50.クラス内トーナメント2回戦リョウvsリナ
リョウ視点です。
1、エルン●vsカリバーン○
さすが2回戦だけあって、1試合目から見応えのある戦いだった。
攻守が所々変わっていき、お互い同じ武器であるが、その戦い方は大きく異なり、立体的な動きをしていくエルン、魔法とスキルで戦うカリバーン、どちらの実力も優れているのは試合を見ればわかる。
カリバーンの方が今回は上手だったが、これを機にエルンも更に強くなっていくだろう。
これからが楽しみになりつつも、次の自分の試合に向けて気持ちを入れ換える。
体育館の中心で向かい合う相手は、俺の最も大切な人物のリナだ。
リナとこうして1対1で戦うのはおそらく、リナに学園の基準がどんなものか教えてもらった戦いの時以来だろう。
もちろん、ハーレムメンバー達を含めて模擬戦をしたり、昨日のように一緒にモンスターを狩りに出掛けたりで実力は見ている。
けど、やっぱりこうして1対1で向き合うとお互いの成長具合がはっきりとわかる。
あの時は確かに俺が圧倒したが、今はリナも成長しているから、俺だって油断すれば負けることもあるだろう。
それでも、俺は自分に掛けた制限を外すつもりはない。
お互いの成長がわかっても尚、いやわかるからこそ、俺は自分が力を制限して良かったと思う。
もし俺が全力で戦うとしたら、魔法や力でゴリ押しするだけで勝ててしまうからだ。
だが、シュウのように自分よりも格上と戦うためには、そんなゴリ押しだけじゃなく、技術が重要になってくる。
シュウと戦ったように戦いの中で成長するのを期待するのはあまりにも楽観的過ぎるだろう。
それに、もしそれを狙うとしても格上相手に負けないだけの実力も必要になってくる。
だからこそ、今回のような機会で自分の実力を磨いていく事が必要になっていく。
それも含めての制限だからな。
しかし、こうして向かい合うと改めてリナの実力が上がったことに嬉しくなる。
俺がこの世界に来てすぐの時は、あれだけ成長できないことを悩んでいたのに、今では金クラス内でも上位に入るだけの実力をつけている。
そして、同時にリナも俺がこの世界に来た時からここまでを知っている。
だからこそ、俺の成長を嬉しそうに、またそんな俺と向かい合えるくらいになった事を楽しそうにしていた。
そんなある意味で2人の空間を作り上げている俺達に、ようやく審判が決まったようでこちらへと歩いてきた。
「全く、相変わらずお熱い2人だな、今回は俺、シノグが2人の審判をする、準備はいいよな?」
俺の中で今1番の注目選手のシノグが審判をやるのは予想外だったが、あれだけの成長速度があるのだから、ここから一気に強くなってもおかしくはないだろう。
それに期待しながらも、リナとの戦闘に集中していく。
「ああ、俺はいつ始めても構わない。」
《私も準備万端だよ!》
「そんじゃ、試合開始!」
リナは俺の作った弓で魔力矢を放ってくる。
1回戦で見てはいたけど、遠くから見るのと受けるのだと大分違いがある。
まあ、とはいえそれほどの脅威でもない。
俺はカリバーンに魔力を纏わせながら飛んで来る矢を斬りおとしていく。
リナもルイが矢を受け流しているのを体感しているため、それほどの驚きは見られない。
俺もこのままだと防戦一方になるため、ルイと同じように距離を詰める。
だがさすがリナで、誰よりも近く長く俺を見てきただけあり、俺の考えや動きを読みきって矢を放ってくる。
そんな中で距離を詰められるはずもなく、だが俺へのダメージは与えられない、1種の膠着状態が生まれる。
それを破ったのはリナだった。
《我は求める、グラン.ウインド!》
サクラほど魔法が上達していないリナだが、確実に魔法の扱いは上手くなっているため、今ではワンランク上の魔法も使えるようになっていた。
しかも、魔法を使いながらも矢を放ってくる。
あの風の魔法はさすがに普通には相殺できない。
魔力矢くらいならカリバーンでどうにかなったが、あの強さの魔法くらいになるとどうしようもできない。
「イーブン!」
本来は技を相殺する魔法だが、イメージを変えれば魔法も消すことが出来る。
グラン.ウインドをあっさりと相殺した俺だが、グラン.ウインドが到達する僅かな時間に技を構築していくリナ。
その間も牽制で矢を放ってくる。
こうして、リナの技が完成する。
《サウザンドアロー!》
1本の矢が放たれ、それが次々に2つに別れていき、俺へと襲い掛かる。
それだけでなく、全ての矢が俺を追尾してくる。
イーブンは1つの技や魔法を相殺することはできるが、こういった数が多い技には効果がない。
それに、技を放とうにもこのタイミングでは間に合わない。
だが、結局全てが同時に当たるように飛んでいるわけではないので、俺はシュウとの戦いで鍛えられた剣で1本1本を落としていく。
それも、超高速で。
身体強化をしていなくても、身体強化で無理やり身体を動かしてきたため、ある程度までなら似たような動きができる。
リナもそのままでは突破される事をわかっているようで、先程までよりも時間が出来たため、時間をかけて技を構築していく。
俺もそれを放っておく訳にはいかないため、剣を振りながら余裕を見つけては技を構築していく。
俺の技よりも早く技を完成させたリナが俺に技を放つ。
《アローピア!》
リナの位置から高速でこちらへ迫るアローピア。
まだサウザンドアローの全てをさばききれてはいないが、矢の到達時間が変わっただけだ。
しかも、アローピアは一撃用なら苦労しない。
「イーブン!」
先程よりも込める魔力を増やしたイーブンでアローピアを相殺、そしてサウザンドアローのほとんどを斬りおとし、構築していた技を放つため、リナとの距離を詰めていく。
さすがに、ここまで自分の技を無効化されるとは思わなかったようで、少しだけ動きが止まる。
そこを突いて技を入れる。
「斬鋼!」
技の危険性に気づいたようだが、この距離ではどうしようもできないだろう。
と思ったのだが、連続して魔力矢を斬鋼に狙い打ちして、威力を落としていく。
もちろん、俺の技が止まる事はなかったが、連続して矢を打ち込まれたため、威力は落ちてしまい、一撃で決められる程のダメージを入れられなかった。
それに驚いた俺に今度は隙ができてしまい、ここが勝負所というのを感じ取ったリナが魔法を放つ。
《我は求める、グラン.ウインド、2式!》
先程よりも少し威力は落ちているが、魔法が2つになったため、イーブンでも防げない。
この世界に来てからまともなダメージはくらったことなかったが、今回はどうしようも無さそうだな。
まあ、ただで攻撃をくらうわけにはいかないな。
「イーブン!」
グラン.ウインドの1つを消し去り、もう1つはカリバーンで斬りつける。
もちろん、カリバーンだけで相殺できる訳がなく、威力を弱めたグラン.ウインドをくらう。
「ぐっ!」
弱めたとはいえ、上級魔法なだけあってそこそこのダメージを受ける。
この世界に来て、初めてのダメージだったが、風の魔法だったおかげでそれほどのダメージは受けなかった。
まあ、体育館じゃなかったら細かい切り傷でもっと深刻なダメージをくらっただろうけど。
さて、大分劣勢に追い込まれたが、今のところリナの攻撃の仕方に良いようにやられているな。
このままいくと負けるかもしれないな。
そう思った瞬間、今までも集中していたのだが、その集中力が更に高まり動きがさっきよりも見えるようになってきた。
というか、何となく周りの時間が遅くなるような感じか。
魔力矢を放つリナだが、既に周りの時間が遅くなるほど感覚が高まった俺はさっきのように斬りおとさなくても矢の影響を受けない。
軽く矢を回避しながら一気に距離を詰める。
敗北の危機が迫ったからか、脳がリミッターを外したようで、身体能力が一気に上がり、俺も気づいたらリナの目の前まで距離を詰めていた。
不意討ちのようなものだったので、リナは反応できず、首筋にカリバーンを突きつけたのが止めになった。
「試合終了!、勝者リョウ!」
危ない場面はあったが、思わぬ力で勝つことができた。
次回更新は6/16です。
PV30000まできました!
この調子でどんどん伸ばしていきたいと思います!
これからも「憧れの異世界で」をよろしくお願いします。
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