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2話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 あぁ、時と言うものは早く通り過ぎるもので。


 我ら一行は、花の都と名高いフェイラス帝国の首都ヴァリにもうじき到着する。

 今は凋落した帝国であるが、最盛期に建てられた建造物がそこかしこにあり、『観光するならフェイラスのヴァリ』なんて言われるほど、人気のある観光国なのだ。



 なので、ルメール王国から出国したのが初めてだった私は、外交とはいえ私は外交官ではないからな!どんな名所を回れるだろう、と期待していたのだが・・・。



 フェイラス帝国はもちろん、経由した隣国アルファイド皇国すら、観光できませんでした。ぐすん。



 道中、妙に組織だった盗賊に襲われたり、泊まった宿の食事に薬を盛られたりと、それはもう色々とあった。


 ・・・その御蔭で、駄目元で『観光は・・・』と言ってみましたけど、護衛の騎士様に『警備上の問題がありますから』と完璧な笑顔で押しとどめられました。

 私ルルリーアは、馬車からの景色と宿屋の部屋しか見ておりませんが、何かァァァ!!!



 しかし襲われる度に、王弟殿下は護衛の騎士様たちと共に、盗賊を退治し、間諜っぽい人を捕らえてたなぁ・・。

 例の邪神様の顔で楽しそうに証拠らしきものを彼らから剥いでいたし。


 ん??あれ??王弟殿下って、国王陛下の弟という守られるべき貴い人じゃなかったっけ?

 そういうのは騎士様に任せて観光を・・・あっいえなんでもありません、ワタシ、イイツケ、マモル。くすん。



 花の都ヴァリの一つ手前の街で、正装に着替えを済ませた私達は、目的地であるフェイラス帝国水晶宮へ向けて馬車に揺られているところだ。

 その名の通り、外壁がまるで水晶のように透明感溢れ、毎晩夜会が行われ夜明けまで火が絶やされないことから、別名『ヴァリの不夜城』と呼ばれている(出典『世界の観光地~フェイラス編~』より)


 ・・・まあその水晶宮は見れるだろうし、それで我慢・・・いやだぁぁ!!


 せめて、せめて!オススメのコロセス遺跡には行きたい名物の『コロセスパン』が食べたいいいいいい!!!



 観光に未練たらたらな私をまるっと無視して、王弟殿下はまるで物分りの悪い子に言い聞かせるように道中繰り返していた話を、また話し始めた。



「いいかい?ルルリーア嬢。かつて巨大だった帝国が7つに袂を分かったのが60年前、だからといって、各国は未だ緊張状態だからね。気を抜いてはいけないよ」



 そんな緊張感のある会議に、私を連れて行かないで下さい王弟殿下。


 そう、これから私が行くのは、7カ国、我が国も入れると8カ国が一堂に会する、大規模な会議だ。



「加えて帝国は昨年内乱を経験したばかりだ。恐らく地続きの元同胞よりも、遠く離れた、しかも資源豊富な我が国を目の敵にしてくるだろう」



 だ、か、らぁ!!


  なんでそんな時期に私みたいな小娘を連れて行くんですかね王弟殿下!!??

 恨めしい気持ちを込めて睨むも、殿下は全く意に介さない。



「そこで『竜騎士の花嫁』の登場、というわけだ」



 どういうわけなんですか、いや道中散々言われてるから知ってるけども。

 はいはい、現実逃避してましたよ。いいでしょソレくらい。


 王弟殿下曰く、我が国に難癖をつけて来ようとする国々を、『竜騎士』が本当に居るように見せかけて牽制するんでしたっけね。

 騎士団長は国防の要、容易には動かせないから次点の私、って私の扱いが酷いィィィ!!!



「いいかい?存分にドラゴンとの関係を吹聴して回るんだよ?」

「ぇぇえ・・・はいわかりました」



 嘘はちょっと、とか思って濁したら、不届き者を見る古の混沌たる邪神のような目で見られたよ!!

 くっ!寒いぃぃ!!視線が凍るように寒いィィ!!


 わかったから!嘘でもなんでもいうから止めてぇぇぇ!!



「ちなみに、大きい方のドラゴン関連の話は厳禁だから」



 それも何回も言われましたぁぁぁ!!サラにも言われてるし、わかりました天眼竜様のことなんて忘れちゃえばいいんですね!!??

 そこまで私に言ってようやく満足したのか、今度は私の姿を値踏みするかのように見てきた。



「・・それにしても、ルルリーア嬢は・・・・うーん、神秘性に欠けるね・・・。もっと盛れなかったの?」



 悩ましげに溜息をつく邪神様、じゃなかった王弟殿下。

 平凡な容姿で悪かったなァァァ!!自分では気に入ってるんだよ余計なお世話だよ!!



「ルルリーア嬢のお召し物は、最高級の絹と刺繍、縁にドラゴンの鱗の粉末、喉元にはブルーダイヤ、髪には真珠を編み込んでおります。これ以上飾るとルルリーア嬢が負けます。・・・・配慮の出来ない殿下消えればいいのに」



 補佐官様の言葉も十分私を抉っていますゥゥ!!このなんかキラキラしたやつ、一匙で小国が買えると噂の、ドラゴンの鱗の粉だとぉぉぉ!!

 ぬ、脱ぎたい!このドレスもう着てるのやだ脱ぎたい!!!



「花鱗でも輪にして頭に飾る?」

「ルルリーア嬢を道化にしたいんですか?却下です。・・・・悪趣味な殿下消えればいいのに」



 花鱗って私が撒いてた、貝殻を薄く削ったアレですよね??

 この上から下まで高級品で揃えた格好に、貝殻を輪にして被るとか補佐官様の言う通り、アホにしか見えないよ!!


 って二人共!!聞こえてるから!同じ馬車に乗ってるよ私!!

 存在感を出せばいいのか、いやもっと酷い未来が私を待っている、ような気がする。


 もうなんでもいい、なんでもいいから早く終わらせてくれ。



 馬車の揺れが止まる。



「殿下、到着致しました」



 馬車の外から、護衛の騎士様が事務的に告げる。・・・今から引き返しませんか?しないですよね、ですよねー。


 すると、古の混沌たる邪神が無様に堂々巡りをする人間を面白がるように、目を細める。

 いやぁぁぁ!!寒気がぁぁぁ!!ココ寒いオウチカエリタイ!!!



「さぁ本番だ。・・・道中色々と饗して貰ったからね。たっぷりとお返しをしなくては、ね」



 誰だか知らないが相手が可哀想に、ならないな。襲われたし薬盛られたし。

 さぁ!どこぞの不届き者め!邪神様の報いを受けるがいい!





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