64.図書館組
リョウ視点です。
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頭の中でアラームが流れ、意識がゆっくり覚醒していく。
ぼーっとする頭で周りを見渡すと、部屋には俺と休んでるマドルだけだった。
昨日のトーナメントに更に触発されたようで、相変わらず朝早くから訓練しているみたいだ。
リンクイヤーで反応を探ると、意外なことに体育館だけでなく、図書館にも訪れてるメンバーがいるみたいだ。
体育館にいるのは、リナ、スート、エルン、サクラ、図書館にいるのはルイ、フラン、リンダ、ソルンだった。
この面子の別れ方に新鮮さを感じたが、何となくこの別れ方になった理由は想像が出来る。
体育館にいるメンバーは俺から見て既に自分だけの戦い方というか、フィニッシュまでの組み立てを作れている4人。
そして、図書館にいる4人は必殺となる一撃を未だに見つけられていない。
だから、図書館で少しでも新たな知識や既存の知識の見直しから自分のスタイルを探しているみたいだ。
現時点で差は確かに存在しているが、それぞれの戦い方には相性もあるし、図書館に籠っている4人が体育館にいる4人に劣っている訳ではない。
そもそも、みんな同じような生活をして同じように訓練しているし、何より教えているのが基本的に俺だからそれほど差が拡がっている訳がない。
そういう事態にならないように俺も考えているからな。
だから、図書館組が戦い方を確立できればまた同じようなトーナメントをやっても、今回と同じ結果にはならないはずだから、次のトーナメントまでに仕上がる事を祈ることにした。
もうトーナメントは終わったから、久しぶりに彼女達と朝を過ごすことにする。
何しろトーナメント期間中は、みんなの訓練を見てしまうと楽しみも減るし、何より不公平だと思いやらなかったため、細かいアドバイスとかも出来なかった。
そのため、トーナメントが終わった今の内に様子を見ることも重要だと思うしな。
そんな事を考えながら俺はまず図書館に向かう。
別校舎にも図書館はあるのだが、本校舎のと比べるとどうしても見劣りしてしまう。
そのため、図書館組はみんな本校舎の図書館にいるため、先に会っておこうと思ったからだった。
俺が図書館に入っても4人は全く俺に気付かなかった。
いつもならそれをからかうのだが、それを躊躇わす程の集中力、どうしようか迷っていると、丁度一息着いたのか、ルイが身体をのばしそして俺を見つける。
そんなルイに疑問を感じた他のメンバーもルイの視線を追って俺を見つける。
すると、4人は本を閉じたのでそれを合図としてみんなに話しかけにいく。
「邪魔して悪かったな、成果が上がってるか見に来た所だった。」
《平気だよー!、それにリョウが来てくれたのに嫌だと思う人はいないよー!》
《ほんとに丁度良いタイミングだった、わかってはいたが、中々目当ての物が見つからなくてな。》
《リョウ様のおかげで更に頑張れそうです!、ずっと見ていて下さいね!》
《あたしも、武術大会予選の金クラス代表として選ばれたから、恥ずかしくないようにしないと!》
それぞれ俺の存在を肯定してくれて思わず笑みがこぼれる。
少しだけ行き過ぎな奴もいたが、まあ誰とは言わないけど、、、
それは放っておいて、どうやら予想通り皆悩んでいるみたいだな。
ここで俺が1から10まで教えることも出来なくはないが、それをやってしまうと彼女達の無限の可能性を摘み取ってしまう。
俺は少しだけ考え、全員の読んでる本を見て思う。
分かりやすく言えば、参考書のそれも一部を詳しく書いてあるようなものを種類は違えど、全員が読んでいた。
「直接のアドバイスをしてしまうと、みんなの成長の可能性を摘み取ってしまうかもしれないから、ヒントだけ上げる、もう既に基礎はできているはずだ、そのまま役立ちそうな物を探すんじゃなくて、知識を集めてそれを生かすようにすればいい。」
俺の言葉をそれぞれがどのように解釈したのかはわからないが、何かのきっかけは掴めたようで、俺が来た時よりも更にやる気に満ち溢れていて、一刻も早く調べたいという思いを全員をこれでもかというくらいに出していた。
それでも、俺に帰ってとも言えずにウズウズしてるという面白い状態が目の前に拡がっている。
どんな感情を持ってくれているか何となくわかるし、普段から表現されているから嬉しいのだが、ここにいつまでもいると、彼女達の成長を遅らせてしまうと思ったので、少し残念に思いながらも俺はこの場を後にする。
「どうやら、アドバイスが役に立ったみたいで良かったよ、それじゃ4人がそれぞれの戦い方を見つけるのを楽しみに待ってるよ、それじゃ引き続き頑張ってな!」
そう言って俺は図書館を離れた。
彼女達の更なる進化に心踊らせ、その日が近いことに喜びを感じながら。
次回更新は6/30です。
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