41.オーノスに帰宅
リョウ視点です。
シュウとの戦闘を終えた俺は、そろそろ夕飯の時間になりそうなので、急いでオーノスに戻ることにした。
俺はシナイルードンに乗り、エルンは翼をはためかせてオーノスへと飛んでいく。
もちろん、インセプションリングを着用しているので、俺たちを発見できるのはモンスターくらいだろう。
空を飛びながら、先程のシュウとの戦闘を思い出し、それを元にイメージトレーニングをしていく。
だが、力の差は思ったよりもあるようで、勝ちのイメージを見出だせない。
だが、だからといって諦める訳にはいかない。
俺の世界にいたときはあまりわからなかったが、俺は負けず嫌いだったらしく、手も足も出ないまま負けたシュウとの戦いに納得出来なかったからだ。
シュウの実力は素直に凄いと思ったし、その強さと身体の事も含めて尊敬もしているが、それは負けてもいい理由にはならない。
それにシュウとの戦闘経験は恐ろしい程の速度で俺を成長させてくれる。
だからこそ、出来るときに次に戦った時はどうやってシュウに勝つかを考える。
こうしてイメージトレーニングを重ねていると、いつの間にかオーノスまで戻ってきていた。
門は既に閉まっているので、上空から入る。
この暗い時間に人通りの少ない所に出るのは問題になりそうなので、ひとまず学園まで戻り、そして部屋へと向かう。
こうなると、上空から戻ってくるのもわりと面倒だなと思ったが、シュウと戦える時間は大事なので、しばらくはこういった生活をしないといけないだろう。
部屋に入る前に、リンクイヤーでマドルに連絡をいれておく。
マドルは普段から部屋への侵入者の警戒をしてくれているので、現状気配を誤魔化しているとはいえ、俺たち本来の気配でない何かが部屋に入ろうとしたら、発見されて迎撃される恐れがある。
こんなところで、そんな無意味な争いをする意味はないからな。
[マドル、今から俺達が部屋に入るから、妙な気配を感じてもスルーしてくれ、あとで説明する。]
[かしこまりました、旦那様。]
こうして了承を得られた俺達はインセプションリングを着けたまま部屋へと入る。
誰もいないのに扉が開いて、警戒心を高めるリナ達。
既に全員が揃っていたようで、それぞれ臨戦態勢に入っていた。
事情を聞いていたマドルだけが先程の連絡の意味を理解したみたいで落ち着いていたが。
いつまでもリナ達を警戒させる訳にはいかないので、俺とエルンはインセプションリングを外し、姿を現す。
「みんなただいま、驚かせて悪かった、街中で外すのは少し抵抗があったから部屋で外す事にしたんだ。」
《もう、びっくりしたよ、何となく何かが入ってきたのはわかるのにどこにいるかとかが何となくしかわからなかったから。》
《この様子だとマドルは知ってたんだねー、出来れば私達全員に言ってほしかったなー。》
《2人だと全くわからなかった、そのリングのおかげ?》
《私のリョウ様センサーは反応してたのに姿が見えないから心配でした!》
《あれはリョウ殿の作った物の効果か?、侵入者の居場所が掴めなかった。》
《全く、相変わらずわけわからない性能の物を作るわね、私達の分もあるの?》
『流石にあんな風に帰ってくるとは思いませんでした、確かに何も聞かされなかったら、全力で攻撃してましたね。』
《あたしもリョウに似ている魔力だなとは思ったけど、やっぱり場所までわかんなかった。》
とりあえず、インセプションリングはリナ達にも効果がある事がわかった。
リョウ様センサーとか訳のわからない事を言っていた奴もいたが、突っ込むと大変そうなので放っておこう。
だが、やはり流石はリナ達で、インセプションリングで気配を誤魔化しても、何かしらの違和感は感じられるみたいだ。
やはり、想像以上にみんな成長しているな。
俺は改めてその事実に嬉しくなりながら、これならマッドシルダー山脈でも戦えると確信した。
「まあ、みんなの予想通りさっきのはこのインセプションリングの効果だ、本来は第六感が優れている者にしか気配は感じられないんだが、どうやら全員成長してるみたいだから、違和感に気づけたみたいだな、とりあえず隠れて行動するには抜群に便利な道具だ、みんなにも作ってあるから受け取ってくれ。」
こうして、1人1人にインセプションリングを渡していく。
どこかのアホな竜族は左手の薬指に着けさせようとしていたが、軽くスルーしておいた。
このインセプションリングには、俺の記憶を映し出す魔法の応用で、効果の説明と使い方が見れるようになっている。
これを作った時に気がついたのだが、知らない内に装備に込められる魔力が増えたみたいだ。
まあ、その分効果説明に使っているから、プラマイ0だがな。
こうして、俺のインセプションリング効果を知った面々は、各々インセプションリングを装着して感覚を確かめていた。
サクラは俺に視界共有をしたようだが、俺には見えているので、あまり効果はない。
なので、他の人で試すことにしたようだ。
すると、次々と俺に視界共有を求めてくるハーレムメンバーたち。
全員、視界共有が出来るほどの処理速度を出せるようになったようで、嬉しくなった。
まあ、俺と視界を共有しても、先程のサクラと同じように普通に見えてるだけなので、効果を実感できないだろう。
だが、流石に俺の視界を見て、俺と同じような目にするのは、サクラしか出来ないようだ。
サクラの魔法を扱う技術の高さに改めて感心した。
それぞれインセプションリングの効果を確かめ終えたようで、外して自分のゲートへとしまっていった。
俺のインセプションリング提供のおかげで少しだけ遅くなってしまったが、無事夕飯が出来たようで、席順争いを行ってから食事に入る。
今回はエルンとソルンが隣になった。
基本的にリンダが隣じゃなければ落ち着いた食事が出来るので、助かっている。
まあ、ソルンが見た目通りの子供のような食べ方をするのを矯正する手間はあったが、飲み込みが早いので、特に負担にはならなかった。
料理は、担当の全員で作ったようで、どれもいつもよりも手が込んでいて、食べるだけで力がみなぎるようだった。
食事を終えたところで、俺は全員に明日の予定を確認する。
「明日予定がある人はいるか?」
首を横に振るみんなを見て俺は今日のマッドシルダー山脈での出来事を説明する。
モンスター達の強さ、シュウの存在と実力。
それらを説明した俺は皆に提案する。
「俺はしばらくシュウと戦って戦闘技術を磨きたい、それに今日モンスター達と戦ってみて、模擬戦との違いを改めて感じた、確かに怪我をしない模擬戦で色々と試す事も必要だが、俺たちよりも肉体的に優れているモンスター達と戦うことで、連携や技術の統合もできる、それに俺達を狙う輩もいることだし、連携を今のうちに磨くのも悪くないだろう。」
俺の意見に全員が賛成してくれたため、明日の予定が決まった。
予定を決めたことで、シュウとの戦闘の疲れが一気に押し寄せてきたので、俺は一足先に睡眠を取ることにした。
他の面々は、まだ世間話を楽しむようなので、今日はクジの結果は見られなそうだ。
今日の収穫は最高だった。
この辺とは比べ物にならないほど強いモンスター達の素材に加え、シュウという強者との戦いで俺自身も成長できた。
知らない内に持っていた慢心を消せたのは大きい。
シュウとの出会いに感謝しつつ、リベンジを誓って眠りにつく。
クラス内トーナメントまであと1日!
次回更新は6/7です。
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