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4話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





 竜舞踏祭、当日。



 いつも賑やか王都だが、どの通りも人で溢れ、至る所に花飾りがつけられてて、一層賑やかにそして華やかに彩られている。

 美味しそうな匂いのする屋台が所狭しと開かれ、楽しそうに民たちが冷やかす。

 どこかで旅芸人たちがなにかしたようだ。楽しげな音楽が流れ、わっと歓声があがる。



 ・・・イイナータノシソウダナーーーー。



 どうも、いつもより着飾っております、ルルリーアでございます。


 私も楽しめばいいじゃん、とお思いですか、そうですね私も思いたいです。

 名誉(笑)にも『花鱗の乙女』役に大抜擢された私ですが、この役、実を言うとお祭りの中でも不憫な役割なのだ。


 竜舞踏祭の最大の見せ場であるドラゴンの飛行は、今だに理由はよくわかっていないが、何故かきっかり伍の月の三日から五日の3日間の内に飛んでくる。

 なんだろうね、アレかな、庭師のトムが毎朝5時きっかりにやる体操みたいな感じなのかな???

 そう考えるとちょっと微笑ましい気がしてくる。


 そして覚えているだろうか。『花鱗の乙女』は、ドラゴンが飛んできたら、ドラゴンの鱗を模した花鱗を撒く。


 つまり、3日間の内いつ飛んでくるか理解らないドラゴンを祭りの間中、ずっと待機しなくてはならないのだ。ぐすん。

 でもドラゴンが来れば解放されるので、早いとこドラゴン来てほしい。お腹すいた。



「君ももっと楽しみなよ!ほらっ揚げパン、あげるからっ」



 死んだ顔をしながら横から出された揚げパンを頬張る。うまし!!!

 揚げたてアツアツで、アーモンドと粉砂糖がまぶしてあって、ハフハフうまうま。


「ほれ、ろうひたんれす?」

「口の中にものを入れてしゃべらない!さっきそこの屋台で買った」



 あれ?私の隣りにいるこの人は、私と同じ不自由の片割れ『花鱗の騎士』役を無理矢理奪い取った、魔術師団長養子ソランくんではないだろうか。なぜ自由に屋台で買い物ができているのだろうか。


 ほぼほぼ別の人に決まっていた『花鱗の騎士』役を、『リーアと友達だから』という一言でなれるこいつは一体どういうことだろうか。


 魔法で少し湿らせたハンカチを手渡してくれるソラン君。そうそう手がベタベタしてたんだよねー。

 って・・・あれっ?私より女子力高い・・・。


 この美味しい揚げパンも、魔法でどうにかしたのだろう、羨ましいな魔導の申し子め。もぐもぐ。



 今は広場で見世物になっている、じゃなかった、今回の『花鱗の騎士』『花鱗の乙女』をお披露目している真っ最中だ。


 いいなぁーあっあの片隅でロマンスが生まれてるぅぅ!!

 なのに私の隣にはアイリーン様狂いのソラン君だ。くすん・・・。



「次はこの祭り最大の催事だからねっ!今からワクワクするなー」



 なんだかんだ言ってもソラン君は男の子だねー楽しそうで良かったねー。

 なんて、微笑ましく見守っていた私であった。あ、ねえねえ、さっきの揚げパンもう一個ある?





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






 ----ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!



「ヒャッハァア!!!今回こそその面ぁ歪ませてやるよぉぉぉっ!!!」




 ・・・・・ご心配には及びません。ココは王都で竜舞踏祭は恙無く続いているのは、保証しよう。


 現在、目の前で祭りの目玉である武闘会が開催されております。


 さっきまで、若手騎士や冒険者、力自慢の若者たちが、己の限界を超えた熱い闘いを繰り広げていた。

 その中で、友情が芽生えたり、愛が芽生えたりと、会場内は爽やかな空気に包まれていたのだが。



「オラオラオラァ!!!消し炭にしてやんよぉぉぉぉっ!!!死ねぇぇぇぇ!!!!!」



 あー、死ねはまずいと思いまーす。魔術師団長様。



「・・・・・・・・・」



 相変わらずなんも喋らんな!!騎士団長めっ!!!

 って、わー魔法って剣で切れるんだーわーすごいなー。



「うわっすごっ!!今の焔魔法と雷魔法の多重複合魔法だっ!!あの呪文の複合を可能とするためにまず」



 解説ありがとう、魔導の申し子ソランよ。途中から難しくなってきてなんだかよくわからなくなったが、とりあえず凄いことだけはわかったぞ。


 そうである。現在、武闘会の最後を飾るのは、魔術師団長VS騎士団長(・・・あともう一人)の模擬試合だ。・・・模擬、そのはずだ。



 だが素人である私の目でも、明らかに殺傷力の高そうな魔法をドカドカ打っているような気がするのだが、気のせいだろうか。あれ大丈夫なやつなの??


 ・・・観客からは悲鳴ではなくものすごい盛り上がってる歓声があがっているから、多分大丈夫なんだろう。



「っ」



 切った魔法の合間をくぐり抜け、魔術師団長の懐へ一気に詰め寄る騎士団長。



「っぶねぇなぁぁあああっ!!!!」



 あわや真っ二つになるかと思ったが、何かで防いだようだ。でも代わりにローブが犠牲になった。

(ちなみに後でソラン君に聞いたら、魔術師団長が着ていたローブは物理防御に特化した最高級品なんだそうだ。金貨千枚也。)


 うわっあれって模擬剣だよね?刃潰してるやつだよね?切れちゃってるよ????


 ・・・・これ毎回こんな感じなんだろうか。王都の竜舞踏祭初参加だけど、本当にこれいいの?

 両者とも相手を殺す気満々に見えるのは私だけ???



「っこんのっ!!ちょろちょろすんじゃねぇぇぇ!!」



 もう一人の相手・・・・・に苛立った魔術師団長が、闘技台に向けてなにやらヤバそうな威力の魔法を放つ。と次々と火柱が上がる。

 あ、闘技台割れた。



「ひゃあああ!!これこれこれぇぇ!!いいよいいよぉぉ!!うおギリ!今のギリだったやべぇぇ!!」



 火柱を紙一重で、人間とは思えないほどの気持ち悪い動きでぬるぬる避ける人影。



「・・・・・・・」

「きしだんっちょっ!うお切れる!切れちゃうよぉぉ!??良いね良いねェェェ!!生きてるおれ生きてるぅぅぅ!!!!!!」



 火柱ごと彼に斬りつける騎士団長。私には全く見えない剣先を、人としてどうかと思うほどの角度でひょいひょいと避ける。


 少し、いや大分変態な感じの彼だが、国中で認められている本物の変態だ。

 じゃなくて竜遊隊という、ドラゴンの攻撃を紙一重で回避することで快感を得る一団の隊長だ。やはり変態ではあるが、彼等の回避能力は本物だ。


 ドラゴンの巣へ行って何を取るわけでもない、ただただ純粋にドラゴンの攻撃を躱すだけ、まさに変態だ。

 ちなみに攻撃は出来ない、した瞬間に死ぬそうだ。なんなの?阿呆なの?あっ変態か。


 ・・・・・国一番の祭りの目玉である武闘会で、変態が混じった試合が最後を飾るってどうなのよ?



「今回もいい動きしてんな」「さすが竜遊隊の隊長だぜ」「ふむ、あれはな、発動前の微かな魔力を感知して・・」「騎士団長の剣も回避できるのはなぜだすげぇ」「あれ人間?・・憧れるぅ!!」



 ・・・・・・あれ?

 なんだろう、祭り補正でも効いてるのかな?憧れるって言った子供の将来が心配だ。

 いや、我が国全体的に心配になってきた。滅びないよね????


 興奮しているソラン君を放っておいて、貴賓席をこっそり見る。我が国のトップさえまともなら滅びないはずだ。頼むぅぅ!!!



 陛下と妃殿下は・・・楽しそうな満足そうな笑顔で見ている。これは駄目だな。

 宰相閣下は・・・・神経質そうな顔で平静ぶっているが、目が諦めを帯びてる。よし!

 財務大臣は・・・・豊かな身体を震わせて、あ今闘技台を囲む結界石が壊れたら涙目になった。よし!

 外務大臣、王弟殿下は・・・・アイリーン様見てるよ!ぶれないなオマエ!!!対戦を見なさいよ!!!!駄目だよ!!



 ぐぬぬ、駄目な割合のほうが多いぞ!!!一番上の陛下と妃殿下が駄目そうなのが痛いな・・・。

 でも宰相閣下と財務大臣様はまともそうだから大丈夫だろうか・・・?



「てめぇら避けんじゃねぇぞぉっ!!!塵にしてやるっ!!!!!」



 魔術師の長が何言ってんだ。塵は駄目でしょ塵は。


 目の前が真っ白に染まる。と同時に凄まじい爆発音がする。

 爆風がくる、かと思いきやそこは我が国が誇る結界石、衝撃も来なかった。素晴らしい。


 あっ、また一つ結界石が壊れた。ついでに結界を補強していた魔術師様たちの一人が倒れた。

 おお神よ、彼の魂に安らぎを!!!


 更に視界の端に財務大臣様が倒れ伏したのが見えたが、まあ気にしない。気にしたら負けだ。



「・・・・・・・・」


「あぶっあぶねぇぇぇぇ!!!塵になるとこだったやべぇぇぇぇぇ!!うひぇぇぇぇ!!!」



 そして当然のように生きている騎士団長と竜遊隊隊長(変態)。

 闘技台はもう復活できないほど粉々で、爆炎に至っては結界内全体に広がってたと思うが、何故生きてるんだァァァ!!???


 三者三様に睨み合う緊迫した空気。特に魔術師団長と騎士団長の殺気が半端ない。あ、護衛の騎士様と魔術師様が何人か倒れた。



「うむうむ。今年もよい試合であった!!これにて武闘会を終了とする!!!」



 おお!良いタイミングだ陛下!!!なんかあの魔術師団長、雷を纏い始めてたからほんとよかった!!

 陛下の宣言とともに大盛り上がりの観客たち、そして抱き合って喜ぶ魔術師様たち。ほんとよかったねぇぇ!!





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