68.裏通りで
リョウ視点です。
俺とシノグ、そしてシュウがマッドシルダー山脈を離れて上空にいる時、俺にルイからリンクイヤーでの通信が届く。
[リョウ、今日1日使って戦い方を考えたから試したいんだけど、時間あるー?]
[今、マッドシルダー山脈からの帰り道だからもう少しかかるけど、帰ってからでいいなら付き合うぞ。]
[うん、よろしくー!、それじゃ気を付けてー!]
ルイとの通信を終えて、オーノスに着いたときどうするかを考える。
とりあえず宿を見つけないといけないのだが、町にそんなに詳しくないし、何よりシュウと離れすぎるのはあまりよろしくない。
そのため、俺はリナにリンクイヤーを繋げる。
[リョウ?、どうしたの?]
[今日マッドシルダー山脈に行ってきたんだが、シュウをオーノスに連れてくる事になったんだよ、だから個室の手続きとか入学の手続きとか色々やっておいてくれないか?]
[え、まあいいけど、大丈夫なの?、その人リョウが前戦ってた人でしょ?]
[ああ、問題ない、モンスター化の危険も俺の魔力で抑えられるようにしておいたから心配いらないよ。]
[リョウがそれだけ言うなら信じるよ、わかった、多分リョウの紹介で入れれば試験とか要らないはずだから、ただその分支払いとかは全部リョウが持つことになるし、シュウが問題を起こした時の責任は全部リョウにいくから、気を付けてね!]
[そのぐらい問題ないさ、何ならリナ達全員そうする予定だったしな。]
[も、もう、不意討ちはズルいよ!、でも楽しみにしてるね、もう帰ってくるんでしょ?]
[ああ、今マッドシルダー山脈から離れて少しした所だからまだ時間はかかるけどな、なるべく急いで帰るよ。]
[わかった、じゃあリョウの帰りをみんなで待ってるね。]
[それこそ不意討ちはなんだが、わかった、それじゃあまたあとでな!]
これでシュウの寝る場所も問題ない。
学校にも入学させられそうだし、順調で何よりだ。
それにしても、シュウのやつ道具生成で剣を何本も作ってそれに乗って飛んでやがる。
俺も人の事は言えないが、シュウも大分訳のわからない常識外れのことをするよな。
そんな事を考えながら、俺とシノグに着いてくるシュウを見る。
だが、シュウは俺のインセプションリングまで真似して、というか自分に必要そうな物を選んだ結果なのだろうが、姿が見えなくなり、認識もごまかす指輪を作り出しやがった。
まあ、俺の目でなら見ることが出来るが、シノグには出来ないみたいだ。
そんな事を軽々とやるシュウはリンクイヤーも普通に作ってきた。
まあ、俺とシノグにしか今のところ通信できないんだけどな。
そして、俺達はかなりのスピードでオーノスへと向かってゆく。
さすがはシュウで飛ぶのは初めてのはずなのに問題なく俺たちのスピードに着いてくる。
おかげで想像よりも大分早くオーノスに戻ってくることが出来た。
俺達はいつも通りに裏通りの人気のない場所へと降りてインセプションリングを外し、学校へと戻る。
だが、こういう時に限って余計な面倒に巻き込まれる。
《誰か助けてー!!!》
裏通りに響き渡るような女の人の声、そしてその声は俺たちの元へと向かってくる。
俺、シノグ、シュウは人間離れした視力でこちらへ走ってくる女の人を、いや女性を確認する。
この女性は遠目からでも美人だとわかる程の魅力を持っていた。
サラサラに整えられたキレイなピンクの髪、服装はその辺の人達と変わらないように見えるが、その材質はとてもとてもその辺の人に買えるような物ではないのがわかる。
容姿も整っているうえに、明らかに身分の高さがわかる雰囲気。
そしてそれを追うのは鎧を来た人物達、ただ、殺気の類いを発する訳でもなく、ただただ困っている様子だった。
何となく予想できるし、ある意味定番な出来事ではあるのだが、多分小説の中と違って、鎧の人達は悪い人じゃなさそうだ。
そんな雰囲気に気づいているのだろう、シノグとシュウも鎧の人達に同情するような視線を送っていた。
俺は一応、2人に確認をとる。
「なあ、あの女の人どうする?、鎧の人達を追い払ったら一応感謝されるだろうけど。」
「いや、お前わかってて聞いてるだろ、当然鎧の人達に女の人を渡すに決まってるだろ。」
〈俺も同感だな、どう見てもあの女が悪いだろう。〉
「まあ、一応確認しただけだから、さてとりあえずあの女の人を止めるか、ウォール!」
そうして俺達の前に壁が現れ、その他の通路にも壁を発生させ、鎧の人達からの逃げ道を塞ぐ。
何か叫び声が聞こえる気がしたが、聞こえない振りをしながら、俺達の前の壁だけ消し、鎧の人達がしっかりと女の人を抑えるのを確認してから、他の魔法も解いていく。
鎧の人達は即座に警戒体制を取ってきたが、俺達は両手を上げながら近づく。
「あー、俺達はエジマリフ魔法学園の生徒です、あなたたちに危害を加えるつもりはありません、なので女の人を捕まえるのに協力しただけです、これが生徒手帳です。」
そういって、離れて警戒している鎧の人達の前に投げ落とす。
俺達を警戒したままそれを拾い上げ、内容を確認して、金色なのに驚いたようだったが、特に何か変わるわけでもなく、生徒手帳を返して警戒を解いてくれた。
「疑ってしまいすみません、おそらくお察しの通りなので、深く聞かないで頂けるとありがたいです。」
「ああ、俺達も危害を受けた訳じゃないからこの件は気にしないでおくよ、お仕事お疲れ様です。」
「はは、ありがとうございます、それではリョウさん、今は無理ですがその内お礼をしたいのですが、どうすればいいですか?」
「大体は学校にいるから、そこに伝えて呼び出しを掛けてもらえれば構わないさ、特にお礼されるようなこともしてないしな。」
「ありがとうございます、それでは後日お伺いしますね。」
そういって鎧を着た人達は女の人を連れて表通りへと向かっていく。
何かしらの恨み言が主に俺へと向いていた気がするが、気にしないでおく。
いや、俺は何も聞いていない。
そんな面倒事はあったが、俺達も学園へと向かう。
精神的に疲れながら。
次回更新は7/4です。
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