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1話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「やはり、ルルリーア嬢はおもし・・逸材じゃの」



 面白いってそれもうほぼ言ってますからね?国王陛下。



 どうもごきげんよう、王宮に馴染み始めたルルリーアでございます。

 言葉にすればとても光栄なことなはずなのに、口に出すと虚しさを感じる今日この頃。


 今日もみっちり『国王専属愚痴聞き係』を務めて愚痴を聞かされて、もうぐったりです。

 一段落したようだが、色々濃すぎて記憶に残したくない・・・・・。



 はぁ、と溜息をつく。



 あの不本意な竜舞踏祭から数日、まだまだ熱狂は薄れていない。

 私の顔を見るたびに誰もがこそこそと『竜騎士の花嫁』と陰口を囁かれ、私の神経擦り切れそう!!!


 その為我が家は、また招待状攻撃にあっている。

 今の旬である『竜騎士の花嫁』を一目見ようと、夜会だのお茶会だの誘われ、挙句我が家でも茶会を開けと言われる始末。



 そんな金あるかぁぁ!!!



 父様も出仕するたびに娘のことを聞かれ、精神的に追い詰められた父様が私を養子に出そうとした。のを、速攻で却下しました。

 ・・・・家族の愛ィィィ!!!


 まぁ、跡継ぎがいる家では、娘を良い家柄の所へ養子に出すのはそう珍しいことではないが、駄目だ。絶対に駄目だ。

 何故か、今私を養子に、と言い出すと、養子先にアイリーン様が手を挙げる姿が、まざまざと想像できた。だからだ。


 絶対に嫌だ。これ以上何かに巻き込まれるのは御免だ。


『竜騎士の花嫁』もみんな早く忘れてほしい。



「いやぁ本当に助かったぞ。奴らめ、そなたのお陰で大忙しじゃからの」



 どうもそうらしい。


 王弟殿下は、竜騎士誕生疑惑に各国からの問い合わせで大忙し。(いい気味だ)

 隣国の第二皇子は、竜騎士という脅威の真偽確認に大忙し。

 学園長は、今回のドラゴンの行動に学術的見解を問い合わせられて大忙し。

 若き辺境伯は、万が一に備えてドラゴンの巣に面した自領の防衛強化で大忙し。


 アイリーン様争奪戦は一時休戦になったそうな。


 ・・・・・よかったけど、全部騎士団長のことじゃないか??私の手柄じゃないけど、まあいいか。


 とってもスッキリしたご様子の陛下。今回の愚痴はおわったのか早くオウチカエリタイ。



「えっと、まだ何か御用でしょうか?」

「そう焦るでない。竜騎士の花嫁よ」



 あがぁぁぁ!!!陛下・・・・嫌がってるのわかってて言ってますよねぇぇぇ???



 そうだっ!陛下が何かあっと驚くような、私のことなんてすっかり忘れてしまうほどの、何かをやってくれれば良いのだ!

 どんなことかはまったく思いつかないけど。


 ・・・・・・・え??ん??なになに??『何かを願えば、より大変なことがっ!!』ですか?なるほどそれは一理ありますね。

 珍しく良い事いいますね!幻影の兄様!!!



 そうですね自分でもよくわからないものを願うのは、やめにしよう。そうしよう。



 表面上は落ち着いて、私は美味しい王宮の紅茶を飲む。うむ、いい香りじゃ。


 でも残念な話をしよう。実は顔は嫌そうに歪んでいるのだ。まだまだ私も修行が足りないですな。



 それを見てクッションを放り投げながら笑う陛下。

 ・・・・・楽しそうでよかったですねぇぇぇぇ!!???陛下ぁぁぁ!?!?


 ようやく笑いをおさめた陛下は、おもむろに姿勢を正す。最初からクッションを抱きしめずそうしてくれればいいのに。



「今日来てもらったのは用事を頼みたくての。明日、行ってもらいたいところがあるんじゃ」

「嫌です」



 速攻で断る。だが今までのことから、断ったところでゴリ押されるのは目に見えている。

 だが!!私も成長したんだっ!!何が何でも断ってやるっ!!



「ふむ、そうか。それは仕方ないの」

「へ?」



 あれ?今陛下『仕方ないな』って言った???これは!巻き込まれないで済む?????

 き、奇跡じゃぁ!!奇跡が起こったぞぉ!!



「ちなみに明日は何か用事でもあるのか?」

「え・・・えーっと・・・」



 ソレ何も考えてなかったァァァ!!!

 サラとのお茶会・・いやダメだ。王命より優先されないな・・・。


 あぁ・・・何も考えつかないよ・・・。王命より優先されること・・・・。

 ・・・・あっ!こ、これだっ!!



「私事で大変申し訳無いのですが、実は最近、夢見が悪く身体も重く感じるのです・・・」

「ほぉ。それは大変じゃの」



 私は体調の悪い深窓の令嬢だ。私は儚い淑女だ。


 そう暗示をかけて、よよよ、と俯く。よしよし!いいぞいいぞ!私、か弱い感じだよ!

 そして両手を組む。



「それで、神殿へお参りに行こうと思っておりまして。申し訳ありません陛下、早くお参りしたく・・・・」

「ふむふむ。それはいかんの。身体は大事にせんとな」



 ・・・・あれ???心配してくれてるのか???え?罠??

 混乱する私に、陛下は慈愛を湛えた笑みを浮かべる。



「神殿に行くとは、感心感心。心身共に良き方へ向かうと良いの」



 え?あれ??本当に心配してくれてる感じ???

 うわ、確かに神殿に行こうとは思ってたけど、なんだか騙したみたいで悪かったな・・・・。



「それに、丁度よくもあるの」

「・・・・え?」



 ぽかんとしてしまう私。え??丁度・・・いい・・・?



「行ってもらおうと思っていたところも、神殿であるからな」



 ニヤニヤする陛下。

 あ゛あ゛あ゛!!!!私のほうが騙されたぁぁぁぁ!!!







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