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2話

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ごきげんよう、ルルリーアです。


 私の気持ちとは裏腹に、とても清々しいくらいに澄んだ青空です。


 なんだろう。私は何かに呪われているんだろうか??

 ・・・・・神殿にお参り行こうかな・・・・。



「ルルリーア嬢、鍛錬場では気を抜かぬよう。いつ、模擬剣が飛んでくるかわからないからな」



 そう厳しく指導するのは、隣りにいる騎士団長閣下だ。



「だが問題ない。すぐに何が飛んできても対処できるようになるからな」



 え?えええ??そこは『私が守ってやるからな』的なのがほしいんですけどぉぉぉぉ!!??

 ていうかそこまで鍛える気なんてサラサラないんですけどぉぉぉぉ!!????


 いい??諦めずに何回でも言うよ???


 私伯爵令嬢だからっ!!!淑女だからっ!!!騎士なんてならないからっ!!



「全然嬉しくないですねー問題も大アリですからねー?」



 精一杯の抗議を込めて騎士団長を睨みつけるが、全く効いていないようだ。くすん。



「さぁ、鍛錬を始めよう。まずはルルリーア嬢の固定魔法陣をみせてもらおう」



 あっ、私の抗議は無視ですかそうですか。しかももう鍛錬が始まるのね・・・。

 動きやすい格好、ということで、兄様の子供時代の洋服を着てきました私、婚活中の伯爵令嬢です。


 ・・・・こんな姿見られたらお嫁に行けない、って思ったそばから、騎士様方にがっつりみられてるぅぅぅ!!

 えぇえぇ、珍しいのはわかりますよそうですよ、私が逆の立場だったらガン見しますよ。



 でも見ないでぇぇぇぇ!!!



 四方八方から不本意な注目を浴びて、私がかなり腰が引けていると、騎士団長から殺気が飛んできた。

 もう!!ちょっとした注意の代わりに殺気飛ばさないでよ!!!


 あーはいはい、そんなに殺気立たなくてもやりますよ、騎士団長。

 やればいいんでしょおおおお????


 ちょっと不貞腐れながらも、固定魔法陣を発動する。

 だがしかし、私の魔法音痴を舐めてはいけない。あらゆる魔法系分野の教師が、揃って匙を投げるほどの実力なのだ。


 えいっとグラグラしている陣に乗っかる。と同時にパリンっと砕け散った。


 ふふふん、どうです??そう!!私の実力こんなもんですよ??

 祭りの乙女役は、最低でも1時間は固定魔法陣の上で花鱗を撒かなくてはいけないのだ。


 くっくっくっ!騎士団長よ!!花鱗の乙女役とか、騎士とか、騎士とか、騎士とか!!諦めませんかねぇぇ??


 期待を込めて騎士団長を見るが、彼はこの事態にも動じていなかった。



「そうだな。固定魔法陣の強度が足りていないようだ。そこから鍛錬だな」



 ぐぬぬぅ!!騎士団長めぇ!!


 そ、そうだ!他の騎士様にしてみたら、固定魔法陣が出来ない私なんぞ『え?あんなのも出来ないの?』と蔑まれる対象だ。

 そこから噂をしてもらって、元からデキる人に変更してもらってっ!!!!


「す、すごい」「あんなに近くで団長の殺気に耐えられるなんて・・・」「固定魔法全然出来てないけど問題ないな」「むしろそっちどうでもいいな」「・・・団長の嫁か?」



 ・・・・おい、最後に言った奴、でてこいやぁ!!


 なんなの?その認識!!!『殺気に耐えられる女性=騎士団長嫁』なのっ!!???それは騎士団内では常識なのっ!!??



 あぁ・・・なんだか鍛錬始まったばかりなのに、もう疲れたオウチカエリタイ・・。



「まずは、固定魔法陣の強化だが、足の裏で、ガッとやってぐぐっと力を込めるんだ」



 は、はぁぁぁいいいい?????

 あれれぇ?おかしいなぁ??私、騎士団長が言ってること、全然理解できないぞぉ???



「いいか?見本を見せるぞ?・・・こうして、足の裏に力をグッとまとめて、割れないようにパッと陣を何重かにするんだ」



 目の前では、一瞬の内に、華麗かつ最小限に足元へ多重固定魔法陣を展開した、騎士団長がいる。



「さあ、ルルリーア嬢もこの通りにやってみるんだ」



 ・・・・今の説明で???グッと、とか、パッと、とか言ってたあの説明で?????



「その説明でわかるかぁぁぁぁ!!!!!!」




 今日一番の魂の叫びが出たと思う。





 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





 あれから、騎士団長に、言葉による説明だと全く上達しないことを納得してもらい、実地で教えてくれるよう必死で説得した。

 あれじゃ、何十年かかっても私が固定魔法陣を扱えるようになることはないだろう。


 ・・・・なぜか鍛錬していた騎士様たちも加勢してくれたのは、日頃苦労してるからなのかな・・・?何に、とは言わないが。


 その甲斐あって、騎士団長の固定魔法陣に乗ったり、一緒に多重陣を構築したり、と実地で鍛錬は行われた。



『あら、騎士団長って優しいのね』なーんて勘違いをしてはいけません。いけませんよ??



 一緒に乗った陣を突然消されて10mの高さから落下している最中に『固定魔法陣を展開するんだ』とかされたり。

 私が展開してる足元の固定魔法陣を、騎士団長の陣で押し潰してきて『ルルリーア嬢の陣が無くなったら落ちるぞ』とかされたり。

(そうですねぇー地面まで2mくらいあるかな?うふふ?)


 してたんだからなぁぁぁぁ!!!!お陰様で落ちまくって擦り傷だらけ土まみれのボロボロですけど何かァァァ!???


 なんなのぉぉぉ!!??

 別に祭りの乙女役だけなんだから、多重固定魔法陣の練習とかいらないからね!!???

 移動もあんまりしないから、不安定な体勢における高速陣展開の練習とかいらないからね!!???



 あぁ・・・もう3時間は経っただろうか・・・・。

 何度も何度も、壊れた固定魔法陣から落ちてボロボロになった私を見て、騎士団長がぽそりと呟いた。



「ルルリーア嬢は、魔法のセンスがないな」



 お、お前がそういうかぁぁぁ!!????

 だから諦めてよぉぉぉ!!なんなの?この粘り強さ!


 癪だから『出来ません』とか言いたくなくて音を上げない私も私だけどさぁ!!!



「で、です、から・・、わたくし、には、むずかしい、かと・・・」



 息も絶え絶えに訴える。お願いだから諦めてェェェ!!?



「仕方がない。私では荷が重かったようだ」



 ・・・なんだか言い方が釈然としないが、これでこの苦行から逃れられるのであれば、もうそれでいい、いやむしろお願いします。



「明日からの鍛錬は、ソランに頼んでおこう。では、忙しいのでこれで」



 さっきまで(私目線では)激しい鍛錬の跡を見せず、颯爽と去っていく騎士団長。

 それを見送りつつ、何故か近くで応援してくれていた騎士様に、確認する。



「あの・・・。騎士団長、今、明日っていいました?」

「ええ、言ってましたね」



 とても可哀想な子を見るような目で私を見てくる騎士様。

 ちょっ!やめてっ!同情するなら代わってくれ!



「ソランって、誰、でしたっけ?」

「そうですね。魔術師団長の養子の、ソランくんですね」



 あぁ、あのアイリーン様信奉者の方ですねー。

 なんだか最近お茶会で会ったことがありましたねー。


 ・・・・・・・えぇえぇそうですよぉぉ知ってたけどぉぉぉ!!

 聞いてみただけです、違う人かなという希望が入ってました。ごめんなさい。



「・・・騎士団長、忙しいって言ってましたよね」

「そうですね。今祭りの警護準備で凄く忙しいですね、団長」



 タオルありがとうございます騎士様。

 騎士様、そんな忙しい騎士団長がこんな面倒を引き起こさせないよう、是非見張っていただきたかった。



 ・・・・・これ、明日もこなきゃいけない、のか、な????




 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

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