表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/86

2話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





 《何やら騒がせたようだな。鱗無き者よ》



 悠然と庭に設えた東屋の長椅子に座りながら、人型ドラゴン様は鷹揚に笑った。

 その容姿はどこにでもいるような藁色の髪の少年であるが、それ・・が与える威圧は酷いものだ。



 ええと、どうしよう。



 館の使用人たちは、怯えて一室に篭もるか逃げるかして、私を手伝ってくれるものは居ない。

 ・・・・・ドラゴンをもてなすにはどうしたらいいのかな・・・。肉かな、私焼けないから生肉でいいかな。



「あの、何か召し上がりますか?」


 《構わぬ》



 いや、私が構うんだけどな・・・。

 事態が私の手に負えなすぎて、何かが振り切れたのか、平静を保てている。しかもお腹空いてきた。


 なんか適当に用意するか。






「お待たせ致しました」



 私用に、サンドイッチ(適当に切ったハムとチーズを丸パンに突っ込んだ一品)と紅茶。

 人型ドラゴン様用に、以前陛下から下賜された王家秘蔵のワイン。(大人?には酒を出しとけばいいはず)


 父様が自分用にこっそり残しておいたものだが、まあいいだろう。


 とりあえず、ドラゴンがどのくらい飲むかわからないから、樽で持ってきたけど、問題ないかな?

(樽は仕方がないので足で転がしてきた。・・・・仕方がないからね??)



 《ほう、良い香りだな》



 おお、気に入ってもらえたよ、って人型ドラゴン様。グラスじゃなくて樽から直接飲んでるよ。

 傍目からは線の細い少年が、大樽を傾けてワインを零さず飲むという、異様な姿だ。

 ・・・・・ドラゴンは酒豪なのか??



「ええと・・・なんとお呼びすればよいでしょうか?」


 《ふむ。そうだな、鱗無き者たちの言葉では、我は『天眼竜』と呼ばれておる》



 ・・・・何も考えずに聞いてみたが、ドラゴンにも名前があるのか。

 うわ、これ学術的大発見なんじゃ・・・。いや今は目の前の存在に集中しろ!!私ぃぃぃ!!



「ありがとうございます。それでは、天眼竜様。本日はどういった御用で?」


 《うむ。少し前に我が眷属が迷惑を掛けたようだからな。謝罪をしにな》



 ・・・・・・・・・・・それ、あの竜舞踏祭で私にぶつかりそうになった駄ドラゴンのことですよね????

 ちっ!騎士団長の方に行けばよかったのにっ!!!!



 《それに、れがお主に逢いたがっておってな。面白そうだから我が来たのだ》



 駄ドラゴンっっっっ!!!お前のせいかぁぁぁぁぁ!!!!

 私の二度寝を返せぇぇぇぇ!!!



 《まぁ、巣が定着したでな。鱗無き者たちの様子を見ておかねばならんかったからの》



 ・・・・ドラゴンたちが来たの、600年前なんだけど。ドラゴンの時間感覚がわからん!!!


 私への謝罪よりも、ソッチのほうが重要な気がするのはわたしだけだろうか???



「はぁ、そうなのですか」


 《地脈の流れが想定より速く影響範囲も広かったようだな》



 え?何言ってるんだろう??

 私じゃなくてあのマニアたち(魔術師団長と神官長)とのほうが有意義な時間が過ごせそうだよ?天眼竜様。


 私が理解していない様子にも気にせず、天眼竜様は器用に樽ワインを飲みながら話を続ける。



 《其の所為か、時間軸が歪んでしまったでな。鱗無き者たちも此の地も数多あまたの異界からの影響を受けたようだ》


「はぁ」



 ・・・自作のサンドイッチでも食べよう。もぐもぐ。

 なんだかさっぱりわからん。後でサラかソラン君にでも聞いてみよう。いや、ソラン君はあのマニアの片割れ(魔術師団長)の養子だしな。サラにしよーっと。



 《それにしても旨いな!もっとないか?》


「申し訳ございません。それが最後の一樽でして・・・」



 樽を振りながら最後の一滴まで呑もうとする天眼竜様。・・・・ドラゴンの威厳はどこに・・・。

 何しに来たんだ?最初に感じた威圧感、もう感じないわ。



 《惜しいのう》



 ちょっ!こら!樽を分解して内側を舐めない!!!行儀悪いなってドラゴンだからいいのか???


 天眼竜様は一心不乱に樽を舐めているし、これ以上ワインは無いし、私もサンドイッチの残りを食べるか。



 ・・・・・それにしてもやっぱり異様な光景だな、コレ。

 私食べ終わったらどうしよう。ワインも無くなったことだし帰らないかなー天眼竜様。


 そう言えば、樽の木片で顔は殆ど見えないが、御伽話だとドラゴンが人化したら凄い美形になるもんじゃないのか?

 凄く地味顔だよね、天眼竜様。実はドラゴンが美形って幻想なの??



「あのー。天眼竜様の、その御姿は?」


 《ぬ?あぁ、此れか》



 もう一つの姿、とかなのかな?天眼竜様の秘密に迫るっ!!!わくわく。



 《小さく成るにも手本が有った方が容易いからの。鱗無き友の姿を借りたのだ》



 きっ気になる!!え、誰なのぉぉぉぉ!!!天眼竜様の友達!!

 聞いてもいいかな??いいかな???



 《うむ!満足した!ではまたの》


「へ?」



 そういった瞬間、忽然と姿を消す天眼竜様。

 残されたのはバラバラにされて染み一つない樽と呆然とする私。



 ええええぇぇぇえええ!!!???自由っ!!??自由なのっ!!!???

 いきなり来ていきなり帰ったよなんだったの?今までの時間・・・。



 なんだったのぉぉぉぉぉ!!!!!




『また』と言う言葉は不吉すぎて聞かなかったことにした。

 ・・・・・ことになんて、出来ないよねぇぇぇぇ!!次は最初から小さい姿でお願いしますぅぅぅうううう!!!








 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「ルルリーア嬢は一体何者なんじゃ?」

「そう言われましても・・・・」



 頭を抱える陛下。ふふん、いつも私に色々押し付けるからだ!悩め悩め!!



 天眼竜様が帰ってから数分後、王家緊急用の伝書鷹が飛んできて『王都に来るように』と命じられて7日後、王都にようやく着きました。すみませんね田舎なのでね!うちは。

 着いて早々に攫われるように陛下の元へ連れて行かれたが。


 もちろん鷹が来て直ぐに兄様が返信してくれたのだが、巨大な天眼竜様は王都からもよく見えたようで、王都中大混乱に陥ったらしい。



 へーーー。



「つまり、竜舞踏祭のあのドラゴンの代わりに謝罪に来た、だけなのじゃな?」


「はい。あと陛下から頂いた王家秘蔵のワインが甚く気に入ったようで、『また来る』と言われました」



 クッションを顔に押し付けて呻きながらゴロゴロし始めた陛下。

 その気持ち、痛いほどわかります。



 バーーーーン



「「ルルリーア嬢っ!!」」



 誰だよ!扉を吹き飛ばして入ってくるやつはっ!!

 うわっ粉々だよ!どうすんのさ!!王宮の備品なのにっ!!


 そしてやはりお前かっ騎士団長!!げぇ!!王弟殿下も居るぅぅぅうううう!



「君は一体何者なんだっ!」

「怪我はないかっ!」



 ぇぇぇ・・・なに?なんなの?同時に喋りかけないでよ。


 王弟殿下、何者って・・・陛下と被ってますよ?うぷぷ。

 騎士団長、ま、まともな心配だとっ!?お、おそろしいぃぃ・・・。



「ついこの間、ドラゴンに乗ったと思えば今度は訪問を受けるとはなっ!」

「ドラゴンが来た時点で、何故私を呼ばないっ!」



 王弟殿下、どちらも不可抗力なんですよ、わたしのせいじゃないんですぅぅぅ!!

 騎士団長、王都までどのくらい距離あると思ってるんですか。呼べないから、無理だから。



「成体のドラゴンと対峙するなんて、無謀にも程があるっ!」

「いくらルルリーア嬢でも相手は成体のドラゴン!!対峙するとは無謀だっ!」



 王弟殿下、私しか居なかったのだからしょうがないじゃないですかー。

 騎士団長、『いくらルルリーア嬢でも』ってどういう意味かなぁぁぁあ???



「わかるか、ライオネル」

「わかりますか、殿下」



 私はわかりません。全くわかりません。


 あぁ、もうなんなのこの状況。ほんとうに、オウチカエリタイ。

 ていうかあんたら仲悪かったでしょ!!何故に意気投合してるのさ!!そこっ!握手しない!!



「・・・・この部屋じゃ、もう話は出来んな・・・」



 壊された扉を遠い目で見ていた陛下が復活した。

 復活したのならお願いしますこれどうにかして下さいぃぃぃぃ!!!



「そうですね、陛下。場所を変えてじっっっっっっっくりと話を聞きましょうか」

「それはいい考えです、殿下。この近くに丁度良い部屋があります」



 王弟殿下は侍女に指示して部屋を用意させてるみたいだし、騎士団長は警備を準備させてるみたいですねー。

 こんなところで有能さを発揮しないでいいと思います。


 手際良すぎ!!



 か、帰りたい!!ものすごく帰りたい!!!!



 陛下へ目で訴えるも、凪いだ海のような目で見返された。え、お願い陛下、帰らせて、私だけでも帰らせてぇぇぇぇ!!



「諦めろ、ルルリーア嬢。ああなった奴らはもう止められん」





 陛下ってこの国で一番えらいんですよねぇぇぇぇ!!!???





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※毎度おなじみ読まなくても問題ない裏設定ですよ!

※裏設定

・魔術師団長

 天眼竜様が現れて主人公の領に現れたとわかった瞬間に騎士団長が殴り込みに行こうとしたので、止めに入った。が、その時に楽しくなりすぎて王宮の一部を壊してしまったので、今修復作業中。早く主人公に話を聞きに行きたいのに!!←イマココ


・神官長

 巨大なドラゴンの出現に、王都の貴族平民が恐怖にかられ神に助けを求めてきたので対応に追われている。早く主人公に話を聞きに行きたいのに!!←イマココ


主人公ルルリーア

 なんでこっちくるの二度寝できなかったじゃんせっかく逃げたのに王都に戻ってきちゃったよオウチカエリタイ←イマココ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ