5話
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最終日の三日目、我がルメール建国劇を見ているところです。
ドラゴンを模した被り物をした人が丁度島を型どった板に降り立ったところのようだ。
ああ、もうお祭り終わりだよ、楽しめなかったなと諦め始めた頃。
舞台に大きな影が落ちた。
「ドラゴンだぁぁ!!!」
きたぁぁぁ!!!ついにきたぞ!!これで花鱗撒き終わったらお役御免だ!!
「リーア!いくよっ!」
花鱗の騎士よ。親しげに愛称で呼ぶんじゃない、友達だと思われるじゃないか。
まだ昼だからねッ!コレが終わったら我が親友のサラと一緒にお祭り。コレが終わったら屋台の物食べ放題。
固定魔法陣を多数展開、貴賓席から飛び出る。
素直に感謝するのも癪だが、魔導の申し子のお陰だな。魔力暴走して嫁入り前の乙女の顔に傷をつけたことは許そう。
持たされていた筒状の籠から、花鱗をがっつり掴む。
これを撒いたら!祭りを楽しむんだぁぁぁぁ!!!
鼻息荒くして力強く撒き始めた。撒くたびに、わぁと歓声が上がるのは気分がいいな!!
出来るだけ満遍なく配れるよう、細かく移動して撒く。
上空で、ドラゴンたちが並行して見事な飛行を見せている。おお、苦手な魔法を使ってるのに、よそ見とか出来ちゃってるよ!!!
あっ!あの薄茶のドラゴン、他のドラゴンたちとは違う動きをしてる。
そう言えば前回のときも、他のドラゴンたちは揃って宙返りとかしてたのに、あいつだけ宙返りに捻りとか入れてたなー。
なんだろ、ドラゴンにもお調子者とかいるんだな。
おお、更に天高く飛んで行くドラゴン。からの急降下。
陽の光が鱗に反射して、凄く綺麗だ。大体薄い色だが、まるで宝石のようだ。
あっ、あの薄茶のやつ、急降下に旋回をいれてる。なんだか周りのドラゴンが迷惑そうにしてる。うぷぷ。
あぁあぁ、隣のドラゴンにぶつかっちゃってるよ。ドラゴンブレスで怒られてるよ、って叱るレベル高いなっ!!
ってまずいまずい、早く撒かなきゃ!!!屋台よ!待っているがいい!
----きゃぁぁぁああ!!!!
え?悲鳴???どしたの??
ふっと暗くなった空を見上げる、と、そこにはお調子ドラゴンがぐるぐると錐揉み状になりながら、こっちに、おちてくるぅぅぅっっ!!!?????
あいつっ!!調子に乗った挙句バランスを崩してコントロールを失ったんだなぁぁぁぁっ!!!
えっうわどうしよう!!!なんかこっちにくるぅぅぅぅ!!!????
旋回しながら落下してくるお調子ドラゴンがどんどん近くなる。
あぁ、人って本当に吃驚した時は、思考力が低下してくるってホントなんだな。
避けなきゃいけないのに、近づいてくるお調子ドラゴンの鱗ばかり見つめてしまう。
薄い茶色だと思ってたけど、本当は光沢のない白の鱗の縁に茶色が入ってるだけなんだな。
鱗の詳細が見えるまで呆然と迫りくるお調子ドラゴンをただ見ている私。
目の前が一面ドラゴンの鱗になって、ようやく、あぁこのままぶつかるんだな、と案外冷静に考えた。
----そう考えていたら、目の前が青一色になった。
「無事か。ルルリーア嬢」
気がついたら抱え上げられていたようだ。片腕で。
思わず首筋にしがみついてしまった。だってここ、結構高い。
「案外、ドラゴンとは乗れるものだな」
・・・・んん???助けてくれてありがとう、騎士団長。今までの人生で無いってぐらい感謝したいのですが。
この状況はなんなのでしょうか????
騎士団長は、お調子ドラゴンにぶつかられそうだった私を右手で抱えながら守りつつ、左手でお調子ドラゴンの首を絞めながら、ドラゴンの上に乗っている。・・・・抱えられている私も当然ドラゴンの上に乗っている。乗ってるっゥゥゥ!!??
ついでにドラゴンの下に固定魔法陣を展開して落下しないようにしてるから、落ちないようになってるみたいだ。
そこはひとまず安心していいの、かな??
いやドラゴンの、しかもお調子ドラゴンの上だよ?安心できないわ。
「キュ、キュキュューーーッ」
なんだろう、このドラゴン苦しそうな鳴き声だな。ん????
もしや・・・・・???
「キューーーーーーーーーーーーーーーッ!!???!!??」
あ、ちょ、馬鹿ぁぁぁ!!!お調子ドラゴンが身体をくねらせてめちゃくちゃな動きをする。
これはもう、私達を振り落とそうとしてますね。わかります。
そりゃ首を騎士団長みたいな人外に絞められてたら、苦しくて混乱するでしょうねぇぇぇ!!!
「おお、意外と楽しいものだな」
まるで穏やかな海で船に乗ってるが如く、平然とした態度を崩さない騎士団長。このドラゴン宙返りとかしてるんですけどぉぉぉ!???!??
目が回るっ!!私楽しくない全然楽しくないぃぃぃぃっ!!!!!おろしてぇぇぇぇ!!!
こんな時でも離さなかった籠から、大量の花鱗が零れ出る。あっ量が減ってラッキー!!!じゃなくてっ!!!
「ちょっ、このっ、きし、だんちょっ!うでぇ!ゆるっ、めてぇぇぇ!!!!」
風圧に負けそうなのをどうにか言葉にする。
「あぁ、それでさっきから鳴いてるのか。すまんな」
・・・・どうやら無事伝わったようで腕を緩めてくれたみたいだ。が、ドラゴンの動きは落ち着かない。
苦しくなくなったことがわかっていないらしい。
「キュキュゥゥゥゥーーーー!」
更に暴れるお調子ドラゴン。いや、こいつはもう駄目なやつだ、駄ドラゴンだっ!!
目が回るっ!!やめてぇぇぇ!!
「こんのっ!ドラゴンだろうがぁ!!いい加減、落ち着けやぁっ!!この駄ドラゴンっ!!」
----ぽふん
そういって、私は持っていた籠を駄ドラゴン目掛けて放り投げた。腹立ち紛れに放り投げただけで、当てる気は無かったが、どうやら駄ドラゴンの頭に当たったようだ。
その拍子に、籠から花鱗が零れ、日に反射してキラキラと散らばる。
今のでようやく落ち着いたみたいで、宙返りもせず、ただキョロキョロと散る花鱗を見ているようだ。
・・・・あれかな、びっくりしたのかな??
「はぁ・・・・・・」
これで足場も安定したし、ほっと一息つけそうだ。
というか、私籠をぶつけた際に両手放しになってるんだよねー、しかも片腕一本なのにこの安定感。
半端ないな騎士団長、の腕の筋肉。
コレだけ安定してるから、首に腕回さなくてもいいよね?
腕の上でふんぞり返る私を見て、騎士団長は吹き出したようだが、気にしない。
-----わぁぁぁぁあああぁぁぁぁああああぁっ!!!!!
・・・・ん??なんだこの凄い歓声は???
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降りたら色んな人にもみくちゃにされそうになった。
あまりの勢いに、私は騎士団長の右腕から降りられなくなってしまった。無念。
「リーアっ!!無事っ!???」
ソラン君が血相を変えて駆け寄って来た。心配してくれたようだ、うむありがとう。
「えぇ、無事ですわ。・・・この騒ぎは一体???」
「え??一体、じゃないよ?」
困惑して頭を傾げていると、呆れたように、いや実際呆れているのだろう、溜息付きで説明してくれた。
どうやら、ドラゴンにぶつかりそうになった私を助けた騎士団長は『竜騎士』と呼ばれ、共にドラゴンに抱えられながら乗っていた私は『竜騎士の花嫁』(!!??)と呼ばれ、ドラゴンを操る(誤解)という奇跡を目撃した人々が熱狂的に歓喜した、らしい。
・・・・・・・・・・えぇぇぇぇええええええ!!!!う・そ・で・しょぉぉぉぉ!!???
騎士団長はもう『氷の騎士(笑)』って恥ずかしい二つ名をつけられているが、私は違う。
いやだぁぁぁ!!!『竜騎士の花嫁』とかぁぁぁ!!もう他の人の二つ名を(笑)とか言えないぃぃぃ!!
ドラゴンから零れてくる花鱗が綺麗だったとか、騎士団長と私(・・不本意)がまるで御伽話のようだとか・・・。
いやぁもう、オウチカエリタイ!!!!!!!
そうして、その騒ぎのせいで、色々な催事に引っ張りだこになった、私ルルリーアは、最後までお祭りを楽しむことは出来ませんでした。ぐすん・・・。
どうしてこうなったんだ???
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※本設定は読まなくても問題ありません。お祭りなのでたくさん考えたのに上手く書けませんね。
※裏設定
・花鱗さん
海で採れる貝殻を薄く削ってドラゴンの鱗を模した物。国中で大量に使うので沿岸部の民のちょっとした副収入になっている。王都で撒かれる花鱗は入手出来るのもタイミング次第なので、幸運のお守りとして大切に取って置かれる。今回の花鱗は『竜騎士の花嫁』が撒いたものとして、裏社会で高値で取引され、偽物が横行して騎士様大忙し。←イマココ
・竜遊隊隊長
一番最初はドラゴンの鱗を狙ったならず者たちの一団だったが、生き残った初代隊長が変態に目覚めて、何故か人が絶えず細々と続いている。ので、国は管理していないが、回避能力を他国に知らしめるため、あと竜遊隊を入れておくと歴代の団長たちも致命傷を負わないので(多分こっちのほうが重要)、模擬戦に参加。隊長はギリギリのスリルを味わえて快感に浸っている。←イマココ
(今まで書いたキャラの中で一番のお気に入り。多分こいつだけで連載出来そう(誰得))
・魔術師団長
何をしても表情を変えない騎士団長、どんな攻撃も躱す竜遊隊隊長、この二人を吹き飛ばすことを最近の目標にしている。繊細な魔法も出来るが、性格が大雑把で目立ちたがりなので大規模魔法が大好き。今回も達成できなかった次こそは!←イマココ
・騎士団長
警邏中に駄ドラゴンが不審な動きをしていたので、追ってみたら主人公にぶつかりそうだったので助けた。主人公が叱ったらドラゴンがおとなしくなったのでもしやドラゴンを操れるのではないかと、期待している。←イマココ
・ソラン君
主人公に一撃を入れられてから少し周りを見られるようになった。気を許した人には世話焼きになる質なので、主人公の無頓着さに呆れつつも放っておけなくなった。近々恋愛相談もする予定。←イマココ
・主人公ルルリーア・タルボット
・・・・・・・・・・・・・(息をしていない。屍のようだ。)←イマココ