1話
2017/5/15の2回目の更新です。ブックマークでこちらに来られた方は、お手数ですが前話をお読み下さい。
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はぁ、頬に当たる潮風が気持ちがいい。
ごきげんよう、燦々と輝く陽の光を浴びております、ルルリーアでございます。
あ、遠くで何かが跳ねた。あの大きさだと・・・魔物かな?
「さあさあ、右手に見えますはぁ、この海域ではぁ珍かな、『船落し』として有名なぁ魔物、かのクーラケント、でぇございまぁす!」
私達が乗る『飛水船』の船尾の縁に、器用に立ちながら陽気な声を上げる船頭さん。
・・・・え?え、演出だよね?『船落とし』とか言ったのかな?船頭さんや?
この船落とされちゃうのぉぉぉ!!??
その私の不安を物ともせず、船頭さんは大きく手を広げ、更に声を張り上げる。
「しかぁし!ご心配めされるな、みなさまぁ!この辺りは水深も浅くぅ、やつらが近づくことはぁ滅多に出来ませぇん!」
その言葉、不安しか煽られない!
船頭さぁぁぁん!!自信満々の笑顔だけど今言った『滅多に』という一言で全てが台無しだよ!!
「・・・つまり私達は海の藻屑と消えてしまうかもしれない、ということですね・・・不吉なことを言うわ消えればいいのに」
そう船頭さんより不吉な事を言っているのは、外務大臣である王弟殿下の第二補佐官、フローラ・ネクロ様だ。
・・・彼女の周りだけ、太陽の光がねじ曲がって暗く見えるのは気のせいだろうか、うん気のせいだな。
そして、小声で付け足した『消えればいいのに』は、あの魔物に言ってるんですよね??
決して、船頭さんに言ったわけじゃないですよねぇぇぇ!!???
「お、幸先がいいね。私はこの飛水船を結構利用しているけど、クーラケントは三回しか見られなかったからね。ルルリーア嬢、よく見ておいた方がいいよ?」
そう爽やかな笑顔をつけてのたまうのは、今回の犯人、王弟殿下でございます。
・・・・何回渡航して、三回遭遇したのか、是非聞きたいもんですな・・・。
そして、なんでこっちを攻撃してきそうな魔物をよく見にゃならんのだよ。嫌だよ!!
あぁもう帰りたい帰りたい、無性に今すぐカエリタイ!!
「ほら、あそこだ」
そう言うと、王弟殿下はごく自然に私の腰(!?)をとり、憎らしい魔物がよく見えるところへ誘導されそうになった。
のを、躱す。ものっすごく距離をとって躱す。
・・・こうも簡単に躱せるってことは、完全にからかいに来ておるぞ!!このたらし王弟殿下め!!
ソレを見ていたネクロ補佐官様が、ポツリと零す。
「未婚の女性を勝手に触るなんで・・・女の敵消えればいいのに」
「おや、淑女をエスコートするのは紳士の勤めだよ?」
何かの影を背負ったままボソリと毒を吐くネクロ副官様、をまるで気にしていない笑顔の王弟殿下。
ありがとうございます!補佐官様ァァ!!でも上司にそれ大丈夫なんですかぁぁ!!
「はぁ、女性二人と共に、という字面だけ華やかな旅だと言うのに、二人に嫌われてしまったかな?」
悲しむように、呆れるようにいっているが、私にはお見通しだ。目が、笑っているんだよ!!!!
・・・王弟殿下。私は言いたい、大きな声で言えないけど言いたい。
-----犯人はお前だっ!
あぁ、なんでこんなことにぃぃぃ!!!オウチニカエリタイィィィ!!!
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天眼竜様の所為で王都に呼ばれました。
・・・・そしてなんと、最強の呪文『王命』を発動され、為す術もなく王都に留まることになりました。ぐすん。
そうこうしていると、アイリーン様が『いせかいのにほん』から来た、と言う衝撃の事実が発覚。
びっくりでしたなー。
そのあとは、特に何もなく、何事もなく、平和な時間を過ごしてました・・・まぁしぃたぁ!!!
いつもの通り陛下に呼ばれ王宮へ王家秘密通路を通って向かう。
・・・あぁ、また陛下の愚痴でも溜まったのかな、この間みたいに偉い人たちに囲まれるのは勘弁して欲しいな、なんて呑気に構えていましたよ。
いつもの部屋に、王弟殿下が居るのを見るまではね!!
くるりと反転してお家に帰ろうとした私の手を、嫌味なくらい自然に取りやがった王弟殿下。
今までとの態度の差に呆気にとられていると、すとんと着席させられた。
王弟殿下と、騎士団長の、間になァァァァァ!!
「まあまあ、そう急がずに」
王弟殿下が私を宥めるように言うが、急いで帰りたくなったのは、お前のその胡散臭い態度のせいだよぉぉぉ!!
国王陛下!助けてぇぇ!!
『バレた許せ』と目で謝る陛下。謝るのいいからこの状況どうにかしてぇぇ!!!
「ささ、いつも通りで問題ありませんよ?陛下」
にこやかにいう王弟殿下。・・・偽物か?いやこんな人が何人もいたら国が滅びるわ。本物か。
いやいや、とモニョモニョ言いながら言葉を濁す陛下。そうだよね、本人の前で当人の愚痴を言えないよね。
とても早く帰りたい私は単刀直入に聞く。
「あのー、王弟殿下はなぜココに?」
すると胡散臭くも爽やかな美丈夫、といった風情であった王弟殿下の雰囲気が、私の一言で一変する。
それは、秘密通路で私を追い詰めたときでも、アイリーン様の部屋で私を睨みつけたときでも、天眼竜様のことで私を問い詰めたときでもない、どの王弟殿下にだって似ても似つかない、酷く邪悪な笑顔だった。
そうそれはまるで、古の混沌たる邪神が生贄をいたぶろうとするかのような、楽しげな顔だ。
・・・・あぁ、わかったよこれはあれだな。サラと同類か王弟殿下、そうでしたか。
そしてこっちが本性かァァァ!!
「もちろん、ルルリーア嬢を旅に誘うためだよ」
その邪悪な笑顔のまま、とんでもない事を言いだした王弟殿下。どういうことなのぉぉぉ!!
「最近、大陸の方が騒がしくてのう。頼む、ルルリーア嬢」
「そうそう、『竜騎士の花嫁』として、存分に目立って威嚇してほしいんだ」
そう言うと、王弟殿下は私の髪を一房取って、指に絡め始めたァァァァ!!いやぁぁぁ!!
速攻で髪を引き抜いて立ち上がり、騎士団長と肘掛けの狭い隙間に入り込む。
こんの!!女の敵めぇぇぇ!!
強制的にどいてもらったクッションを抱えて、王弟殿下へ睨みつけ威嚇する。
そんな私を見、騎士団長は溜息を吐いた。
「殿下、女性をからかうのは感心しません」
「へぇ・・・・」
至極まともなことを言った騎士団長を、まるで活きの良い生贄が足掻くのを喜ぶ古の混沌たる邪神のような顔で王弟殿下は見る。
こっ怖い顔したって、駄目だからねっ!!
「拒否します!断固拒否します!!私ルメール王国を愛してますからこの国から出ません!!」
心からの私の叫びに、三人は顔を見合わせる。
「もう会議で決まったしのう」
「決定事項だからね」
「・・・諦めろルルリーア嬢」
なんでなのぉぉぉ!!!
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「ルルリーア嬢。呆けていると落ちてしまうよ?」
魅了するように微笑む王弟殿下、を冷たい目でみるネクロ補佐官様。
・・・私、王弟殿下に全てを押し付けられて死んだ目をした第一補佐官様と一緒に、国に残りたかったァァァ!!愛するわが祖国よ!私を迎えに来てぇぇぇ!!
にいさ『呼ぶな』・・・冷たいいいいいいい!!
実の兄に見放された我が身を嘆いていると、船頭さんが陽気に告げる。
「まぁもなくぅ、アルファイド皇国ぅ、アルファイド皇国ぅ!お忘れ物のなきようぅお気をつけくださぁい!!」
海を裂くように進んでいた飛水船が波止場に近づいて速度を緩める。
我がルメール王国の隣国だ。もう着いた、もう嫌だ。
あ、あっちに帰りの飛水船がぁぁぁ!!
羨ましそうに反対側のルメール行の飛水船を見ていると、後ろから、肩に手がぁぁぁぁ!!!
「さぁ、目指すは帝国だ。まだまだ先は長いよ?ルルリーア嬢」
振り向くと、お前の考えていることなどお見通しだと言わんばかりの、王弟殿下の顔。
・・・・・カエリタイ、いますぐ、カエリタイ!!!
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