48.クラス内トーナメント1回戦終了
リョウ視点です。
いよいよ1回戦最終組を残すだけとなったクラス内トーナメント。
対戦するのは
13、レイルvsジーク
14、ピースvsシノグ
とどちらも名前を聞かない人物だった。
どちらの試合ももちろん見るつもりだが、どちらにより興味が湧くか考えていると、ふと試合の準備を整える1名に目がいく。
それはピースの対戦相手のシノグだった。
なぜ目がいったのか自分でもよくわからないが、興味が湧いたのは確かなので、今回はピースvsシノグの試合を観戦しようと思う。
まあ、ピット君でもう片方の試合も見るが、やはり自分の目で見るのとは大きく違うので、その辺は仕方ないと諦めてもらおう。
シノグの生命力や魔力はそれほど高いわけではない。
むしろ、対戦相手のピースの方がどちらも1.5倍程高い。
どんな戦いになるか楽しみになりながら試合開始を待つ。
竜族のピースと人族のシノグの対戦なので、普通にやり合うなら、圧倒的にピースが有利だろう。
武器もピースが大剣、シノグが盾無しの片手剣と俺やカリバーンと似たようなスタイルだ。
だが、俺やカリバーンは二刀流にすることも多いため、盾を着けていないのだが、シノグは少なくても今回の戦いで剣をもう1本使いそうもない。
そういった所にも興味が湧いてくる。
そんなこんなでワクワクしていると、このペアの審判はリンダがつとめるようで、2人に声をかけている。
こういう所は意外にもしっかりしているので、いつもこんな感じなら問題ないのにと思いながらも常にしっかりしている非の打ち所のないリンダを想像して、変人であってこそのリンダだなと苦笑しながらも納得する自分がいた。
そんなことを俺が考えてることなど露知らず、リンダが試合開始の合図をした。
俺は先程までと感覚を切り替え、試合の様子をしっかりと観察していく。
共に近距離武器であるため、互いに間合いを詰めていく。
身体能力の違いで、距離を詰める速度が速いのはピースだったが、シノグの方は独特の足運びで距離を詰めていた。
そして、距離を詰めながらも互いの獲物をどう振るかの駆け引きを行っている。
ここでの振り方の駆け引きは明らかにシノグの方が有利となっている。
大剣はその大きさと重量の関係で、片手で軽く扱える片手剣と違い、振り下ろすか凪ぎ払うかの大まかな振り方しか出来ないし、隙も大きくなる。
それに加え片手剣は、威力が大剣に劣る代わりに小回りと手数で勝負できる。
つばぜり合いになれば勝つのは難しいが、受け流すことも避ける事もできるため、どちらが優位とは一概には言えない。
結局、先に振るのは不利と見たピースが大剣で受ける選択をしたようだ。
シノグの胴体を狙った横凪ぎを大剣で受けようとするピース。
だが、駆け引きはここで終わっていなかったようで、それをフェイントにして、首筋に剣を吸い込ませていくシノグ。
大剣のガードは間に合わないと判断したピースは、慌てて後方へと飛んでシノグの斬撃を回避する。
即座に反応したピースに感心した俺だったが、それも想定の範囲内とでもいうかのように、後方へと回避して態勢を崩したピースに追撃に向かうシノグ。
しかし、そこは身体能力の差があり、態勢を崩しながらも大剣をシノグの片手剣にぶつけ、時間を稼ぎ、態勢を立て直す。
そうなると、身体能力の差でシノグの不利となり、防戦一方になっていくシノグ。
直撃を受ける事はないが、徐々に細かな傷がシノグに増えていく。
もちろん、ここが体育館である以上、身体的ダメージは軽減されるので、この傷が負けに直結することはないだろう。
とはいえ、シノグ不利な状況は変わらないだろう。
俺の直感も外れたかと思っていると、俺は驚きを受けることになった。
さっきまで防戦一方だったのだが、いつの間にかシノグが態勢を立て直していく。
それも剣を合わせる度にピースの有利が消えていく。
そう、まるで俺がシュウとの戦いで成長していったように。
そして、尚驚くのはそれに伴って、生命力、魔力の限界値も増えていってる所だ。
戦闘終わりにどちらも少しだけ増えることはあるし、そこは個人差としか言えないが、戦闘中にここまで目に見えて上昇していくのは普通はありえない。
更に動きまで洗練されていく。
まるでものすごい勢いで経験を蓄積していっているようだ。
ここまで来てしまうと、もはやピースの身体能力と大剣の有利を活かせず、シノグが押していく展開に変わっていく。
それでもまだ勝負がつかないのは、ピースの竜族としての本能が働いているからとしか言えない。
だが、その本能による回避すらも経験として積み上げているらしく、シノグの優位が確立していく。
それに気づいたピースは捨て身の攻撃でダメージを受けながらも距離を開けることに成功する。
そして、ピースは必殺の技を作り上げていく。
それを見たシノグもそれに合わせて技を構築していく。
ピースの方が早く技を完成させ、シノグが距離を詰めていく。
一方のシノグはそんなピースの動きを見ながらも、技の構築を優先させている。
というよりも、より完璧なイメージを構築しているといった感じだ。
こうして、あと1歩でピースの間合いに入る直前、シノグが技を完成させる。
端から見ても、それぞれの技のイメージの強さは明らかで、それぞれの技に込められた生命力にも大きな違いがある。
いくら助走を加えて技の威力を増しているとはいえ、この違いはそう簡単には覆るものではなく、ピースとシノグの技がぶつかり合った瞬間、シノグの技がピースの技を打ち破り、斬撃と共に技がピースに命中する。
さすがに竜族とはいえ、この攻撃を耐えられるはずがなく、シノグの勝利が決まった。
もう一方の試合は少し前に決着が着いていて、これで1回戦全ての試合が終わった。
同時に2回戦の試合の組み合わせが決まる。
1、エルンvsカリバーン
2、リョウvsリナ
3、サクラvsシン
4、スートvsフラン
5、ソルンvsキール
6、リンダvsドーラ
7、ジークvsシノグ
ここからはハーレムメンバー同士の戦いが増えていくので、戦いの激しさが増していくだろう。
同時にどんな結果になるにしても、見所のある戦いが多くなるのは間違いない。
それに俺はリナとの試合もある。
制限をつけた状態では厳しい戦いになるだろうが、負けるつもりは毛頭ない。
こうしてほぼ予想通りに1回戦は終了した。
次回更新は6/14です。
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