと作法違うのか??

 いや周囲もざわついてるから、私の解釈であってるんだろう。



 ・・・え・・あーーー・・・・人の嗜好にとやかくいうつもりはないけど、あの、そんな公にしちゃっていいの??

 酔っぱらいさん、告白なら、その、もっと人の居ないところでした方が、いいんじゃないかな??



 酔っぱらいさんが少し気にはなるが・・・・。

 こっちの邪神様は、きっと、いや絶対、怒ってるんだろうな・・・。


 だってアイリーン様好きなんだもんなと、恐る恐る王弟殿下みると、意外と普通の人のように、これはこれは、なんて応じてる。

 あれ?意外とおこってな・・・ぁぅぅ・・・こ、こ、こ、これは、相当、怒ってる!

 黒い何かが出てるのが見えるよぉぉぉ!!!????


 やっちゃったなと思って、哀れ振られそうな酔っぱらいを見ていると、ニヤニヤしながら私にも絡んできた。

 ・・・ん??



「しかし、こんな小娘が、『竜騎士の花嫁』とは、到底思えませんなぁ・・・花嫁ということは、美男と名高いかのルメール最強の騎士団長と、結婚して妻となるのですよ?相応しいように思えませんのぉ!!」



 なんだ、騎士団長にも気があるのか?ってこの絡み方は嫌味を言っていただけのようだ。・・・そちらの方じゃなかったのか。


 っておい、酔っぱらい!私への暴言に一部頷きそうになったが、お前に言われる筋合いじゃない!!

 というか騎士団長と結婚とかしないからっ!!しないからぁぁぁ!!!


 そう憤慨していると、王弟殿下に目で合図されたネクロ補佐官様が、すっと私の前に出る。

 補佐官様ァァァ!!!この酔っぱらいにガツンと言ってやってくださいよ!!



「きさま、女のくせに我が前を遮るというのかっ」



 無駄にだみ声を張り上げて威嚇する酔っぱらい。うーん、声が大きいだけで殺気も全然ないし1点。

 私の周り、恐怖120点ばかり叩き出す人たちが居るものだから、このおじさん全く怖くない。



「あぁあいつ終わったな」「ルメールがアレ連れてくるってことは・・」「皇国は何を考えてるんだ?」「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い」



 なんか周囲の方々がざわざわしてますけど、誰か説明してくれませんかねぇ???


 ざわついている間にも、酔っぱらいにネクロ補佐官様は更に近づく。

 そして隅から隅まで、見られている彼がたじろぐほど、念入りに凝視する。



「アルファイド皇国サイム・ロンデーン伯爵、ベストに隠れて見えない所に口紅・・瞳孔の拡大を確認、女性用のコロンこれは既婚女性より未婚女性が好んで付ける香り・・口元が引き下がったのを確認、少しよれたシャツは情事後に会場入りした・・右頬上部の収縮を確認」



 ぽかん、とてしまう私。ガツンって、え???ネクロ補佐官様って、何者???

 困惑している私を気にかけず、ネクロ補佐官様は、もう顔面蒼白汗だくになって、誰が見ても『あいつが犯人』状態になってしまった酔っぱらいに、結論を言う(死刑宣告)。



「結論、彼は浮気を、本夜会直前にした様子。・・・節操ないわ消えればいいのに」



 ・・・私が予想していたガツン、が、大幅に威力を上回ったけど。

 いいぞ!!ネクロ補佐官様!!


 不倫を、しかも夜会直前までお楽しみだったなんて、この酔っぱらい伯爵、最低だわ。

 大勢の各国要人の前で暴露されて、もう貴族生命、いや人生終わっちゃったね。

 

 クククッ、人に暴言吐くからだっ!!!


 んーー???しかし、こんな重要な夜会にこんな人も来るんだね。

 てっきりこういう外交の場って各国の精鋭が来るもんだと思ってたよ。

 

 あれかな、私とお仲間で無理矢理連れてこられちゃったのかな?でもあれはないわー。


 慌てて駆けつけたであろう多分同国の人たちが、我らに暴言を吐いて自爆した酔っぱらい伯爵を、こちらに頭を下げながら抱えるようにして連れて行く。


 ・・・なんだか手慣れてたように見えたけど、触れない優しさってあるよね・・・。


 そして後に残ったのは、あの、女嫌いで有名の、アイリーン様の信奉者の、第二皇子だよ!!?

 『女嫌い』と『アイリーン様信奉者』が、矛盾している様に聞こえるのは私だけだろうか。いや、サラとかソランくんに聞いてみよーっと。


 そう言えばこの人、女嫌い公言してるくせに、外交とか出来るの??

 他国には、有能な女性外交官が結構いるのに。その人達にも、『女は軽薄だ』とか言うの??


 いやー、さっきの酔っぱらい伯爵と言い、女嫌い皇子と言い、ちょっとだけ、ほんのちょおおっとだけ、皇国が心配になってきたわ。ほんとちょっとだけね!



「助かった、パーシアス。あいつには手を焼いていてな。・・しかし、今回はネクロ殿を連れてこなくても良かったのでは?」

「貸しにしておいてあげるよ。・・・今回は毒だらけだからね、こちらもとびっきりの毒を用意しただけさ」



 ほう、とわかったようなわかってないような、曖昧な態度を王弟殿下に返す第二皇子。わかってない方に私金貨1枚!・・・まあ私もよくわからんけどな!


 そして健気にも、女嫌い皇子に見つからない様気配を消していたのに、私の方を見て嫌そうな顔をする。って顔に出すなよ!!

 外交問題にするぞ?ネクロ補佐官様がね!!



「その子は?」

「今話題の『竜騎士の花嫁』だよ?・・・昔のよしみで、教えてあげるよ」



 人の悪い顔でニヤリと笑う王弟殿下。・・・悪い顔なのに、人の枠に収まっているだけでどうとも思わなくなった私、不味いかもしれない。



「彼女は、『特殊』なんだよ」

「・・・・・頭でも打ったか?」



 顔を顰める女嫌い第二皇子のその態度に、怒るでもなく肩を軽くすくめる王弟殿下。



「君が信じないのであれば、そのままでいいよ」



 王弟殿下の言葉を真面目に考える女嫌い第二皇子に、フェイラス帝へ挨拶しに行くといって置き去る。


 さっきの酔っぱらい伯爵など、最初から存在しなかったかのようだね!

 

 まあ仕方ないかな、むしろ優しいのか?いや王弟殿下のことだ。絶対後で報復する。

 これは金貨10枚賭けてもいい。


 ちなみに殿下の言葉を私も考えているが、私『特殊』なんて言われるようなこと、したことないぞ??

 きっと嘘だから。王弟殿下適当に言ったんだよ、真面目に考えちゃ駄目だよ?女嫌い皇子よ。



 ・・・そう、深く考えたらきっと、負けなんだぁぁ!!





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